その21
さて、別の控え室である。
勿論、バンデリックの話である。
バンデリックの方は、特に変わった感じはなかった。
服装は、礼服である。
この礼服は軍服であり、授与式の席でも着たものである。
飾りが少々増えてはいるが、着てから増やしたので、特に問題はなく、着れていた。
着れていたというと、幼い子供に対しての言い方ではある。
バンデリックは鈍く間抜けてはいるが、日常生活はきちんとこなせる能力はある。
と言うか、その辺は、能力が高いと思う。
そうでないと、サラサの副官は務まらない。
あ、でも、誤解のないように言っておくと、サラサもきちんと日常生活を遅れる能力はある。
ただ、戦闘時などで、突拍子もない行動・発言がない事もないかも知れない。
その時、バランスを取る為に、きちんとしているが、間抜けている人間が必要なのである。
何か、言い訳めいてみてきたが、それはそれとしておく。
バンデリックは、控え室で、意外と暇をもてあましていたのは言うまでもない。
式に対する緊張は、もの凄いある。
だが、それ以上に、やはり、いつもの癖みたいなのが出てくるのであった。
(お嬢様……、大丈夫かな?)
バンデリックは、いつもの心配をしていた。
サラサが、公式行事でやらかしたと言う事は過去一度もない。
これは、サラサの名誉の為に明言しておく。
だが、バンデリックにとっては、やらかす事を想像してしまう。
職業病だろうか?
いや、まあ、違うだろうな……。
バンデリック自身は、全く気が付いていないだろうが、それは最大のノロケである。
筆者はそう強く断言するのであった。
とは言え、控え室にバンデリックが1人。
そうなると、やはり、そうなるのであった。
お気づきかと思うが、バルディオン王国では結婚式の介添人は、ただ傍にいて手伝うだけの役割である。
バンデリックには、介添人が必要な衣装ではないので、呼ばれるまでは1人であった。
ついでに言えば、バルディオン王国貴族では、乳母という制度はほとんど取られていなかった。
貴族と言っても、例外なく、元は商人達である。
それもやり手の商人達である。
無駄な経費を掛けないと言う事なのだろう。
まあ、そんな事は今はどうでもいいか……。
そんなこんなで、筆者も余計な事を書くぐらい、バンデリックは意外にも暇をもてあましていた。
(お嬢様……、大丈夫かな?)
そして、無駄な無限ループに陥るのだった。
コンコン!
「あっ、はい、どうぞ」
バンデリックは、ノックの音にびっくりしながらも反応した。
ガチャ……。
扉がゆっくりと開かれた。
「准将閣下、間もなく式が始まります。
お支度は如何でしょうか?」
1人の男が、扉の傍で敬礼した後に、そう尋ねてきた。
「はい、問題ないです」
バンデリックは立ち上がりながら、ちょっと上擦った声でそう答えた。
「了解いたしました。
では、こちらに」
その男は、バンデリックを案内するように畏まって、右手を前に出してから横に動かした。
「分かりました」
バンデリックは、そう言うと会場に向かって歩き出した。
(緊張するな……)
バンデリックは、今更ながら自分がこれから何をやるかを思い出したようだった。




