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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
32.2人の迷将

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その4

「うん、そうなんだよな……」

 エリオは言い訳する訳でもなく、ライヒ子爵の意見にあっさりと賛同した。


 ……。


 あまりにも素直に賛同したので、他の者は固まるしかなかった。


「いえ、殿下の艦隊もお預かりしている身としましては、訓練には抜かりがないと申し上げておきます」

 ライヒ子爵は、得意になっていた所から急に風向きが怪しくなってきたと感じた。


 総旗艦艦隊に加えられた10隻はマライカンに駐留していた。


 それを預かる形で、訓練を施しているのは、中央艦隊であった。


 この所、エリオが忙しかった(?)ので、自身で訓練が出来ないでいた。


 エリオに対して、サボって何もしていないという認識が行き届いている。


 だが、仕事は多いという共通認識も行き届いていた。


 そうなると、ライヒ子爵がちゃんと訓練させているのかという問題になる。


 なので、ライヒ子爵の自爆だとエリオ以外は感じていた。


 だが、当のエリオはそう言った事は性格なのか、全く気にしていなかった。


 なので、練度が上がっていないぞという嫌味ではなかったのだった。


「いや、そう言う事ではないのですよ」

 このエリオの言葉は、別にライヒ子爵の心情に注意を払った訳ではなかった。


 うん、いつもながらずれている!


「???」

 ライヒ子爵の方は思わぬ事を言われたので、余計に焦っていた。


 全く焦る必要はないのだが、エリオがずれているせいでこうなった。


「先程、人材の指摘をしたのは正にこの点です」

 エリオは、場の空気が微妙になっているのを気にせずに、話をし始めた。


(やれやれ……)

 マイルスターは、そう思いながら話し始めたエリオを見て、安心していた。


 シャルスは場が正常になってきたのを見越して、仕事を再開していた。


 エリオの取り巻きは、エリオ並みに、変であるのは言うまでもない。


「訓練をすれば、練度は上がるとは思います。

 だが、もっと効率的な方法はないものかという事です」

 エリオは、続きを話した。


「具体的にはどういった事でしょうか?」

 ライヒ子爵は、訳分からないという顔でエリオに尋ねた。


 まあ、エリオの思考が分かる人はそうそういないだろう。


 エリオ自身も分かっているかどうか、怪しいし……。


「去年、シーサク艦隊と交戦しましたよね」

 エリオは、いきなり話を飛ばした。


「はい……」

 ライヒ子爵は、いきなり、ふっ飛ばされた話に頷く他なかった。


 その事実自体は、確かであるからだ。


 なので、それ以上、突っ込みようがない。


 まあ、話の意図が分からないと言えば良かったのだろう。


 とは言え、それはいつもの事で、いつもその後話が続くので、この反応が一番正しいのかも知れない。


「その後、シーサク艦隊の事が気になり、改めて調べてみたのです」

 エリオは、更に続けた。


 わざと遠回りして話をしているように感じられたのは、ライヒ子爵だけではなかっただろう。


 でも、取り巻き2人は思い当たる節があったので、それを思い出していた。


 資料を最終的に用意したのは、この2人だったからだ。


 と同時に、何が言いたいかは想像が出来るような気がしてきた。


「交戦中に、停戦となったのですが、その手際があまりにも見事だったので……」

 エリオの話は、更に続きそうだった。


「???」

 ライヒ子爵達は、戸惑いの表情を浮かべていたのは言うまでもなかった。


「殿下、要点をお願いします」

 マイルスターは、流石に同情したのか、助け船を出した。


 話をスムーズに進める義務がマイルスターにはあったからだ。


「その動きの秘密というか、要因というか、それは、シーサク王国の兵学校になるのではないかと思いました」

 エリオは嫌な顔をマイルスターにしたが、話を続けた。


 言われるまでもなく、結論を言おうとしていたのに、と言いたげだった。


「兵学校ですか……?」

 ライヒ子爵は、エリオの言葉を繰り返すしか出来なかった。


 唐突に言われて、反応できる人間は少ないだろう。


 なので、ライヒ子爵が無能という訳ではないのは明らかだ。


 それより、エリオに結構付いていけてる所から言うと、かなり、有能な人材である。


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