その19
やっと片付いた後の、もう一組である。
やれやれである。
とは言え、こちらの方は、筆者が安心出来るぐらいに案外スムーズに事が進んでいた。
婚約発表は、フライング気味で国王から発せられた。
まあ、とんだハプニングである。
だが、バンデリックの昇進に対しての公式な説明が必要でもあった点も考慮すると、まあ、こうなるだろうという事である。
サラサとバンデリックの婚儀は、国王公認になったからには、式までの期間は短く、効率的に準備が行われた。
2人はライバル関係という事もなく、素直に互いの気持ちを受け入れられた事もそのスムーズさに拍車を掛けた事は言うまでもない。
そう言う事なので、ポンコツ組の式に対して、ちょっと時が過ぎた程度で式を挙げる事になった。
それは、太陽暦536年12月の事だった。
バルディオン王国でも、リーラン王国と同じく、結婚式は一族に宣言するものであり、宗教儀式ではない。
また、一族でない者を呼ばないので、国王も他の侯爵家からの出席者もいない。
これに関しては、国王が少々残念がっていたが、他でも呼ばれた事がないので、諦めたという経緯がある。
まあ、これは、ルディラン家だけではなく、他家の結婚式に対しても同じ行動をしていた事は一応触れておこう。
そして、バルディオン王国の国王はこういう人だという事である。
まあ、それはさておき、結婚式の話である。
控え室で、サラサはされるがままにドレッサーの前にいた。
普段は軍服が主体であり、ドレスは滅多に着た事がなかった。
着たら着たで、映えると言われてはいたが、特に着たいという訳ではなかった。
何分、面倒だからだ。
それに動きにくい。
これで、戦闘になったら忽ち討ち取られる自信はあった。
そんなイメージだから、サラサは自らドレスを着用しようという気には全くならなかった。
とは言え、女性としての晴れの舞台である。
おめかししない訳にはいかなかった。
自分だけなら兎も角、バンデリックに恥を掻かせる訳には行かない。
そして、出来れば、違った側面も見てほしいという欲求もあった。
やはり、その辺は、女子である。
良かった、良かった!
こんな気持ちを持った自分に対して、サラサはかなり照れていた。
と同時に、頑張ろうと思った。
だが、その頑張ろうと思った気持ちは直ぐに萎えてしまった。
ウェディングドレスとは、普段のドレスとはかなり違っていた。
もう下着から違うのであった。
こんなの付けるの?と思いながら、初っ端で頭を抱える事となった。
「あのぉ、伯爵閣下……」
着付けを手伝ってくれる中年の女性が、ドレッサーの前で頭を抱えているサラサに遠慮勝ちに声を掛けた。
「!!!」
サラサは声を掛けられてハッとして、その女性を見た。
そして、今日、着付けられる下着からドレスまで着る順番で整然と並んでいるのを目にした。
その横に、更に2人の中年女性がいたのも目に入った。
明らかに、大変そうだった。
(ダメだ!とても、ダメだ……)
サラサは、何故か絶望してしまった。
戦場では決して、絶望した事はないサラサである。
サキュス沖海戦での劣勢下でも、嬉々としていたサラサがである。
「閣下、私共がお手伝いしますので……」
中年女性は、サラサがドレスを着慣れていない事を察しているようだった。
というか、彼女はワタトラの住民なので、よく知っているのである。
ただ、見透かされると、サラサの性格からすると、ある意味悔しい。
だが、圧倒的な物量の前には降参するしかないと考えた。
「お願いします……」
サラサは完全に諦めた顔で、うな垂れる他なかった。
レアな光景であったのであった。




