【第126話】神と信仰
俺は最近聞き慣れた突然聞こえたの声に驚きつつも辺りを見回すと変化はない。
つまりは俺だけに語りかけているようだ。
(最近、表に出てきすぎじゃないですかね。ヴェリティア様。)
『いえ、これは重要なことです。今の話は間接的なルミナリアの弱体にも繋がる話です。』
(と言うと?)
『余り、私自身がこういった事に積極的に関わることは良くないことだとは十分に理解しております。ですが、やはり信仰されるという事はそれはすなわちその信仰対象の力に直結する話でもあります。』
(つまり以前の等しく12柱の神々が信仰対象となっているよりも、今の唯一神の様な扱いのルミナリアの力は以前よりも増していると?)
『その様です。ルミナリアがここまで力をつけ、ましてや【創造の神】ジェネシオンや【破壊の神】ディストラグを封じることが叶うほどの力をつけることが出来たのもこの信仰の一点集中化に伴う事が原因でしょう。』
(なるほど・・・。)
俺は以前からどうやってルミナリアが他の11柱の神々を封印していたのか、その力があったのかが不思議でならなかった。
確かに【知恵】を司る分、頭が良いのはわかっていた。
だが例え頭が良くても他の神々を封じるほどの力があるのかは疑問だった。
例えるなら、アインシュタイン程の頭脳があればオリンピック選手にスポーツで勝つことが出来るのか?である。
答えは当然、否だ。
例え頭が良くてもその分野の頂点に立つものに勝つという事は出来ない。
ならばどうしたのか。
つまりはヴェリティアの言うことが正しければ、【信仰力】を高めることにより自身の力にブーストを掛け、無理やり抑え込んだということだろう。
徐々に徐々に信仰を広め、力にブーストを掛け、一柱ずつ確実に封じ込んでいく。
更にその一柱の神が封じられるとその神を信仰していた信者たちは廃れ、いつかはルミナリアの信仰に変わる。
そうすれば更にルミナリアの力は増す。
そうして徐々に徐々に自身の力を高め、最終的に【創造】と【破壊】という二柱を封じ込め、今の状況になったと考えた。
『その通りです。ですので私が信仰を取り戻すことは間接的にルミアリアの弱体を誘発します。』
(理解しました。そういうことでしたら場所を移しましょう。)
「もしスランプ状態ならば、良ければ案内しますのでそのヴェリティア様が祝福を送ってくださった礼拝堂に行きませんか?」
俺がレオに提案をするとレオ自身は乗り気ではなかったが、その話を遠巻きで聞いていた弟子たちが是非見てみたいと言い出し、最終的にレオが折れる形となった。
俺達はレオを含む工房の面々を連れ、早速礼拝堂へと移動する。
その場所はこの街に住むものならば当然知ってはいる治安の悪い場所だったため、恐々とした表情を浮かべていたが実際に訪れてみるとその様な面影はなく、むしろ街の中心地よりも清潔で各人仕事に打ち込み表情も明るい様子を見て肩透かしを食らったようだ。
「よう。誰かと思ったら同時に二人の花嫁様を貰った色男じゃねえか。」
そう言い後ろから声を掛けられる。
「相変わらず皮肉屋だなお前は、ルビア。今日も狩りか?」
「ああ、お陰様で大量よ。」
ルビアという名に聞き覚えがあったレオが反応しルビアを凝視していた。
「な、なんだこいつ?」
その異様な視線にルビアが珍しく怯んでいた。
「ああ、以前お前が書いたヴェリティア様の絵があっただろう。それを石像にしてくれる工房の主のレオさんだ。」
「ああ、そういうことか。俺はルビアだ。あの絵を取り上げられた時は悔しかったが話が話だからな。で?その工房主さんが何だってこんな場所に?」
「作品を作るためのインスピレーションが欲しいらしい。」
「なるほど。じゃあ俺が特別に案内してやろう。」
そう言うとルビアは持っていた食肉を他の自警団の面々に渡し、ルビアが先導して礼拝堂内へと移動する。
「・・・ふむ。ここか。」
レオが礼拝堂内をぐるりと見回したその時だった。
以前ヴェリティアが祝福したときと同じ場所で強い光が差し込む。
「な、なんだ!」
皆が驚きの言葉を上げているとヴェリティアがそこに居た。
それを見た皆が呆然とただ立ち尽くしている。
俺はなにかヴェリティアが命令したり声を掛けたりするのかと思ったがそんな事はせず、無言で俺達の前に現れ高と思うと『しっかりと目に焼き付けてね。』と言わんばかりに柔らかなポーズをしてそのまま消えていった。
その姿を見た一同はヴェリティアが消えると、壊れたおもちゃのように一斉に動き出す。
「おい!見たか!?」
「本当にヴェリティア様が降臨なさったぞ!!」
などなど工房の人間は口にしている。
「おいおい、マジカ。またヴェリティアが見れるだなんて本当に付いてるな。」
等と軽い感想を述べているルビアとは双極的に肝心なレオはというと感動し立ち尽くしたまま涙を流していた。
俺がその様子にあっけに取られていると、レオは直ぐに身を翻し駆け足で礼拝堂から出ていく。
弟子たちもレオを追いかけるように出ていったため、恐らくはインスピレーションが浮かんだのだろう。
これで石像に関しては今まで以上の速度でこの礼拝堂に納められる形になるかも知れない。
それにしても信仰力と神の力か。
また厄介な問題が出てきたものだ。




