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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
31.2つの終わりと2つの始まり

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その23

 こちらの組みは、万事上手く行ったようだった。


 そして、宴である。


 サラサとバンデリックも例外なく、式後の挨拶攻撃に遭っていた。


 とは言え、2人の式は国家的行事ではなかったので、かなりお気楽なものであった。


 ルディラン家に内紛がなかったのもその要因として挙げられるだろう。


 参加者は、誰もが2人の門出を祝福していた。


 その意味では、2人はかなり幸せだろう。


「バンデリック、頼んだぞ」

 オーマは、そう言いながらバンデリックの右肩をバシバシ叩いていた。


 オーマは久しぶりに本拠地に戻っていた。


 そして、自分の娘の晴れ姿にご機嫌だった。


 更に、些か酔っ払ってしまっていた。


 かなり珍しい事であるが、こんな事は一生に何度もない事なので、周りは生暖かく見守るのだった。


「そうだぞ、バンデリック」

 ヤーデンは、そう言いながらバンデリックの左肩をバシバシ叩いていた。


 ヤーデンは酒に強い事が知られていたが、こちらも大分酔っているようだった。


 歳のせいもあるのだろう。


 まあ、それより、孫のように思っていたサラサの結婚が余程嬉しいのだろう。


「……」

 バンデリックの方は、当然ながら戸惑っていた。


 キャラ的には、こうなるのは目に見えていたので、驚くには値しない。


 ただ、離れて見ると、何とも言えない絵面になっていた。


 その位置で見ていたのは、バンデリックの2人の兄、ヘンデリックとリンデリックだった。


「……」

「……」

 2人の兄も、バンデリック同様に、何も言わないでいた。


 何か言うと、弟の名誉を傷付けてしまう気になっていたからだ。


 弟は、必死に耐えている。


 少なくとも、2人の兄はそう思っていた。


 なので、2人の兄は、微妙な笑顔で不憫な弟を見守るしか出来なかった。


 一方で、サラサの方は、人集りが出来ていた。


 アイドルなので致し方がないのだが、いつもとは違う格好に色めきだっていた。


「お綺麗ですね!」

「見とれてしまいました!」

「もっと、ドレス姿を見せてくださいませ」

「いえいえ、軍服もお似合いですよ」


 普段話をしない話題を振られて、サラサはタジタジになっていた。


 こう言ったサラサも珍しい。


 人が殺到しているのは、軍務で忙しいサラサと話す機会があまりな事も影響しているのだろう。


 特に、女性達がサラサのウェディングドレスに興奮しすぎていた。


 まあ、今は式のドレスとは違う純白のドレスなのだが……。


 とは言え、その熱気は、近付きたい男性陣を完全に駆逐していた。


 男性陣は、お祝いの言葉を言いたいなのに……。


 ぱんぱん!


 熱気が留まる事を知らないと言った所で、会場中に響き渡るように、音が鳴った。


 すると、会場の喧噪が一気に止んだ。


 両手で音を鳴らした主は、ヤーデン夫人だった。


「はいはい、皆様、興奮するのは分かりますが、今日は2人にとって、大事な日です。

 それくらいにしては如何ですか?」

 夫人は落ち付いた口調で、分断されてしまったサラサとバンデリックを戻そうとした。


 会場の皆は、あっという顔になり、サラサとバンデリックに通じる道を空けた。


 ……。


 当然、会場には沈黙が訪れた。


(えっ?あっ?)

 突然の沈黙にバンデリックが、狼狽えていた。


 それだけではなく、会場の視線は自分に集まっていた。


 それには、サラサの視線も含まれていた。


 バンデリックは、状況を理解した。


 鈍いながらも、ゆっくりと、杖をついてサラサの方へ歩み寄った。


 それに伴い、サラサの周りの人垣がどんどんなくなっていった。


「閣下、行きましょうか」

 バンデリックは、優しく微笑みながら、サラサに手を差し伸べた。


 周りの空気が一転し、うっとりするような空間になった。


 バシッ!!


 サラサは、バンデリックの手を取らずに、頭を叩いた。


「???」

 バンデリックは、いつもの感覚を取り戻してはいたが、何故という顔になった。


 と同時に、ボディーブローじゃなくて良かったとも感じた。


 バンデリックの呆けている顔を見て、サラサは呆れた。


「何でって顔はないでしょう!

 呼び方が違うでしょう!」

 サラサはそう言うと、プイと横を向いた。


 折角の機会を台無しにされて、拗ねてしまったようだ。


 とは言え、バンデリックを始め、会場の皆々も何故と呆けていた。


 ……。


 しばらく、間の抜けた沈黙が訪れてしまった。


(あっ、ああ!)

 バンデリックは、心の中で拳で掌を打った。


 ようやく気が付いたのである。


 本当に、サラサは呼び方を気にする。


「サラサ、行こうか!」

 バンデリックは今度はそう言って、改めてサラサに手を差し伸べた。


「はい、旦那様」

 サラサは飛びっきりの笑顔でそう言うと、バンデリックの手を取った。


 それは、最初の夫婦げんかであった。


 これも、一つの終わりと一つの始まりを示すものでもあった。


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