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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
32.2人の迷将

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その2

 年が明けた太陽暦537年1月である。


 エリオは、王都カイエスの自分の執務室にいた。


 前節で、勇ましい事を書いていたが、艦隊戦の話ではない。


 無念である。


 と言うか、いくらエリオでも四六時中艦隊戦をしている訳ではない。


 と言うか、艦隊戦をしていない方が圧倒的に時間的にも長い。


 そう、戦国大名だからと言って、毎日戦をしている訳ではないのと同じなのだ。


 言い訳めいてしまったが、それはそれとして、話を進めよう。


「……」

 エリオは手を止めて、机の上の紙を眺めていた。


 ともすれば、居眠りしているように見えた。


 誰しもが、エリオがまたサボりだしたと感じていた。


 誰しもが、と言うのは、エリオの執務室に集まって書類整理を行っている面々であった。


 いつものメンバーで、エリオ、マイルスター、シャルス、ライヒ子爵、アセット、ジールの6人である。


 この5人で、書類を分別、修正、作成を行っていた。


 あと1人は、今の用のサボっているだけだった訳ではなかった。


 カキカキ……。


 沈黙の中、筆記する音が響いていた。


 そんな中、長い時間、エリオはジッとしていた。


(やれやれ……)

 マイルスターは、上官によって、いつもこのように思わされていた。


 一度、エリオを見たが、いつもの事だと思い、気にするのを止めた。


 カキカキ……。


 5人は、必死に書類に取り掛かり続けていた。


 手を抜くと、こう言ったものは、直ぐに増えるのである。


 大分時間が経ったようだが、エリオはジッとしていた。


(寝ているんじゃないだろうか?)

 マイルスターは、そういった疑念を持ち始めていた。


 とは言え、他の4人は、意外にも気にも留めない様子だった。


 慣れているせいだろう。


 と言うか、立場上、注意するのはマイルスターだという事を確信しているのだろう。


 何せ、エリオを注意するという事は、とても面倒臭いのである。


(でも、まあ、このまま放置していく訳にはいかないな……)

 マイルスターは、やれやれ感満載の感情で、そう結論を出した。


「閣下、如何なされましたか?」

 マイルスターは、和やかにそう尋ねた。


 つまり、サボってないで、とっとと仕事をしろと言う事である。


「うん……」

 エリオは、いつものように生返事を返してきた。


(サボっていた訳ではなさそうだ……)

 普通はこう言う考えにはならないが、慣れている分、マイルスターはそう思ったのだった。


 こう言った時のエリオは、碌でもない事を考えているのは明らかだったからである。


 面倒臭いと思いながら、総参謀長としては、聞かない訳にはいかなかった。


「閣下、何かご懸念がお有りですか?」

 マイルスターは、そう言いながら立ち上がった。


 そして、エリオの元に近付いた。


 察しのいいマイルスターは、エリオが眺めている紙に原因があると察したからだった。


 エリオが見ているのは地図だった。


 何か書いていたようだが、既に判別できないくらいに所々真っ黒になっていた。


 怠惰を好む癖に、やり出すと、細部まで拘りが出てくる。


 厄介極まりがない。


(これは……)

 マイルスターは、地図を観察すると、気が付いた点があった。


 黒くなっているのは、各艦隊の母港であった。


「艦隊の再編に、何か、ご懸念でも?」

 マイルスターのこの一言が、この場にいる全員の手を止めた。


 そして、一斉にエリオに視線が集まった。


 と同時に、サボっていた訳ではないのか!という声にならない声がこだましていたのだった。


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