【第113話】ポチとトレゴブと究極魔法
俺は、このダンジョンのボスであろうトレジャーゴブリンの逃げ先を考えるも早速困った事態になる。
このエリアは茂った森で視界が悪い。
その上トレジャーゴブリンは一切の攻撃をしない代わりにとんでもない速度で逃げていく。
つまり痕跡がないと追跡そのものが出来ない。
開けた場所であれば比較的トレゴブの落としていく微々たるアイテムが追跡用の痕跡となるため追いかけることは出来る。
だがそれはあくまでゲームの話。
実際に目の前で起きているとなるとやはり勝手が違う。
「これは本格的にまいったぞ・・・!何処に行きやがった!?」
俺がそんな事を言うとポチが俺の顔面をバシバシ叩く。
「痛いよポチ!今は遊んでいる場合じゃないんだが!?」
『御主人!あっちだよ!』
「え!?ポチ!お前トレゴブの逃げた先がわかるのか!?」
『わかる!!どんどん離れていくよ!!』
「でかした!!後でおやつてんこ盛りだ!!」
『やったのーー!!』
俺はポチのナビゲーションにしたがい、全速力でトレゴブの後を追う。
身体には雷の上位精霊を纏っているお陰で、速力に強化が掛かり更に足が早くなっている。
風景はどんどん代わり、俺は風のようにトレゴブの後を追う。
『御主人!あいつ止まったよ!!』
「まずい!!」
トレゴブが足を止めて居るということは状況的に二択になる。
1、単純に俺を振り切ったと思い、一時的に急速をしている段階。
この次点ではまだタイムリミットではないし、この時が攻撃を当てるチャンスとなる。
2、タイムリミットとなり、トレゴブが脱出用の転移陣の呪文を唱えている段階。
ポータルが開ききってしまえばその瞬間、トレゴブは真っ先に逃げ込み討伐は失敗となる。
どの道、攻撃をするタイミングやチャンスは今しか無いというわけになる。
俺はどんどんと距離を詰めると同時にポチにトレゴブがいる方向を直線的に示してもらう。
「ポチ!方向はこっちで合ってるか!」
『合ってるよ!そのまま真っ直ぐ!!』
俺はポチからの情報を受け取ると即時、行動に出る。
それは覚えてから一度も使っていないあの魔法を使うタイミングだ。
『久遠の彼方より来たる光、森羅万象を灰燼に帰し、世界を再誕へと導かん。
虚無の淵より響くは、理の崩壊を告げる鐘の音。全てを無へと還す、一筋の裁き――』
呪文を唱え始めると一気に俺の残っている全MPが俺の手に収束していくのがわかる。
非常に複雑な呪文だが、俺は【ハックアンドスラッシュ】の『スキルボード』で覚えている魔法の呪文は一言一句間違うこと無く唱えきることが出来る。
究極魔法はレベルを上げても呪文詠唱の短縮の恩恵は受けないため、常に唱えなければいけない。
俺は呪文を唱え終えると同時に完全に魔法が手の一点に収束したのを感じ方向を取れゴブのいる方向に向け発射する。
『終焉崩壊!!』
ヒュ!っと音がしたと同時に放たれる一筋の白と黒の破壊と崩壊のみを司る未知の光。
それはとんでもない音を立て、光、そして全てを飲み込んでいく。
ドガガガガガ!!!!
木をなぎ倒すどころか直線上にある全ての物を地面をえぐる。
その光はとても強かったが一瞬で終わる。
そしてその後に押し寄せる爆風。
俺とポチはふっ飛ばされないように必死だ。
土煙がもうもうと上がり、その煙が晴れた先に見えた光景はとんでもない景色だった。
俺はその光景に思わず腰が抜ける。
幅で言えば半径5メートルほどだろうか。
俺を中心として、目標方向の全てのものが消滅して真っ直ぐな道の様になっていた。
「な、なんだこれ・・・。」
『えほん!えほん!すごい煙なのー・・・。』
「ああ、すまん。ポチ、大丈夫か?」
『全然大丈夫じゃないの!!』
「あはは・・・。とりあえずアイツが居たであろう場所に行くか・・・。」
俺は完全に抉り取られ直線上に地形が変形しているその道に沿って進む。
暫くするとポチがいつものように興奮しだしフードから飛び出して先に走っていってしまった。
「あ、こら!!ポチ!!」
俺は慌ててポチを走って追いかけていくとそこにはポチが興奮を抑えられずに飛び出していったのも納得の光景が広がっていた。
『あおーーん!!御主人!!すごいの!すごいの!!お宝いっぱいなの!!』
そこにはえぐれた地面の上に散乱する無数のトレゴブの戦利品らしきものがところ狭しと散らばっていた。
「こいつはすごいな・・・。」
だが、どうやらこのダンジョンは品定めをする時間をそうは与えてくれない。
直ぐにダンジョンの主が倒されたことによる崩壊現象の兆しが見えはじめる。
「まずいな!ポチ!戻れ!!」
『わかったのー!!』
ぴょんと跳ね、フードにポチが戻ったのを確認すると俺はとにかく散らばったアイテム類を収納袋に片っ端からぶち込んでいく。
そして丁度最後の一つが回収できた所で脱出用の出口ががぱっと開き俺達は無事にダンジョンから脱出をすることに成功する。
ひょいっと出てからはいつもは地面を転がることが多いのだが、今回はそのまま家の裏手に難なく出ることが出来た。
時刻は深夜になっていた。
俺はあの光景に呆気を取られ確認できていなかったレベルを確認すると、無事に経験値も入っていたようで1回のダンジョンで3レベルも上がっているのを確認する。
「トレゴブは経験値も美味しいんだな。今後も見かけたら是非狩りたい所だ。」
『おかえりなさいませ!ススム様ー!』
俺がそんな独り言を言っているとフィルルが飛んできてくれた。
「ただいま、フィルル。今回も無事に帰ってこれたよ。」
『その様で何よりです。ダンジョンに潜られてから丁度日を跨いだくらいです。』
「なるほど。という事は今回はダンジョンのほうが若干時の進みが早かったくらいだな。」
『いつ聞いても、ダンジョンは不可思議な場所ですね。』
「それが魅力でもあるんだけどね。」
俺がふぅと息を整えながら土埃を落とし家の中に入り、リビングに行くと元気そうに鑑定道具を広げている三人娘と若干眠そうなアリスの姿がった。
「おかえりなさい!ススムさん!」
「ススム君、おかえりー。ふぁあぁ・・・・。」
「ただいま。眠いなら寝てくれてても良かったのに。」
「あはは。そうは言ってもやっぱり大事な家族が帰ってきたなら迎えてあげたいじゃない?」
「うっ!」
アリスの屈託のない笑顔に更に言葉が重なり、俺は非常にときめいてしまう。
だが、そのすぐ横でウッキウキでアイテムを鑑定しましょう!とジェスチャーをしている残念娘たちを見て一気にしぼんで萎えてしまう。
「あ!なんですか、その表情は!?」
「いや・・・、なんでもないよ・・・。」
「そうですか!じゃあ早速鑑定をしましょう!!」
「あ、はい・・・。」
こうして真夜中の大鑑定大会が開かれることになった。




