その3
「人材が足りない……」
エリオは説明なしで、いきなり結論を口にした。
うっ……。
いつもの事だが、誰もが絶句していた。
……。
そして、結論を言ったきり、エリオは何も言わなかったので、沈黙が訪れた。
都合が悪くなるとこうなるのはいつもの事だった。
総旗艦艦隊14、ライヒ子爵のマライカン駐留の中央艦隊は23、東方第1艦隊21,東方第2艦隊21,北方艦隊27,そして、西方艦隊32。
総数138隻。
大陸最大の海軍力を有しており、小型の支援艦艇など全てを含めるとその数は約3倍に達する。
些か肥大化しすぎたか?
ともあれ、各艦隊には、クライセン一族の爵位を有している優秀と言える提督達がいる。
それに対して、些か失礼すぎないかとも思われる。
ただ、この点に関しては、各提督達も分かっており、エリオと共通の認識を有していた。
1人でも欠けると、ヤバくなると……。
とは言え、そういった有為の人材をたくさん保有できる程の余裕もない。
そして、予備という立場に甘んじられるのはエリオみたいな人物ぐらいだろう……。
なので、追々やっていくしかないと言うのが、現状認識だった。
それを繰り返し、エリオは口にしていた。
なので、周りはまたかという感じにはなっていたが、危機感が薄れた訳ではなかった。
まあ、それは分かってますけど、どうしようもないですよねといった感じか?
マイルスターは、シャルスを横目で見た。
エリオは、将来的にシャルスを提督にする気でいると思っていたからだった。
「閣下、人材不足は承知していますが、今、人材を見出しても、率いる艦隊がありません。
新たな艦隊でも編制するおつもりですか?」
マイルスターは始めた手前、そう尋ねるのであった。
「いや、そんな事をしたら、クライセン家は破産する」
エリオは、やれやれと言った感じでそう答えた。
マイルスターは、溜息を吐きたいのを我慢した。
予想通りの答えが返ってきたと共に、いつも聞かされている事だったからだ。
つまり、堂々巡りが始まったと感じたのだった。
(サボらせないようにしないと!)
マイルスターは、そう決意をした。
だが、予想に反して、先に口を開いたのは、エリオだった。
「艦隊全体の練度が芳しくないと思う」
エリオは、ポツリとそう言った。
!!!
いつもとは違う展開に、事務処理を再開しようとしていた手がパタリと止まった。
「指揮官の育成も大事なのだが、水兵達の練度も重要だ」
エリオは、腕組みをしながらそう言った。
総数はかなりの数になったのは、ホルディム家の艦隊を吸収した事と新造艦による数の増加だった。
必然的に、練度の平均レベルが下がるのは自明の事だった。
「それは訓練を重ねる他ないと思われますが……」
マイルスターは、エリオが今すぐにレベルを上げるという事ではない事は承知していた。
だが、直ぐにはレベルが上がらない事も承知していた。
なので、必然的にこのような結論に至る。
「お言葉ながら、殿下。
各艦隊の練度から考えますと、総旗艦艦隊の練度が一番怪しいと思いますが……」
ライヒ子爵は、エリオの痛い所を突いた。
エリオの総旗艦艦隊は4から14に増えた。
元々、総旗艦艦隊なのに数が少なすぎる問題が存在したので、各方面から増やすように圧力が掛かった。
そして、新造艦ばかり10隻が加わったのである。
当初は、各艦隊から選りすぐりの艦を集める意見があった。
だが、それだと統一した艦隊にはなりにくいものである。
しがらみというか、長年染みついたやり方が少なからず各艦隊には存在する。
それを整合させるのは、エリオは面倒だと感じたのだろう。
結局は、そのしがらみがない新造艦を選択した。
とは言え、乗組員は新兵ばかりという訳ではなく、経験者も多くはいた。




