【第128話】イレギュラーな者たち
一時的なダンジョンから脱出すると、まだ全然明るい時間であった。
するとフィルルがすっ飛んできた。
「お帰りなさいませ!ススム様!今回は一段と長いお時間潜られていたんですね?」
俺はその言葉に思わず「えっ!?」と言葉を返す。
「フィルル、俺達がダンジョンに入ってからどれくらいの時間が経ってる?」
「丁度丸1日といったところでしょうか。」
「い、一日だって・・・?」
今までダンジョンに潜り、ダンジョン内部と実世界で時間の流れで差が出ることは多々あったがここまでズレたことはほぼ初めてではなかろうか。
『ふむ。やはりあの空間は時間も乱れているんだな。』
空間を司る神であるディメイロンですらやはりあの空間は自分の力を超えた歪な空間になっていると感じていたようだ。
『だがまあ、今度クロノヴェルを救出することが出来れば、あの歪みもある程度は収まるだろう。』
「それって時間の神の名前だったっけ?」
『そうだ。』
「仮にクロノヴェル様を助けられたとして時間と空間の歪さが解消されて一時的なダンジョンが消失したりすることは?」
『それはないだろうな。あれは異質中の異質だ。他にも複雑な要素が絡みつきすぎている。ただ概念として空間と時間が大いに関係しているのは間違いない。』
「そっか。なら良かった。」
俺は一時的なダンジョンが使用不可になってしまうと非常に困ったことになるためそれであるなら問題はない。
『ふむ?』
「まあとりあえずは部屋に行こう。」
俺は家の中に入ると丁度女性陣達は家から出発しようとしているところだった。
「あ、帰ってきた!良かったー。」
「おかえりなさい。ススムさん。今回は長かったので少し心配していました。」
「心配させてごめんね。一時的なダンジョンは時間が滅茶苦茶でね。それより今から仕事?気をつけてね。」
「うん!行ってくるね。」
そう言い、二人に軽いハグをした後見送る。
リビングに行くと、どうやら彼女たちが作り置いてくれていた食事が置いてあったのでありがたくそれを頂くことにした。
『ところで、先程お主はあのダンジョンが使えなくなると困ることになると言っていたが?』
俺は口を拭きながら返答した。
「ああ、俺は今全身にステータスのLUKが下がる装備で固めていてLUK補正がマイナスになっているんだ。それである時を境に通常のモンスター達から経験値と戦利品のドロップが完全に無くなってね。唯一それらがある場所が・・・。」
『あの歪な一時的なダンジョンというわけか。』
「その通り。」
『どれ少し失礼するぞ。』
そう言うとディロンは俺の頭の上にひょいと乗る。
どうやら俺の全身の状態を調べているようだが、直ぐに降りてきた。
『・・・』
ディロンは難しい顔をしながら黙りこくっている。
「なんだよ?そんな顔されると心配になるじゃないか。」
『正直、あのダンジョンでの中でのことと言い、今調べた状態といい私は本当にお前が“人”なのか良くわからなくなった。』
「じゃあなんだってんだ?」
『わからん。過去にお前のような存在は居なかった。私が封じされてからのことはわからないが少なくとも私が封じられる前には存在しなかった。』
この世界の理の1つを司る神からそう言われると、自身の存在を否定されるような漠然とした恐怖のようなものが押し寄せてきた。
「・・・じゃあ俺はこのまま行くと完全に“人”ではない何かになりうるかも知れないということか?」
『わからん。だが逆を言えば理から外れているからこそ今のお前があると言っても過言ではない。』
「・・・そうか。」
俺はその時、宗一郎の記憶を思い出し、『魔王』と定義された存在である召喚に失敗した勇者のなり損ないの存在を思い出していた。
俺もいつかあの様な存在になるのだろうか?
「ディロンは『勇者』や『魔王』についてどの程度知っている?」
『?全くその様な者たちのことは知らんな。』
「え?つまり12柱の神々が存在していた時はそんな風な肩書の者たちは居なかったってこと?」
『そうなるな。』
ということは『勇者』や『魔王』についてはルミナリアが生み出した新しい概念ということになる。
だがここで1つ気になった。
『魔王』は『勇者』になりそこねた召喚された人間だった。
この世界で生まれた時から『魔王』だった物はいない。
つまりルミナリア的には『魔王』という存在自体がイレギュラーなのだ。
『勇者』を作り出そうとした結果、イレギュラーで『魔王』が生まれてしまった。
そこで思う。
何のために『最初の勇者』を作り出そうとしたんだ?
目的があったからこそ、その概念を生み出そうとしたはず。
少し考えてみたがこればっかりはなにかヒントになるものが必要なようだ。




