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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
32.2人の迷将

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その1

 エリオとサラサは、迷将である。


 別に、字を間違っている訳ではない。


 えっ、あっ、そんなの知っているというツッコミが……。


 それはそれとして、エリオは、『漆黒の闇』と言う2つ名を持っている。


 まあ、本人は与り知らぬ所なのだが……。


 サラサは、『銀の魔女』と言う2つ名を持っている。


 本人は、それを嫌っているが……。


 と、まあ、2つ名を持っている2人である。


 敵からも味方からも、まともな(?)人間だとは想われていないのは確かである。


 当代一の名将と称されるオーマの言である。


 エリオの才能は異常で、サラサは才の豊かな人間である。


 一見、違った言い方をしているようだが、そうだろうか?


 エリオは敵であり、サラサは自分の娘である。


 それを割り引くと、どちらも同じような評価になる。


 勿論、2人の才能には違いがある。


 とは言え、2人とも、オーマ以上の才能を持っているのは、オーマ自身が認めている所である。


 エリオは、その才能を自覚しているかどうか怪しい。


 だが、その才能は戦略面・戦術面の両方で遺憾なく発揮されている。


 彼は、常にオーソドックスに数的有利の状況を作り出そうとする。


 言いたくはないが、これは戦略面ので、優れた指揮官であると言える。


 その一方で、数的不利だろうが、お構いなしな所がある。


 ただ、その時も局面で数的に上回れば、戦いになる事を十分に分かっている。


 そして、それが長く続かない事もよく知っている。


 これは、戦術面ので、また言いたくはないが、優れた指揮官であると言える。


 はっきり言うと、この才能は異常である。


 そして、この才能は味方には頼もしく思えるかも知れないが、どう見ても周りは一歩引いてしまっている。


 どうして、そんなに簡単に敵を嵌める事が出来るのかという事である。


 それに、前線で戦っている最中に、戦局全体を俯瞰している所も味方にとっても厄介極まる所である。


 それは、まるで自分の行動の一挙手一投足を監視されている気分にもなる。


 一歩引いている割には、エリオに頼り切ってしまっている面がある。


 そこが、クライセン艦隊の大きな弱点となるやも知れない。


 サラサの方は、戦術的に優れているのは幼少の頃から知られていた。


 それは、オーマが評価するべき点として大いに評価していたが、同時に心配する面でもあった。


 局面局面での勝利が、戦略的目標の達成に繋がらない事が多々あるからである。


 こればかりは、机上でいくら学んでも実際に体験しないと中々身に付かないものである。


 こちらの世界でも、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という格言はあるが、実際の経験がないと、中々学べないものである。


 と言うか、歴史に学べる人というか、歴史を活かせる人は極々少数かも知れない。


 歴史で学んだが、では実際それを活かせるかというと、現在進行形の事象が歴史のどの部分に当て嵌まるかを正確に理解できる人はそう多くはない。


 正確に理解できていないので、当然、歴史に基づいた判断が出来ない。


 更に、厄介な事にその歴史を参考にして、正しい結果が得られるとも限らない。


 傍から見ていて、権限がない人間が簡単に言う程、事態は単純ではない事も要因として挙げられる。


 いざ、責任者としてその渦中に放り込まれた場合、色々な人の思惑もあるので、単純には行かない。


 そう言うことを学びながら、サラサは戦場で勝てば良しという考えから、戦い後の影響を考えるようになった。


 それは、明らかにエリオの影響ではあるが、本人は絶対に認めないだろう。


 とは言え、これにより、勝つだけを目的にした戦闘ではなく、戦い後の影響を考えた戦い方にシフトしたのは間違いがない。


 そして、それは、サラサの才能を伸ばすと共に、より安定した指揮に繋がっている。


 そんなサラサの成長を、オーマは親バカながら誇らしく頼もしく思えるのだった。


 と、まあ、エリオとサラサの戦い振りを書いてきた。


 これは、この物語が、ラブコメやギャグだけではなく、と言うか、艦隊を有する一族同士、国同士の戦いの物語だという事を忘れないようにする為であった。


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