【第127話】ディロンとインスタンスダンジョン
ディロンを救助してから数日が経つ。
現在のレベルは46であり、次なる目標となる時間の神が囚われているダンジョンの鍵はレベルが48~の制限が掛かっているためレベル上げが必要だ。
俺は学校を始めとするスラム街関係の運営がほぼ俺抜きでも十二分に稼働していることを確認する。
有り難いことに結婚式についてはアリスとサーシャから、「ススム君はただでさえやることが多いんだから任せて!」とアリスとサーシャ主導で計画してくれることとなった。
こういう時に嫁になるものが計画実効性が高い人間だと任せられるので非常に助かる。
そうして俺は安心してレベル上げに専念できる。
「さて、今日も今日とて、しっかりレベル上げしましょうか。ディロン、準備はいい?」
『誰に物を言っている。』
今日のダンジョン攻略からはディロンもとい空間の神であるディメイロンが俺のそばに付き一緒に活動してくれる。
ルミナリアの力や異常なまでの計画性、そしてそれを実現して見せるだけの能力が見えてきた分、こうして常に神の一人が俺の様子を見てくれているというのは非常に心強い。
「よし、じゃあ行くか。」
俺は準備に問題ないことを確認し、新たな一時的なダンジョンへと足を踏み入れる。
『ふむ、ここが一時的なダンジョンと呼ばれる場所か。』
「うん?という事は空間の神なのに一時的なダンジョンを知らないの?」
『ああ、残念だがな。お前と合流した後、所謂国が管理しているという固定ダンジョンというものも見てきたがあれもまた私の知る物ではなかった。』
「ええ・・・?という事は・・・。」
その時、おれの【気配察知】と【地図】に反応が見られる。
当然空間を司っているディロンもそれに気が付き一気に場の空気が変わる。
『さて、ではお手並み拝見といこうか。』
「そんなたいそれたものじゃないさ。」
俺はいつものように基本装備のまま、何時もの戦法を取ることにした。
ただ唯一違う点としては【おしゃべり魔術師の指輪】が装備されたことによる、魔法の詠唱が復活したということくらいだろう。
基本的にな運用としては、相手との距離間が空いていて余裕がある場合は完全詠唱を行い、そこから距離が縮まり余裕がなくなる毎に詠唱の長さを短くする。
そして、瞬間的な判断が必要な際は無詠唱とする様な戦い方となった。
とは言え、基本装備でトリガーとなっている魔法、【ファイアボール】は基礎魔法のため完全詠唱でも非常にその詠唱は短い。
『紅蓮の理よ、我が掌へ集い、燃え盛る球となれ――ファイアボール!』
完全詠唱したファイアボールは今までよりも大きくそして熱を帯びた状態でボッ!と空に向かって放たれると反応があった敵の集団に向かい飛んでいく。
『なっ!?』
その光景に意外にもディロンが驚いていたが更に着弾した後のメテオ祭りが起きた際は口をあんぐりと開け絶句していた。
嬉しい誤算だったのはどうやら完全詠唱した際のボーナスは、副産物のメテオフォールの威力も50%増しで発動しているようだ。
そのお陰で一撃でかなりの範囲の反応が消える。
俺は、そこら一体の反応が消えるまで一歩も動かずMPを回復しながらファイアボールを完全詠唱で放ち殲滅を行った。
『・・・信じられん。』
MP回復の休憩中にディロンが話しかけてくる。
『今よりも神々が充実していた頃は明らかに今よりも魔法や戦闘技術はその頃の方が充実し、かつ威力もあった。だがすすむ、お前は何故【その頃よりも】高い魔法の技術を有している・・・!?』
その一言はやはり俺は異端中の異端であるという存在の証明だった。
「何故と言われても困るが、強いて言えばルミナリアが俺のために即興で作り上げたスキルのせいだろうなあ。だけど基本的には俺はこの世界に存在するものをフル活用しているだけだぞ。活用方法が違うだけで、その仕組さえ理解できればそこら辺の冒険者だって力の底上げは出来る。」
そう、俺は過去一度だけルビアに呪われた短剣を渡したことで、その呪われた短剣の能力が俺のスキルとは関係なく運用され、ルビア自身の力を底上げしているのを自分の目で確認している。
『どういうことだ?』
「んー・・・。そうだな。この世界の様々な要素は全てバラバラな存在なんだが、俺はそれはそれを正しく読み解きそのバラバラだったものを組み合わせることで能力の底上げができる。そんな感じかな?」
『そんなことが・・・。いや、むしろこれぐらいのことが出来なければここまでの行いは成せなかったか。』
俺達は確実に接敵する前の段階で敵を屠り歩を進めそしてダンジョンの主が居るであろう扉の前まで来る。
『本当に自身の目でここに住まう者たちを見ること無くここまで進んできたな。』
「これが俺流の戦い方だよ。魔法使いは臆病なのさ。」
MPを回復しきった後扉を開き、ボスと対峙する。
俺は防御型に切り替え、扉を潜る前に既に完全詠唱で土の防壁を張っている。
その為・・・、ドシーーン!!
この様に入室と同時に一気に先制攻撃を仕掛けてくるタイプのボスであろうと容易に攻撃を防ぐことが出来たし、当然ながら攻撃が土の防壁に阻まれた瞬間、そいつは追加効果により岩壁に身を挟まれ動くことができなくなる。
ボスは抜け出そうと藻掻いているがそれは結局抜け出すことは叶わず、逆に岩によって体を傷つけ出血効果を引き起こすだけだった。
俺はボスが岩壁に阻まれている間に一気に距離をとる。
距離を取って初めて気がついたが今回はかなりデカい、恐竜の様なモンスターだった。
だがそれでもしっかりと拘束出来ている辺り、それの魔法の効果はどんどんと威力が上がっているらしい。
まあそこが「ハックアンドスラッシュ」の面白いところなんだが。
俺は現在発生している拘束効果の残り時間を考慮し、限界まで距離を取りそしてMPをしっかり回復した後、装備を召喚型に切り替え呪文を唱える。
「深淵に眠る蒼き命よ──
静寂の底より我が声に応えよ
流転せし水の理をもって
その姿を今ここに顕現せよ
──来たれ」
【水精霊召喚!】
装備が交換された次点で拘束は解けていたが出血効果が酷い恐竜型のボスは息も絶え絶えの状態だった。
そこに出現せし氷の上位精霊たち。
完全詠唱により強化された氷の上位精霊たちは出血でボロボロにになっているボスを捕らえると同時に無数の氷のレーザーを放つ。
避けることも出来ず直撃し、一気に氷の像となったボスは粉々に砕け散り、俺の経験値となった。
レベルが上がり47となる。
「ふう、これで後1レベルでつぎのクエストに行けるな。」
『末恐ろしいな、本当に人間か?』
ディロンがそんな事を言ってきた。
「失礼だな。れっきとした人間だよ。まあこの世界の定規で測れないことは重々理解しているけどな。」
俺はポロリと落ちた戦利品を手に一時的なダンジョンから脱出をした。




