【第114話】加算?乗算?
真夜中の大鑑定大会が開かれることとなり、俺もいそいそと用意をする。
だが、そこで大会主催者のサーシャから仕切り直しの言葉が持ちかけられた。
「うん?土まみれじゃないですか!すごい汚れてますよ。」
俺はそう言われ自分の身体を改めて部屋の中で確認すると土等でかなり汚れているのがわかった。
そう言えばあの究極魔法をぶっ放したお陰で俺もポチも土や砂にまみれて大変な思いをしたんだったとふと思います。
「やはり今夜の鑑定は止めましょう。その代わりお風呂に入ってゆっくり休んで下さい。鑑定はお休みになられた後午前中にでも仕切り直しましょう。」
サーシャが真顔でそんな事を言うんだから俺とアリスは過去一びっくりし、心配になった。
「な・・・!?サーシャさん!大丈夫か!?疲れてるの?」
「サーシャ!!次はもしかして貴方が寝込んじゃうの!?」
俺とアリスの心配っぷりにサーシャは憤慨する。
「失礼ですね!私だってそれくらいの分別はありますよ!・・・確かに今から鑑定大会を開きたい気持ちは十二分にありますが。」
ぷんすこ怒っているサーシャを見るに俺の心配を心からしてくれているようだ。
「あはは・・・。すみません。では、僕とポチは風呂に入って休ませていただきます。その代わり午前中には鑑定しましょうか。」
俺がそう提案し直すとサーシャに笑みが戻る。
「はい!楽しみにしてますね。」
そういい、鑑定道具をいそいそと回収していくのだった。
「じゃあ、私たちはこのままお先に寝ちゃうね。」
「ダンジョンお疲れ様でした。良い夜を。」
アリスとサーシャから温かい言葉を貰い俺も返す。
「起こしてしまってすみませんでした。良い夜を。」
別れた後はフィルルに手伝ってもらい湯を沸かし風呂に入る。
「ふあーーーー。生き返るーーー。」
『気持ちいいのお・・・。スヤァ』
ポチはとそう言うと器用に風呂に入りながらそのまま寝てしまう。
どうやら疲れていたようだ。
俺はポチが風邪をひかないようにフィルルを呼びポチを任せる。
「フィルル、ポチの身体を拭いてそのまま寝かしてあげたいんだけど任せて大丈夫かな?」
『大丈夫です!ポチは小さくて軽いですから。お任せ下さい。ごゆっくり。』
ということで俺はゆっくりと疲れた身体を湯で温めるのだった。
「それにしても、あの魔法。良く考えたらダンジョンの構造は時が止まったかのように変化起きないはずだったが・・・。」
俺はパシャっと顔を湯で洗う。
「思いっきり、地形が変形してたな・・・。呪文でもあったが“理”を破壊するぐらいの呪文なのか・・・?」
あの魔法の影響は凄まじかった。一直線上にとんでもない破壊と崩壊が起きておりトレゴブもかろうじてその戦利品で存在が居たであろうということくらいしかわからなかった。
「使い所を間違えないようにしないと・・・。特に表の世界でぶっ放そうものならそれこそ『魔王』だ何だと言われても可笑しくはないな・・・。」
俺は「ははは・・・。」と笑えない乾いた笑いをし湯冷めしないように早々に風呂から出る。
『お疲れ様でした。ススム様。』
フィルルは俺が出ると同時にタオルを用意してくれる。
「ありがとうフィルル。ポチは大丈夫?」
『はい。身体を綺麗に拭いて上げてもそのまま寝てました。』
「そっか。ご苦労さま。」
俺もフィルルから受け取ったタオルで身体を拭き、片付けはフィルルとのことだったので任せて早々に寝ることにした。
布団に入ると同時に意識を持っていかれるように眠る。
『・・・主人!御主人!!朝なのー!!』
「んごぉ・・・。」
朝から元気いっぱいのポチに顔面を踏みつけられ目が覚める。
『あ、起きた!何で昨日おやつ一杯くれなかったのーー!!』
「ううぅん・・・。なんでも何もお前昨日風呂入りながら寝ただろう。」
『おやつ一杯ー!!』
ポチは駄々っ子のように俺の身体の上でゴロゴロし始めた。
俺は身体を起こしポチをどかす。
「じゃあ、これから朝飯だ。その時にポチにおやつも一杯上げるよ。」
『やったのーー!!』
「フィルルも昨日は助かったからおやついっぱいにしてあげよう。」
『わー・・・!』
俺がポチとフィルルを連れリビングに行くと朝食が作られておいてあった。
「あ、おはようございます。ススムさん。」
「おはようサーシャさん。それにお二人も。アリスさんは?」
「もうとっくに穴熊亭に行かれましたよ。」
時刻はいつも俺達が朝出発している時間を過ぎているくらいだった。
「随分ゆっくりしちゃったんだな。朝食ありがとうございます。」
「いえ!その分お疲れになられていたということでしょうから。」
昨日のウッキウキの残念娘とは思えないくらいしっかりした娘に見えるので不思議だ。
「ふう。ご馳走様でした。料理の腕、上がったようで何よりです。」
確実に料理の腕が上がっている朝食を食べおれは感想を伝える。
「満足してもらえたようで何よりです。」
セリルとナナリーが頭を下げ礼を述べている。
「私も頑張ったんですよー!」
そういいサーシャも奮闘した様子を教えてくれた。
俺はポチにジャーキーを、フィルルにドライフルーツをいつも以上に与え感謝を伝える。
「はい、これ。約束のおやつ一杯ね。」
『『わーい!』』
ポチとフィルルは満足したように食べ始めたので俺達は夜にお預けとなった大鑑定大会を改めて行うことにした。
「さて、ではだいぶお待たせしているようなので早速やりましょうか。」
俺はそう言い、昨日の戦利品を全て取り出す。
幾つもの戦利品に流石のサーシャ達も呆気にとられている。
「こ、こんなにですか・・・!?」
「ああ。今回は特別なボスがいたんでね。まあ運が良かったのさ。」
LUKはとんでもないマイナスなのでほぼ全部呪われてるだろうけど。
サーシャたちが片っ端から鑑定していくと予想した通り、持ち帰った戦利品計13品全てが呪われていた。
この世界で言う【普通の人間】なら恐怖でかたまり尽くすのだろうが、ここに居る人間には関係ない。
むしろお宝ザクザクな扱いとなる。
「ルーンが4つも出たのか。性能は・・・。うーん・・・。」
いつか使えどころがあるかどうかと言った内容でパッとしない。
ほかの装備品に付いても適正違いでまともに装備できる装備品が手に入らなかった。
たった一つを除いて・・・。
「こ、これ・・・。」
俺は一つの指輪を取り上げる。
「指輪ですかー?」
サーシャ達はどれどれと顔をのぞかせてくる。
俺が手に取った指輪の性能は以下の様なものだった。
【ユニーク:おしゃべり魔術師の指輪(加護)】
効果:HP-8、MP+17、MND+11、INT+13、LUK-13
鑑定効果:呪文の詠唱度合いにより使用する魔法の威力に補正が掛かる。効果は無詠唱で発動した場合威力が50%減衰し、完全詠唱の場合50%威力が上がる。なお、計算は乗算方式となる。また呪文については自身の状況に影響されずこの装備の効果が最も優先される。
加護効果:【基本】属性の威力が10%増加する。(加算方式)
加護:女神ヴェリティアの加護
空きスロット:無し
これまた、とんでもない装備品が出てきた。
最大で50%威力を『乗算』だと!?
俺はこの世界で初めて見た『乗算方式』のステータス補正装備に興奮を覚える。
先程から説明で出ている、『加算方式』、『乗算方式』とは以下のようになる。
『加算方式』=単純に指定の数字を『足す』ことで計算される。
例)ステータス値10の状態で10%の物を『加算方式』で装備した場合以下のようになる。
計算式: 10×(1+0.10+0.10+…)
特徴: 装備を重ねるほど、1つあたりの効果が相対的に小さくなる(減少傾向)。
例: 10%増加装備を2つ着ると、20%増加になる。
『乗算方式』=各効果を別々に計算し、順番に掛け合わせる。
例)ステータス値10の状態で10%の物を『乗算方式』で装備した場合以下のようになる。
計算式:10×1.10×1.10×…
特徴: 装備を重ねるほど爆発的に数値が増える(乗算効果)。
例: 10%増加装備を2つ着ると、1.10×1.10=1.21となり21%増加になる。
つまり一見同じ数字に見えるものでも積み重ねで考えれば『乗算方式』の装備品の方が圧倒的にステータスの伸びが良く、自身の強化につながるのだ。
今までこの世界で見てきた装備はどれも『加算方式』のものだけだったので『乗算方式』の装備は存在しないものだと思っていた。
俺はこの事実にただただ驚く。
そしてこの指輪の強制効果だ。
『また呪文については自身の状況に影響されずこの装備の効果が最も優先される。』
この一文がただただやばい。
一見すると長ったらしく意味のわからないことだがこういう事だ。
「呪文が必要な【どんな】魔法でも『無詠唱で』発動できるよ!その代わり威力は通常の50%下がるけどね!」ということになる。
つまり昨日、完全詠唱でぶっ放した究極魔法も威力は50%下がるが無詠唱でぶっ放すことが出来るというわけだ。
しかも昨日と同じ様に完全詠唱すれば50%の威力を増した状態で放つことが出来る。
俺は昨日の光景を目に浮かべなら更に威力が増した状態を考え、自分の魔法の威力に恐怖を覚えた。




