【第111話】久しぶりの面々
俺は今、久しぶりに『ミストヴェイル』の鍛冶ギルドの前に立っている。
ギルドの前にいるだけでもわかる熱気と高い金属音がテンポ良く鳴っている。
「うーむ・・・。久しぶりに来たは良いが、何せあの別れっぷりだ。何言われるかわかったもんじゃないな。」
俺が怒られるのを承知できたのには理由がある。
それはヴェルナーから受けた提案を実行するためだった。
「まあ、なるようにしかならんか・・・。」
俺が歩を進めギルド内に入ると、違和感に気がついた。
「あれ?ここってこんな構造してたっけ?」
俺がキョロキョロと確認していると後ろから一際大きな声で声を掛けられる。
「ああああーーー!!!」
俺はビクッとしてその声の方向に向き直ると、そこには知った顔がある。
それは目的の人物の内の一人、カッフェだった。
「すすす、ススムさんじゃないですか!!」
俺は笑顔を引きつらせながら挨拶をする。
「や、やあ。カッフェ君。お久しぶり・・・。」
「お久しぶりじゃないですよ!急にいなくなったと思ったら街がスタンピードで滅び掛けてる時にひょいと現れて解決したかと思うとまた居なくなっちゃって!」
「あはは・・・。いやあ・・・。」
「おかげで師匠なんて折角新型の炉が出来たというのに魂抜けちゃってふにゃふにゃなんですよ!」
「ああ・・・。そうなんだ・・・。実はそのガルドンに依頼があってきたんだが、その様子じゃ無理かな?」
「!!そういうことならさっさと行きましょう!こちらです!」
カッフェに電撃が走ったかのように一気に態度が改まり俺はカッフェに腕を捕まれ問答無用で引きずられていく。
この子線が細い割に流石鍛冶職人。
とんでもない力してるんだよな・・・・。
「師匠ーーー!」
バタン!と大きくドアを開いた先に居たのはしぼんだ風船のようになっていたガルドンだった。
「・・・何だカッフェ。騒々しい・・・。」
「お客人ですよ!ススムさんですよ!!」
それを聞いたガルドンはガバっと顔を上げ俺の顔をしっかりと見る。
「おおおーーー!!ス、ススム!!」
「お、お久しぶりでぶっ!」
挨拶もそこそこに顔面にガルドンの鉄拳がめり込み俺は吹き飛ぶ。
「痛い!!」
「当たり前だ!このタコスケめ!!急にいなくなったと思ったら街がスタンピードで滅び掛けてる時にひょいと現れて解決したかと思うとまた居なくなりやがって!!」
さっき丸々同じ事を聞いた気がする。
「しかも、なんだぁ!?俺には顔を出さねえくせに、ジーニスの野郎には仕事を依頼してただ!?ふざけんじゃねえぞ!!」
あ、その件知ってたんだ。
多分ジーニスがガルドンのことを煽ったんだろうな・・・。
「い、いやあ・・・。面目ない。それでガルドンさん・・・?」
「ああん?!」
相変わらずこのおっさんの顔はめちゃくちゃ怖いな!
「実は依頼を持って来たんですが・・・。」
その瞬間、ガルドンとカッフェの顔色がガラッと変わり、笑顔満面になる。
「何だお前!!そういう事は早く言えってんだ!!お前に教えてもらった仕組みを取り入れた新型の炉が完成したってのに、肝心要のお前が消えたもんでまるで動かしてなかったんだぞ!!」
ええーーーー!!
そ、それは副ギルマスなのに大丈夫なのか・・・?
「そ、そうなんですね・・・。」
「それで!?どんな仕事だってんだ!!」
「ああ、いや・・・。実はジーニスさんにも合同で依頼を出したいと思ったので・・・」
そこまで言いかけた時に再びガルドンの鉄拳が飛んできたので流石に二度目は避けた。
「何をするんです!?」
「またジーニスの野郎の名前をだすとはお前、随分と俺を怒らせたいようだな・・・!!」
「わかった!わかりましたよ!!じゃあとりあえずこれを見て下さい!!」
俺は半分ヤケクソ気味に部屋の隅に以前手に入れた戦利品である、『オリハルコンゴーレムの外殻』を取り出す。
ドスン!という大きな音と共に出されたそれはオリハルコン独特の金属色を放っている。
「なんだこいつは!?」
流石のガルドンも一気に怒りが吹き飛び、恐らく始めてみたであろう金属に興味津々だった。
「なんだもかんだも見ての通りです。『オリハルコン』ですよ。」
俺がそう言うとガルドンとカッフェは目玉が飛び出るような顔をして驚いていた。
「「オ、オ、オ、オリハルコンー!?」」
「ええ、この前手に入れた戦利品なんですが、とある商人に見てもらったところ自分では扱いきれないのでギルドに依頼してはどうかと勧められたんです。そこで僕が『信頼している』金属加工の職人である『鍛冶師のガルドン』さんと『彫金師のジーニス』さんに依頼しようかと思ったんです。」
俺があえて『信頼している』と言うと、やはりこの言葉はガルドンには刺さった様子を見せる。
「お、お前ってやつは・・・!!よしわかった、カッフェ!!」
「はい!ジーニスさんを呼んできます!!」
そう言い、カッフェは彫金ギルドに飛んでいった。
程なくするとぜぇぜぇと息を切らしたジーニスがカッフェに連れられてやってくる。
「ガルドン!嘘ではないでしょうね!?本当にオリハルコンが有るんですか!?」
流石に普段冷静沈着を装っているジーニスですら、『オリハルコン』の言葉には惑わされたようでいつもの冷静さが飛んでいっている。
「ああ!正真正銘の『オリハルコン』だ!見てみろ!!」
ガルドンがそう言い見せびらかしているオリハルコンの外殻にジーニスも飛びついて鑑定を始め、そして驚愕していた。
俺はと言うと三人がわちゃわちゃしている様子をお茶を飲みながら観察しているだけである。
暫くしてから、三人が落ち着いたのか俺に話を振ってきた。
「ススムよ!確かにこれはオリハルコンで間違いなさそうだ!それで俺達にどんな依頼をしたいっていうんだ?」
「んー、そうですねえ。今自分が装備している装備品で装備していない部位のものだったらなんでも良いんですよねえ。」
そう言うと明らかに三人が嫌そうな顔をしだす。
「す、ススムさん。お話には聞いていますが、あれから更に【呪われた装備】を更新しているのですか?」
「何処から聞いたのかは聞きませんが、はいとだけ答えておきます。」
「お前・・・。良くそれで生きているな・・・。」
「あはは・・・。それはそうと、依頼は受けて頂けるんですか?素材と別途依頼金も出しますが?」
「「「受けるに決まっているだろう!!」」」
「じゃあ、お願いしますね。じゃあ早速契約しましょう。ちなみに納期も未設定にして失敗しても全然構いませんからね。」
俺がそう言うと急遽鍛冶ギルド&彫金ギルドの合同契約が交わされる事となる。
「ではこれがとりあえず依頼金です。」
俺が実際にその依頼金を渡そうとすると、三人は非常に驚いた顔をしていた。
「うん?足りませんか?」
「いやいやいや!!!」
「逆だ!お前、以前ここにいた時は一日暮らすのもやっとみたいな生活してたくせにそんなに稼いでるのか!?」
「ああ、まあ・・・。これを見てもらえば分かると思うんですが・・・。」
俺はそう言い両方『金級』となった商人証と冒険者証を見せる。
それ見た三人は喉を鳴らす。
「う、噂はほんとうだったのか。」
きっとろくでもない噂なので聞かないでおこう。
「僕は忙しいのでこれで問題なければ行きますからね。」
「え、ええ。確かに承りました。」
俺はガルドンとジーニスと握手をし、正式にオリハルコン装備の作成を依頼した。
さてはて、どんな装備ができることやら。
というかこういう場合、完成する装備品は『エーテルブレイド』の様な貧弱装備になるのかなあ?
まあ完成してからのお楽しみということで。




