【第96話】12柱の神々
「さて、何処から話したものかな。」
前伯爵が椅子を深く座り直し話を始めてくれる。
「まずこの世界の名前は知っておるな?」
「確か『グランフェルム』でしたっけ。」
「そうだ。そしてこの世界には元々は12柱の神々が居た。」
「12の神々・・・。その内の2柱はルミナリアとヴェリティア様ですね。」
「うむ。」
そうして前伯爵は12柱の神々を教えてくれる。
創造の神:ジェネシオン
破壊の神:ディストラグ
時間の神:クロノヴェル
空間の神:ディメイロン
生命の神:ヴィタリシア
死の神:ネクロディウス
光の神:ルミナエル
闇の神:ノクスヴェイン
自然の神:ガイアレント
知識の神:ルミナリア
感情の神:エモルディア
幸運の女神:ヴェリティア
「ちなみに創造の神ジェネシオンと破壊の神ディストラグは夫婦神でこの2柱がこの世界を創造した。」
「という事はこの2柱が最高神になるのでしょうか?」
「始まりの神、という意味ではそうかも知れぬ。だが現在この世界において最も崇拝されているのが・・・。」
「知識の神ルミナリア・・・。」
「左様。」
「ですが何故、最も崇拝される対象になったのですか?こういった多神教の場合崇拝の対象は最高神の夫婦神か全て同列に崇拝されるかではないのでしょうか?」
「『勇者』の存在だよ。」
前伯爵は深く息を吐く。
「今この世界は魔獣や魔人といった魔族が多く存在し無差別に人々を襲い、土地を奪っている。そして土地を追われた人間たちは残り少ない居住地を求め争い、戦争が多発しているのが現状だ。幸い今現在
我々がいる国、ルミナス王国はそういった土地からかなり距離があり、更に海に囲まれている地であるため戦争に巻き込まれることはほぼ無く、また難民も少ないというのが現状だ。」
「なるほど・・・。」
確かに日本も周りを海で囲まれた地であったが故に独自の文化が発展し、更に戦争を仕掛けることはあっても仕掛けられることはほぼ無かった。
難民も他国に比べ圧倒的に少ないのはそういった理由もある。
「知識を司っているルミナリア様はそうした現状を憂い、自身の知識を最大限に活用し、『勇者』という存在を作り上げた。そうして勇者となった者をこの国、ルミナス王国に送っているのだ。故にルミナリア王国は『勇者が生まれる国』として呼ばれている。」
「という事は『迷い人』が圧倒的に多いのは・・・。」
「そう、このルミナス王国となる。だが、そんな中でも『迷い人』ではなく『勇者』としてこの地に立つものはごくごく僅かだ。」
「『迷い人』と『勇者』の違いとはそもそもなんですか?僕はルミナリアと直接話しをしましたし、かなり特別なスキルを得ました。ですが勇者では有りません。それに真壁先生の様にルミナリアと接触すること無くいきなりこの地に移動している者もおりますよね?」
前伯爵はそれを聞き髭を撫でながら目を閉じる。
「『勇者』としてこの地に立つものは『勇者』としての『証』を何らかの形で所有しこの地に降り立つ。それは様々な形をしているがひと目見てルミナリア様の使徒だと言うことが分かる物となっている。」
「ふーむ・・・。ちなみに『勇者』は具体的に何をするんですか?この国、ルミナス王国も初代国王は勇者ですよね?その時は何を成したんでしょうか?」
「『勇者』が生まれる時は魔族を統べるもの、すなわち『魔王』が誕生していると言われている。『勇者』の使命はこの『魔王』を倒すことと言われている。少なくとも、初代国王はそう残している。」
「なるほど・・・。この世界の成り立ち、神々、勇者と魔王の存在は理解しました。」
だが正直腑に落ちない話ばかりだ。
何故この世界では12柱もの神々が居るのに崇拝の対象がルミナリアだけなのか。
そして幸運の神ヴェリティアは、親兄弟すなわち他の神々を助けてほしいと言い俺に一時的なダンジョンの鍵のようなものを預けた。
そもそもヴェリティア自身も最初は囚われの身となっていたのだ。
俺は今までの話を聞き、仮説を立てた。
それは『知恵の神ルミナリアによる他の神々への謀反』である。
知恵の神と言うだけあって何らかの方法を用いて他の神々をその力が及ばないようにしている可能性が高い。
そしてもう一つ考えたのは『知恵の神ルミナリア』を崇拝の対象としている割にこの世界の知恵と呼べるべきものがあまりに脆弱で偏っている気がする。
これはそもそも『知恵』を授かっているルミナリアが自身の司っている『知恵』を放棄しているのではないかと考えた。
故にこの世界では、本来存在しなければならない神々が機能しておらず、バランスが崩壊し、更にはルミナリアが勇者の召喚というこの世界の理に反することを行っているため歪が生じているのではないかと考えた。
そう考えれば突如としてこの世界に召喚されてしまった『迷い人』や、『呪われた』と言われている様々な物に繋がる気がした。
要はルミナリアのせいでこの世界に『バグ』が生まれてしまっている。
そう考えると全てが納得できた。
「厄介だな・・・。」
俺がそう呟くと前伯爵は眉根を寄せる。
「なにか思い当たる節でもあるのか?」
「ええ・・・。仮説ですが。ですが申し訳有りませんがこれはヴォルフガング様は『知らない』方がよろしいかと思います。」
俺が強調してそう告げたことで前伯爵は事態の重さに気がついたのだろう。
喉をゴクリと鳴らし、「わかった。」とだけ告げる。
「ただ、今後僕はどう動くかはわかりません。動くかも知れないし動かないかも知れない。ただ仮に僕が動いたとしてもそれは僕の独断です。この国としては『知らない』方がよろしいかと思いますので報告もしません。ですがこれだけはお約束します。」
俺が改まって前伯爵に声を掛けると前伯爵も緊張した様子で俺に問いかける。
「何だ?」
「僕はサーシャさんやアリスさんが決して不幸にならないように動きます。それだけはお約束します。」
そうだ。
俺は絶対にこの二人だけは不幸にはさせない。
前伯爵からの講義を終え、俺は一人自宅に戻り考え事をした。
手にはヴェリティアより託された一時的なダンジョンの鍵のようなものがある。
俺がこれについて決定的に違うと思っていたのは、この鍵のようなものを受け取った際に出現した【システムメッセージ】に由来する。
それはいつものダンジョン突入時に現れる【システムメッセージ】ではなく、【クエスト】として表示されたのだ。
【クエスト】
『空間の神の救出』
目的:囚われし空間の神の救出
LV45~
それも推奨レベルが45~と今の自分のレベルでは足らないのだ。
だが、このまま放置というのもとても問題がある気がする。
何せこの世界を司っている一柱の神からの直接依頼だ。
放棄したら何が起きるかわからない。
「まあ、やるしか無いか・・・。だけどまずはレベル上げだな。」
現状のレベルは35だ。
後最低でもレベル10はレベリングしなくてはいけない。
ただ現状のLUKでは経験値が通常通り入らないので、一番効率がいいのは【呪われた】一時的なダンジョンの攻略だろう。
大変タイミングが良いことにスラム街については軌道に乗り、国からの正式な支援も受けられることが決まっている。
後はタイミングだ。
1ダンジョンで1レベルが上がるとしても最低でも10回のダンジョンを踏破する必要がある。
ダンジョンの中の時間の流れがいまいちわからないので、ダンジョンに突入する際は数日間最低でも連続して休めるタイミングとする時がベストだろう。
「支援してもらっている商業ギルドの担当達と相談して見るか。」
そうして俺は久しぶりの一時的なダンジョン突入に向けて調整を行うことにした。




