【第115話】価値
「いやあ、それにしてもお宝沢山でしたねえ!眼福です!」
そう言い、サーシャは非常に満足した表情を浮かべている。
「でも【呪われた装備】だったから効果まではわからないんでしょう?」
俺は当然のことを聞いたが、サーシャはそれでも構わないという。
「はい。でもこれらの【呪われた装備】達は本当の意味で【呪われている】訳ではないので、良いんです。」
「そんなもんなんですかねえ・・・。」
「そんなもんですよ。それにしてもこれらの品々、どうするおつもりですか?」
そこが問題だった。
今回トレジャーゴブリンがダンジョン主だったお陰でルーン含めかなりの数が一気に手に入った。
だが実際、俺が目星をつけたのはたったの一点。
ルーンはまだ使い所があるかも知れないのでいいが、他は完全に俺の適正外のものでありただの収納鞄の肥やしにしかならない。
「うーん・・・。」
俺が悩んでいると、サーシャは提案をしてきた。
「ヴェルナー様に引き取ってもらうのはどうでしょう?」
「なるほど。大口の商会なら確かに資金力もあるし今までも支援してきてもらった分、返せる物があるかもな。そうしましょう。」
「そうと決まれば出発です!」
「ええ・・・。」
サーシャの行動力にはいつも驚かされる。
セシルとナナリーはその行動を予見していたかのように移動の準備を終えているし、この行動力はいつものことなんだろう。
俺も準備を整え、『紫苑堂』のヴェルナー男爵のもとに行くこととなる。
道中で俺は急に言っても良いものなのかとふと思い、サーシャに聞く。
「急に行っても問題にならないんです?相手は貴族でもあるんですし。」
「何を言ってるんです?ヴェルナー様はススムさんのファンですし、何より私は『今は』伯爵家の娘ですよ?」
「そう言えばそうでした。」
確かに言われてみればサーシャは普段からそんな様子を見せないので忘れていたが、立派な『伯爵家』の姫なのだった。
だが、今の『今は』という所に若干に引っかかりを覚えたがそれは今は横においておくことにしようと隅に追いやった。
早速『紫苑堂』に着くなり、直ぐにヴェルナーが迎えに来てくれる辺り、やはり俺のファンというのもあながち嘘ではないらしい。
「ようこそ。ススム様。お加減はもうよろしいのでしょうか?私、倒れられたとお聞きし不安で不安で仕方がなかったのです。」
「ご心配お掛けし申し訳有りません。一過性のものですので大丈夫です。所で今日はお話があってきたのですが。」
「ええ勿論。ご案内致します。」
そうして通された所は商談用の部屋であった。
どうやら俺の知らないところで先触れとしてサーシャが手紙の魔道具で知らせていたらしい。
こういった気配りもサーシャは抜群だ。
あのお宝鑑定残念娘の部分がなければ本当に非の打ち所がない娘なんだよなとじっとサーシャの顔を見るとにこっと笑顔で返してくる。
通された部屋で早速話をする。
「それで、今日のお話というのは?」
「実は昨日、一時的なダンジョンに行ってきたのですが、その際の戦利品を引き取って欲しいのです。」
俺が説明するとヴェルナーは顔を輝かせる。
「おおおお!!それは本当でございますか!?是非引き取らさせていただきたく思います!」
「まだ、品物を見てすらいないのにそんなに乗り気で良いので?」
「普通の【呪われた装備】でございましたらまだ考える余地も有りましょうが、ススム様が直接得た御品であれば考える余地はありません!何よりの最高の保証となります。」
「ええ・・・?」
どうやら俺は【呪われた装備】の保証人としては最高の保証を与える証人となっているようだ。
喜んで良いのか全くわからん・・・。
「それで御品は何点ございますか?1点ですか・・・?まさか2点!?」
「いえ、昨日のだけで引き取ってもらいたいのは8点ありまして・・・。」
「なっ・・・!?」
そう言いヴェルナーが固まった。
あ、これまた地雷を踏み抜いたな。
暫くの沈黙の後、ヴェルナーがこっちの世界に戻れたようで平静を装いながらヘレナを部屋に呼んでいた。
その際、サーシャが若干不満そうな顔をしていたがまさか幾つか欲しかったのだろうか?
「サーシャさん、まさか装備品のいくつか欲しかったんです・・・?」
「欲しくないですよー!ええ、本当に!欲しくないですよー!!」
あ、これは欲しかったんだな・・・。
「・・・。分かりました。じゃあヴェルナーさんと話し合って下さい。」
「本当ですか!?」
かなり前のめりで返事をしウッキウキになる。
俺は敢えて、手に入れた【呪われた装備】の説明はせずヘレナを通して装備の効果の説明が行われる。
俺が直接説明をしないのは俺という存在が【迷い人】の中でも異端なため、『俺』には見えて『ヘレナ』には見えない部分もあるかも知れないからだ。
そうした部分はなるべく今後も隠していきたい。
そして、俺の思惑が早速現れたことがあった。
それは『幸運の女神ヴェリティアの加護』だ。
昨日ポチは装備品全てに加護を取り付けた。
故に俺が装備品を見れば『ヴェリティアの加護』が付いているにも関わらず同じ『言語理解』を有しているはずのヘレナの口からはその『ヴェリティアの加護』については語られない。
つまりここから分かることは『ヴェリティアの加護』が発動するものは俺が所持、使用する時限定だということだ。
これは非常に重要な情報であるがそれと同時に秘匿すべく情報である。
「うーむ・・・。困りましたな・・・。」
「そうですねえ・・・。」
品定めをしていたヴェルナーとサーシャが非常に困惑していた。
「どうかしたので?」
俺が話を聞くと以外な答えが帰ってきた。
「ああ、ススム様。いえ・・・、どれも装備品が『極上』すぎるのです・・・。」
「え?」
俺はポカーンとした表情になってしまう。
【呪われた装備】で『極上』もなにもあるのだろうか?
「詳しくお伺いしても?」
「はい。世界各国に【呪われた装備】が点在しコレクターが居ることはススム様はご存知ですか?」
「ええ、そうだろうとは思っていますし、うっすらとそんな話を聞いたことがあります。」
「その中でもやはり各装備によって希少性などが加味され、当然付加価値が代わります。」
「それは理解できます。」
「ですがススム様のお持ちになった【呪われた装備】はどれも価値が高すぎます。」
「ええ・・・?以前聞いた話では等級で価値が決まると聞いていた気がするんですが?」
「確かに等級も重要ですが、ススム様のお持ちになったものはどれも等級に見合っていません。少なくとも私が今まで見てきた中ではぶっちぎりの性能なんですよ。」
まじかー・・・。
正直それは予想していなかった。
呪われた装備品の中でも性能がブレるのは何となく理解していた。
それは俺の【ハックアンドスラッシュ】の能力も起因しているだろうとは思っていたが、そんな事になってるとは思っても居なかった。
「正直これらを買い取るとなると私どもの商会をもってしても予算を大きく超える可能性があります。」
「ぶっ!!」
俺は余りの言葉に思わず吹き出してしまった。
「そ、そんなに高級品なんですか!?」
「ええ・・・。オークションにかければ価格は青天井になるでしょう。」
「なっ・・・!」
まさかそんな品だとは思っていなかった。
俺が嗜んできたハックアンドスラッシュのゲームでは拾った10個の装備の中にギリギリ使えるかどうかの装備があるか、無いかの世界だった。
当然それでも二軍程度の装備品でありメジャーリーグ級の超一流の装備ともなれば1,000個の中で1個あるかどうかの代物を選ぶというようなゲーム性だった。
故にとんでもなく長く遊べるゲーム性であったのだ。
ではゴミ装備はどうしてたかと言うと、NPCのショップにゴミのような値段で売り払うか、それすら面倒くさい場合はその場に捨てていたぐらいだった。
今回の装備もそれらに該当する。
だがここではその価値が大きく変わるという事実を知った。
さて、どうしたもんかな・・・。




