【第122話】ディメイロンの加護
突発的に開かれたバーベキュー大会だったが皆腹いっぱい食べ、飲み大満足したようだ。
俺はフィルルと共に後片付けをしているとディロンがとことことやってきた。
『随分と賑やかだったな。』
「あはは。そうだな。だが、これが俺の言っていたこの世界を守りたい『理由』だ。」
『・・・なるほど。確かにこれだけ君の事を迎えてくれる者たちが居るならば、それは立派な理由になるだろうな。』
「まあ、そういう訳だから、正直俺は神様云々よりもこっちの家族のことを一番にするが?」
『それで良いと思うぞ。』
「所で、ディロンが解放されたってことは、現状として『空間』の理は正されたという認識で良いのか?」
『ああ、それで問題ない。今まで捻じ曲げられていた、私の領域だった【空間】はこの世界において正しく認識され機能を始めた。』
「ふーん・・・。」
俺は空間という概念は理解できるがあまりに漠然としすぎているものが『元に戻った』と言われても実感がわかないでいた。
『ふむ。確かに、空間というものはそこにあってそこにはない様なものだからな。』
「あ、俺の心を読んだな?」
『ふふ。どうだかね。』
「そういえば、ヴェリティア様を助けた時は偶然ポチが眷属だったってこともあったが、『加護』っていうかなり大きな報酬があったんだが・・・?」
『なんだ。君も随分と欲があるじゃないか。』
「対価と言ってほしいね。」
するとフィルルがディロンに胸を張って説明を始めた。
『正当な仕事には正当な対価が必要なんですよ!なので私も働いた後はきちんと対価として果物を貰ってるんです!』
ふふーんといった感じでフィルルが自慢する。
それを聞き、ディロンが少し考えていた。
『ふむ・・・。それは一理あるな。ススム。君の収納袋を出すと良い。』
頭に?を浮かべながらと俺は言われた通り収納袋を取り出す。
すると次の瞬間、カッ!と収納袋が強い光を放った。
「うわ!なんだ!?」
一瞬だけ光った収納袋だったが見た目的に変化はない。
『その収納袋に私の加護を付けた。効果は・・・、まあ試してみると良い。』
俺は再び頭に?を浮かべ【ディメイロン】の加護が付いた愛用の収納袋に手を突っ込んで驚いた。
今までの収納袋のイメージとしては、手を突っ込めば脳内にどれくらいの容量のものが入るのかがイメージできたのだが今の収納袋にはそれがない。
というか無制限に物が詰め込めそうなイメージだった。
「おいおい・・・。まさか?」
『その【まさか】だ。さて、疲れたし私はそろそろ休ませてもらうよ。』
そう言いディロンがくるっと身を翻した。
「あ、ああ。おやすみ、ディロン。」
『ディロンさん、おやすみなさいですー。』
俺達の言葉に一瞬振り返るもすっと消えるようにディロンは何処かに行ってしまった。
「それにしてもとんでもない物をサラッと渡してきやがったな・・・、あいつ・・・。」
『正当な報酬です?』
「なのかねえ?彼奴等の話はスケールが大きすぎて同じ定規で測れないのが困った部分だ。」
俺の話にフィルルが?を浮かべていた。
「さ、片付けも終わったしフィルル、おやつでも食べるか?」
『やったー!』
俺はフィルルにおやつを上げ、自身も少し食べていると疲れが一気に上がってきたのか、その場で眠ってしまった。
翌朝、ぶにー!っと顔面をいつものようにポチに踏みつけられながら目を覚ます。
『朝なのー!起きるのー!』
「・・・起きたよ・・・。全く。ふぁぁーあ・・・。」
クエスト終わりにいつもとは違う場所で寝ていたせいか身体が痛くてしょうがない。
「あいたたた・・・。」
俺が身体を伸ばすと後ろから声が掛かった。
「おはよう、ススム君!」
「おはようございます!ススムさん。」
「ああ、おはよう。二人とも。セリルとナナリーさんもおはようございます。」
俺はいつもの面々に声を掛ける。
「ん?アリスさん今日は仕事は・・・?」
いつものこの時間なら先にアリスだけ穴熊亭に行きサーシャ達が残っているかどうかというような時間だった。
「もー、何言ってるの!今日は仕事どころじゃないでしょー!」
「そうです!今日はそんなものよりも重要なことがあるじゃないですか!」
仕事が中心に回ってそうな二人がそんなことを言うものだから俺は驚く。
「ススム君、昨日帰ってきてからお風呂入ってないよね?先にさっぱりしてきて!」
「ええ、その間に私たちも支度しておきますから。」
「支度・・・?何処か行くの・・・?」
俺がそんな事を疑問に口にすると、驚いて二人は顔を見合わせるも、いつもの「ああ、そうか」という様な表情になる。
アリスから話の切り出しがある。
「私たちは昨日、正式に親兄弟に認められて結婚することが決まったよね?」
俺がコクコクと頭を振ると、サーシャが追加で説明をしてくれる。
「結婚が正式に決まったものはやることは二つです。1、役所への届け出。2、教会での式です。」
俺はそう言われ納得した。
「なるほど。ということはこれから届け出に行かなきゃ行かないんですね。」
「「そういうことです。」」
二人に正解を貰い、俺は急いで支度を整えることにした。
支度を整えている最中にふとあることが頭をよぎる。
『教会』での式ってまさかルミナリアの『教会』じゃないだろうな?
俺は体を洗い身綺麗にした後、二人に確認をする。
「さっきの話に出ていた、教会での式ってまさか『ルミナリア』教の教会で?」
「そうだけど?」
「なにか問題でもありますか?」
「やっぱりか・・・。教会での式は今日じゃないよね?」
俺が聞くとアリスが答える。
「そうだねえ。親族とか呼んで日程決めて、準備もあるし、結構先になると思うよ?」
同意するようにサーシャが答えた。
「私は貴族間の式しか見たことは有りませんが相当豪華なものになりますので時間もかなり掛かると思います。」
俺はそれを聞き、ほっと胸を撫で下ろす。
「なら良かった・・・。とりあえず役場に行って手続きだけしよう。」
俺がなにか思う所があると感じた二人だったが、役場に行くことは同意しナナリーの用意してくれた馬車で移動した。
役場に行き、指定の用紙を書き提出する。
一度に二枚の結婚届が出された事自体がかなりのレアケースだったようでどよめきが起きるが、それ以上にサーシャが伯爵家の書状と王家の書状を持ち合わせての届け出となったため更に混乱が起きる。
役場でもかなり上役っぽい人が出てきて困惑しながら答えた。
「サーシャ様のご事情は理解できましたが何分こうした事は初めてでございますので・・・。大変申し訳有りませんが、後日こちらで対応できるものをご自宅に派遣し、その際受理させていただきたく思います。アリス様の分については今受理できますが如何がなさいますか?」
そう言うとアリスとサーシャは見るからにがっかりし、アリスの分の提出はサーシャに合わせるということで合意される。
まあ、役場の人間の言ってることも理解できるのでこれはこれでしょうがないことだろう。




