【第119話】空間の神ディメイロン
異形が居た所には空間に亀裂が走っている。
今行っているクエストは『空間の神の救出』だ。
すなわち、空間を司る神、『ディメイロン』に関わるものの可能性が非常に高いと直感的に感じた。
今の状態を見る限り、この空間が更に広がったり、『ディメイロン』が出現したりする様な様子は見られない。
俺は考える。
一人のただの人間が『空間』に干渉することなんて出来るわけがない。
当然のようにそう考えていたが、俺はふと思い出す。
「あるじゃないか。『空間』に干渉する可能性がある『魔法』が。」
そう、それはこの間トレジャーゴブリンを仕留めるために放った究極魔法、『終焉崩壊』だ。
あれは一時的なダンジョンという空間や時間の概念がめちゃくちゃになり、ダンジョンなのものが破壊できないというある意味では法則を成していた場所だったが、『終焉崩壊』はそれすら破壊した。
つまり、『空間』に干渉しうる魔法だということだ。
だが仮に、この空間が実は『ディメイロン』には何の関係もなく、ただいたずらに空間を傷つけるだけになれば自分がどうなるかがわからない。
今までの俺なら問答無用でぶっ放していただろう。
だが昨日でそれも事情が大きく変わった。
俺には帰りを待ってくれている家族ができる。
それを考えれば当然無策で思ったままに行動ということがしづらくなる。
俺はどうするべきか悩む。
だがその時だった。
さっきまで文句をたれていたポチに変化が起きた。
急にポチが光だし俺は慌ててポチを離すと、ポチは口を開き話し出す。
『聞こえますか?ススムよ。私です。』
それは聞いたことのある声だった。
「ヴェリティア・・・様ですか?」
そう、俺の前に何度か現れ、そしてこのクエストに誘った張本人である。
『そうです。今は我が眷属の身体を依り代に貴方に話しかけています。』
なるほど。
ポチが眷属であるからこそ出来ることなのか。
俺がそんな事を考えているヴェリティアは告げる。
『貴方の考えに従いなさい。』
「え?ですが・・・。」
『大丈夫です。』
ヴェリティアは俺の考えを見通しているようなそんな雰囲気で俺に行動を促した。
「・・・わかりましたよ。仮にもし、俺に何かあればその時は保証してくださいね。」
『ふふ。そんな事は起きませんよ。私は【幸運】を司る神ですから。』
「それは随分と心強いお言葉で。じゃあ、やりますので少し離れますよ。」
俺が移動を開始するとヴェリティアの依代になっているポチは不思議なことに半透明の鳥の羽のようなものが生えたかと思うと、空をすいーっと飛んで俺に付いてきた。
「・・・そんな事もできるんですか?」
『これでも出来ることのほんの一部に過ぎませんが。さて、ここら辺で十分でしょう。放つ魔法は可能な限りあの亀裂を広げられるようにお願いしますね。』
「それって相当なパワーになりますが大丈夫なんですか?」
『ええ、【保証】しましょう。』
そう言い、ヴェリティアはくすくすと笑っているのがわかった。
「分かりましまた。」
俺はポーションが入った収納鞄からMPが回復するものを取り出し飲む。
そしてMPが回復するのを待ち、全開になったのを確認しおれは場所を決め、そして手を亀裂の方向へ向ける。
「行きますよ!」
『久遠の彼方より来たる光、森羅万象を灰燼に帰し、世界を再誕へと導かん。
虚無の淵より響くは、理の崩壊を告げる鐘の音。全てを無へと還す、一筋の裁き――』
『終焉崩壊!!』
俺の手に収束した全魔力が一気に光となって放出される。
その光は一瞬だが、軌道上にあるもの全てを爆音を上げて破壊する。
空間の亀裂に直撃した光は理を破壊し空間に大穴を開ける。
俺はその出来た大穴に吸い込まれるのではないかと身構えるも、それよりも先にポチの身体を依り代としたヴェリティアが飛んでいく。
『ディメイロン!!』
ヴェリティアは叫び囚われている神の名を呼ぶ。
するとカッ!と強い光が一瞬広がった穴から差したかと思うとそこからよろっと少しよろけながら華奢な体つきをした男の様な女のような全身が中性的な者が出てくる。
一瞬人の様にも見えたが、纏う気配は決して人のそれではなかった。
一目でこの目の前に現れた者の正体が理解できた。
「空間の神・・・ディメイロン・・・。」
長い事、封印されていた影響からだろうか、よろよろとしている。
『助かりました・・・。ようやくルミナリアの呪縛から解放されることが出来ました。』
『ディメイロン!』
『ヴェリティア・・・。心配をかけましたね。他の者達は?』
『貴方と同じです。私も他のものも全てルミナリアにより封字されてしまいました。』
『そうですか・・・。』
『ですが、ここに居る者により何とか私たちは状況を打開できそうです。』
『この者は・・・?そうか、貴方は・・・。巻き込んでしまったようで申し訳有りませんでした。改めて礼と自己紹介を。』
そうして姿勢を正しディメイロンは自己紹介をしてくれた。
『私の名はディメイロン。この世界の【空間】を司る者です。助かりました、他の世界のものよ。』
「いえ、無事で何よりです。それに俺は俺なりにこの世界を守る理由が出来てしまったので。もう元の世界に未練も有りませんし。」
『そうですか・・・。ひとまずはここから脱出致しましょう。この空間はルミナリアの気配が強く居心地が非常に悪いので。』
そう言い、ディメイロンがパン!と両手を叩くと一気に俺達はクエストダンジョンから脱出をし、学校の礼拝堂に飛んでいた。




