【第121話】報告
新たな家族、黒猫のディロンを連れて家に帰ると何やら外からでも分かる賑やかしさが伝わってきた。
『なにやら賑やかだな?』
「そのようですね・・・。フィルル?」
『ここにおります!お帰りなさいませ!と、そちらのお方は?』
「ああ、うちの新しい家族の黒猫のディロンだ。」
『ディロンさんですか!宜しくお願い致します!フィルルはフィルルと申します!この家の家守妖精をしております。』
『ふむ、ディロンだ。訳あってこれからお世話になるよ。よろしく頼む。』
「ところでフィルル。お客さん?」
『ああ、はい!ヴォルフガング様がいらしています。』
「ブッ!」
何で昨日の今日のこのタイミングで挨拶に行かねばならないと思っていた前伯爵がここに居るんだ・・・。
「まあ・・・、あの人のことは考えても無駄だな。うっし!」
俺は両手で顔をパン!と叩くと気合を入れ直し、家に入る。
「ただいま帰りました。」
「あ、ススム君おかえりー。」
「ススムさん!お帰りなさい。」
アリスとサーシャはいつものように出迎えてくれる。
そして奥から前伯爵が姿を表す。
「ススム、帰ったか。」
「ええ・・・。何故ここに?」
「何故も何も無かろう!コヤツめ!遂にサーシャを嫁に取るらしいじゃないか!」
「あはは・・・。お耳が早いことで・・・。いや、まあそうなんですがね。後日改めて正式にご挨拶に伺おうかと思っていました。」
俺は姿勢を正し、前伯爵の間に跪く。
「折角なのでこの場をお借りし、正式にご挨拶を。この度、私ススムは正式にサーシャさんに結婚をお願いし、お受けしていただくことが叶いました。身分が大きく違います故、どうかこの話を祖父でいらっしゃられるヴォルフガング様にお伝えし、是非ともお受けしていただきたく思います。」
俺が改まってそう言うと場は一気にシーンとし、そしてサーシャの祖父であるヴォルフガングではなく、一貴族で前伯爵という立場を持つヴォルフガングより言葉がある。
「うむ。普段であれば一庶民と伯爵家の娘。とてもではないがその結婚は認めることは出来ない。だが、ススム。御主の行ってきた数々の功績。とても素晴らしいものであり、それは我が王国としても大変重宝しているものである。この件は既にサーシャの父である現伯爵には既に報告済みであり、かつ承認も得ている。また国王においても同じ様に報告済みであり、サーシャの伯爵家令嬢という身分の返上について承認済みである。よって正式に我が娘との結婚を承諾するものである。」
俺はその言葉をしっかりと受け止め顔を上げる。
「ありがとうございます。ヴォルフガング様。」
「ああ、サーシャを、我が愛すべき孫をしっかりと頼むぞ。ススム。」
「はい。確かに。」
すると、「わーー!」という歓声とともに拍手が起きる。
「よかったですね。ススムさん!これで私たち晴れて夫婦ですよ!」
サーシャがそんな事を言うとアリスから声が掛かる。
「ちょっと待ったーー!!ススム君!今ここにパックを呼んで!それでパックにも報告するの!」
「ああ、そうだね。ちょっとパック呼んでこよう。」
俺がそう言い、パックを呼びにミストヴェイルの穴熊亭に移動するとなにやらざわざわしていた。
何事かと思えばパックが行ったり来たりしている。
「パック。」
「うお!?来たな!!コノヤロー!!」
そう言われ俺はパックに捕まれ頭をぐりぐりされた。
どうやら結婚の話は知っているようだ。
「ちょっと!パック!俺はパックを呼びに来たんだ。まあ、話は知っているだろうが。家まで来てくれないか?」
「ああ、わかった。」
そう言いパックはやたらと素直に俺の家までついてくる。
家に到着するまでの間はお互い何か緊張してしまい一言も発さずそのまま、皆が待つ場所へと到着する。
「あ、パック!早く!こっちこっち。」
「あ、ああ・・・。」
パックはアリスに誘導されるがまま定位置に付いた。
俺は深呼吸をしパックのもとで同じ様に跪いた。
その姿に少しパックはぎょっとしていた。
「パック、既に聞いているとは思うが、俺は先日アリスさんへ正式に結婚の申し出を行い、受けて貰えた。本来であればご家族であるパックに先に話をすべきだったかも知れない。そこで改めてこの場を借りて報告を行いたい。」
俺はここまで言い、もう一度深呼吸をした。
「是非、妹さんを俺にくれないか?」
俺がそう言うとパックは一言だけ俺に返事をした。
「ああ、頼む・・・。」
「ありがとう。大切にします。」
すると先ほどと同じ様に歓声と拍手が起きる。
「やったー!!これで私もススム君と晴れて夫婦だー!」
そう言いアリスとサーシャが俺に抱きついてきた。
俺はアリスとサーシャにもみくちゃにされる。
どうやらパックは男泣きをしているようなので放って置くことにした。
『なんだ、ススムは結婚するのか?』
「ああ、実はお前を助けに行く前に話をしてたんだ。それで戻ってきたら、この有り様だ。」
『そうだったのか。おめでとう。』
俺がディロンと話をしていると皆が不思議そうにディロンのことを見た。
「そう言えば見慣れない猫ちゃんだねえ。」
「そうですね?はじめましてですか?」
アリスとサーシャはディロンを撫で回している。
「ああ、今日から家の家族に追加になったディロンだ。」
俺がそう、ディロンのことを紹介していると前伯爵だけが若干青い顔をしていた。
もしかしたらディロンの招待に気がついたのかも知れない。
「それにしても、やることやったらお腹減ったなあ。皆で食事なんてどうです?」
俺が話をすると是非!と声が上がり、この日は俺とアリス、サーシャの結婚とディロンのお出迎えを祝してバーベキュー大会が急遽開かれたのだった。




