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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
31.2つの終わりと2つの始まり

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その22

 サラサとバンデリックは、会場に通じる左右の扉に分かれて、始まるのを待っていた。


 と言っても、そんなに長い間ではなかった。


 直ぐに扉が開け放たれたのだった。


 そして、左からサラサが、右からバンデリックが会場へと入った。


 すると、その途端、、会場で待機していた招待客がざっと一斉に立ち上がった。


 そして、会場中に鳴り響く拍手で、2人を迎えた。


 サラサは慣れないドレスで難儀しながら、そして、介添人の助けを借りながら中央へと進んでいた。


 バンデリックは、特に障害がないが、拍手に圧倒されながら、中央へと進んでいった。


 バンデリックとっては、初めての経験であった。


 あ、まあ、結婚式を何度もやる人はいるので、初めてではない人もいるだろう。


 いや、いや、そう言う事ではなくて、熱狂的に迎えられる事が初めてだった。


 これまで、何度かサラサの後ろでは見ていたが、それが自分に向けられる事はなかった。


(こんなに凄いものなのだな……)

 バンデリックは、サラサの凄さを改めて感じるのだった。


 そんな呑気に考えているバンデリックは、きちんと正面を見ないと、上手く歩けないと感じた。


 杖をついて歩く事に慣れてきていたが、熱狂の渦の中、歩くのはちょっと大変だと感じたのだった。


 そして、正面をジッと見ると、いつもとは違うサラサが目に入った。


 サラサは何を着ても似合うのは知っていた。


 軍服でも、礼服でも、ドレスでもである。


 だが、今回は違っていた。


 完全に目を奪われていた。


 サラサは美少女に分類されるのは、間違いがないだろう。


 マニアの方に分類されるとは言え、美少女には変わりがなかった。


 そして、今回は、綺麗な花嫁としてそこにいた。


 何か、書き方が大変失礼になりました。


 まあ、それはそれとして、いつも傍にいるバンデリックでさえ、見違えたと思う程である。


 そんな2人が、ふと、お互い目が合った時。


 そして、途端に、2人共急に気恥ずかしくなった。


「おめでとうございます」

「おめでとうございます」

 会場から、鳴り止まない拍手の中、2人を祝福する声がたくさん聞こえてきた。


 2人はその声が耳に入ると、これは祝福されるべき儀式であると思い直した。


 要するに、照れはあるが、嬉しさの方が勝ったと言う事でる。


 そう思う事で、2人は再び正面をきちんと向き、中央へ向かって歩き続けた。


 そうしているうちに、徐々に、照れから幸せと思う方が上回ってきた。


 そして、互いに笑顔で中央に辿り着いた。


 2人は、中央に辿り着くと、ゆっくりと正面の立ち会いに向き直った。


 立会人は、ヤーデンである。


 サラサの直接の上司はオーマであるが、父親なので、ヤーデンとなったのだった。


 この婚儀も宗教儀式ではなく、一族に宣言するものであった。


「お二人の門出に立ち会える事に感謝致します」

 ヤーデンは、そう言うと2人に頭を下げた。


(立場が……)

(逆じゃない?)

 バンデリックとサラサは、戸惑いながらも返礼の為、一礼した。


 台本とは違う動きだった。


「本日、サラサ様とバンデリックの婚姻の儀、不肖、参謀総長のヤーデンが務めさせて頂きます」

 ヤーデンは、何時にない格式張った口調で、そう宣言した。


 すると、会場から鳴り止まなかった拍手が一斉に止み、静まり返った。


 だが、熱気は一層帯びた感じがしていた。


「ワタトラ伯サラサ閣下に伺います」

 ヤーデンは、儀式を始めた。


 この辺は、リ・リラとエリオの時と似たようなものである。


「はい、何なりと」

 サラサは、身を引き締めるようにそう答えた。


「本日は、海軍准将バンデリック閣下とのご婚儀で相違ございませんか?」

 ヤーデンは、続けてそう尋ねた。


「はい、相違ございません」

 サラサは、笑顔でそう答えた。


 ヤーデンも笑顔で、うんうんと頷いた。


 そして、バンデリックの方に向き直った。


「海軍准将バンデリック閣下に尋ねます」

 ヤーデンは、今度はバンデリックに尋ねた。


「はい、何なりと」

 バンデリックは、自分の番が来たと緊張していた。


「本日は、ワタトラ伯サラサ閣下とのご婚儀で相違ございませんか?」

 ヤーデンは、続けてそう尋ねた。


「はい、相違ございません」

 バンデリックは緊張の極致に達していたが、背筋を伸ばしてはっきりと言う事が出来た。


 これに対しても、ヤーデンは笑顔で、うんうんと頷いた。


 ……。


 ヤーデンの方は、しみじみしてしまった為、沈黙が訪れてしまった。


 歳のせいだろう……。


(……)

(……)

 サラサもバンデリックも、何かする訳にはいかずに、黙って待つ他なかった。


 ヤーデンは、2人の所在なさげな表情を見ると、我に返った。


「では、結い紐の儀を」

 ヤーデンはちょっと焦っていたが、まあ、愛嬌という事で、笑顔でそう言った。


 サラサとバンデリックは、持ってきたバルディオンオレンジの紐を手にした。


 先ずは、サラサが左手を差し出した。


 そして、バンデリックが、サラサの左手首に紐を結びつけた。


 それが終わると、バンデリックが左手を差し出した。


 すると、同じように、サラサが、バンデリックの左手首に紐を結びつけた。


 リーランとは儀式が違っていた。


 儀式は、国や地域毎に微妙に違ってくる。


 リーランの場合は、初夜で外して、紐を燃やして先祖に報告する。


 バルディオンの場合は、3日したままで、4日目の朝に外して、紐を燃やして、同じく先祖に報告する。


 と言った感じである。


 それはともかくとして、これにて結い紐の儀は終了である。


 それを見届けたヤーデンは、再びしみじみとするのであった。


「本日、ワタトラ伯サラサ閣下と海軍准将バンデリック閣下は、互いの同意により、結婚した事をここに宣言いたします。

 おめでとうございます」

 ヤーデンは、今度は間を置かずに、流れるようにそう言った。


 わぁぁぁっ!!


 ヤーデンの宣言が終わると、会場から歓声が上がり、再び大きな拍手が鳴り響いた。


 サラサとバンデリックは、会場の方に向き直った。


 すると、ピタッと拍手と歓声が止んだ。


「本日は、皆様、参列していただきありがとうございました。

 これからは、夫婦として、一層ワタトラを始め、王国に貢献していきたいと思います」

 サラサは、高らかにそう抱負を述べた。


「おめでとうございます」

「おめでとうございます」

 会場からあちらこちらからお祝いの言葉が響いてきていた。


 2人はそんな会場を見ながら、幸せを噛み締めるのであった。


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