【第120話】黒猫のディロン
「も、戻ってきた・・・?」
俺は辺りを確認するがやはりここは学校に設置している、ヴェリティアの礼拝堂のようだった。
『これでも私は空間を司る神ですので。』
そういうとディメイロンはフフっと笑う。
『それにしてもここは随分と活気があるようですね。以前とは比べ物にならないくらいに。』
今は無人のこの礼拝堂を見回しディメイロンはそう言葉にした。
「今は私たちだけですが?」
『ええ。ですが、空気が違います。子どもたちの活気のある風景が自然と流れてきます。大切にされているようで良かったですね、ヴェリティア。』
『それもこれも今ここにこうして私が居られるのも、貴方がこの場にいれるのも全てこのススムの献身があったからです。』
ふむ。とディメイロンは俺を見て頷く。
『本当に感謝する。ススムよ。』
「良いんです。私は偶然それを成すだけの力があっただけ。それに俺が今動かなければこの世界は危ないんでしょう?元はこの世界のものではないが故にそれほど関心はなかったですが、今は帰りを待ってくれる家族がここにはいます。他人事ではなくなってしまったんですよ。」
『そうですか・・・。ではススムよ。私達からお願いがあります。』
「ルミナリアに封じられし、他の神々の救出ですね。わかっています。」
そう言うとヴェリティアとディメイロンは驚いた表情をしている。
『・・・よろしいのですか?』
「よろしいも何も、元からそのつもりで俺にあのダンジョンの鍵を渡したのではないのですか?」
『確かにそのつもりでしたが、その時と今では環境に変化が生まれたのですよね?』
「だからこそですよ。誰かがやらなければ恐らくかなり早い段階でこの世界はダメになる。最近新しい勇者をルミナリアは召喚に成功したらしいですが、この勇者も素行がかなり悪いと聞きました。恐らくその様子を見て、ルミナリアは更にこの世界の理を捻じ曲げる可能性もありますよね?」
俺が二人に問いかけると、二人は複雑そうな顔になる。
『仰るとおりです。この世界の理はねじれにねじれ、今にも崩壊する寸前です。』
『なので今ここで元の理を手に入れなければ、その言葉の通り、この世界は崩壊するでしょう。』
「それは私としても困ります。なので手伝いますよ。まあ、ただの人間が神々の世界や理に首を突っ込んで無事で済むのかという不安は確かにありますが。」
『そうですね・・・。でしたらば今後は私は貴方に付き添い、常に見守りましょう。』
そう言うとディメイロンはするすると小さくなっていき、最終的に黒猫の姿になる。
俺は突然のことに驚いているとヴェリティアはふふっと笑う。
『ディメイロンのその姿。懐かしいですわね。』
どうやらディメイロンのもう一つの姿のようだった。
『人間社会に溶け込むにはこの姿が一番良いからね。』
「ということは、俺を見守るって本当に俺のそばに四六時中居るってことですか?」
『ああ、そのつもりだ。』
なんと、神様的に遠くから見守っているよ、という意味では無く直接そばで本当に見守るらしい。
「仮にも神様なのにそんな事して大丈夫なんですか?」
『うん?ああ、私は元々定まった場所にはいないし特定の信者などもいなかったからね。』
「随分、自由奔放な神様だったんですね・・・。」
『まあね。これでも【空間】を司っていたから、色々な場所に行くことも出来たし。』
「そうか、転移なども自在にできるんですもんね。」
『そういうことだ。』
「そんな能力を有していても捕縛されるってルミナリアの呪縛はそんなにも強力だったのですか?」
俺がそう聞くと二人は苦々しい顔をする。
『ああ、あの娘は【知恵】を司る分頭は当然良い。【悪知恵】も当然働くからね。私たち神々の相性を徹底的に分析して、その相性が悪い牢獄を構築し閉じ込めたんだ。』
なんつう神様だ・・・。
「所で次に助けるべき神様のは誰ですか?」
俺がそう聞くとディメイロンが形の違う、ダンジョン鍵を空間から取り出す。
『これだ。受け取ってくれ。』
その差し出された鍵を手に取ると情報が表示された。
【クエスト】
『時間の神の救出』
目的:囚われし時間の神の救出
LV48~
「なるほど、次は『時間』ですか。」
『ああ、そうだ。』
「レベル48からの制限か。また少しレベル上げしないとな。」
『よろしく頼む。』
既に戦闘でくたくたになっていた俺は家に引き返すことにした。
「ではヴェリティア様、そろそろ帰りますので。」
『ご苦労さまでした。次もまたよろしくお願いしますね。それとポチ、貴方も本当に努力しているようで何よりです。加護を与えている神としても非常に誇らしいですよ。これからも私の代わりにススムをお願いしますね。』
ヴェリティアがそう言うとポチを纏っていた光がすっと消える。
『勿論です!ポチはこれからも御主人を守るよ!!』
「そいつは頼もしいことで。じゃあ帰ろうか。」
『うむ、参ろうか。』
「所で今後ディメイロン様のことはなんと呼べばいいので?」
『そのままではいかんのか?』
「いやいや、流石に神様と同じ名前って理由にも行かないでしょう。それに少し言いにくいので・・・。」
『ふーむ・・・。』
「じゃあディロンでどうです?」
俺がいつもの安直名前つけをするとディメイロンはそれが気に入ったらしい。
『わかった。では私はこの姿の間はディロンと名乗るとしよう。』
『ディロンー。よろしくなのー。ポチはポチなのー。』
「改めて俺はススムだ。よろしくな。ディロン。」
こうして俺の家族に更に一柱もとい一匹の黒猫ディロンが仲間になることになった。




