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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
31.2つの終わりと2つの始まり

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その18

 短かったが、濃密な儀式の後は、宴会である。


 リ・リラとエリオは、怒濤の挨拶攻撃を受けたのは言うまでもなかった。


 その攻撃が止んだ時、エリオは漸く主催席から離れられた。


 ヘトヘトになったエリオは、ちょっと離れた所で、さっきまでいた自分の席を見ていた。


 隣には勿論、リ・リラがいた。


 そして、そのリ・リラはまだそこにいた。


 エリオが離れようとも、一通りの挨拶が済んでも、尚、人集りが途絶える事はなかった。


 エリオとリ・リラの人気の差が顕著に表れた結果であった。


 エリオはそれに対して、安心感(?)しか持たなかったのは言うまでもなかった。


 と同時に、疲れ知らずのリ・リラを改めて凄いと思っていた。


 流石に、女王様である。


「殿下、主役がこんな所で何黄昏れ……てはいないですね、いつも通りか……」

 今回の首謀者であるクルスがエリオに近付いてそう言った。


 呆れていたが、まあ、いつも通りのエリオを安心したのか、笑顔だった。


 エリオを殿下と呼んだのは言うまでもない。


 そういう立場になったからだ。


 肩書きとしてはこうである。


 王配クライセン公エリオ。


 つまり、正式に王族となったからだ。


 これまでも王位継承権を有していたので一応王族の扱いではあったが、婚儀により真の王族になっていた。


 だが、王配になった事で緊急事態以外は王位を継承する事はなくなった。


 まあ、尤も末席だったので、その件に関しては、本当の緊急事態以外は影響はない。


「この度は、大変お世話になりました」

 エリオは、クルスに改めてお礼を言った。


 とは言え、些か不機嫌そうだった。


「もう、それはいいですよ。

 先程もお礼をして頂きましたし」

とクルスは、笑顔でそう言った。そして、

「でも、敬称には慣れないといけないと思いますよ」

とエリオに近付いて、小声で言った。


 目敏く、と言うか、偉くなる事が嫌いなエリオの性格をよく知っているのだろう。


 エリオの不機嫌そうな感じを見逃さなかった。


「分かっていますよ」

 エリオは、そう言った。


 王配になった場合、クライセン家を離れるという慣例もあった。


 実際、3公爵家では、そういった事例も少なくはない。


 ただ、そこは『漆黒の闇』である。


 海軍だけではなく、陸軍までにその影響が及ぶ。


 その事をエリオがどれだけ理解しているかどうか分からないが、そう言う事で、こういう肩書きになっていた。


 そして、リーラン王国に於いては、肩書き通りの仕事はきちんとしなくてはならない。


 つまり、リ・リラは、これまで以上にエリオをこき使う気満々である。


「まあ、これからが大変である事は、私としても分かっているつもりですが……」

 クルスは、しみじみとそう言った。


「……」

 それを見て、エリオは似つかわしくないと感じた。


 だが、それは一つの終わりと一つの始まりを意味している事も自覚せざるを得なかった。


「大丈夫ですか?お分かりになっていますか?」

 クルスは、エリオが何も答えなかったので、不安そうに聞いてきた。


「へぇ?」

 エリオは、いつもの間抜けた声を上げていた。


「あ、これは完全に分かっていませんね」

 クルスは、呆れたように言いながら、何故か勝ち誇っていた。


「どういう事です?」

 エリオは、嫌な予感はしつつ、何を問題にしているのか分からなかったので、素直に聞いてみた。


「王族の嫡子と、クライセン家の嫡子の両方を儲けないという事ですよ」

 クルスは、含み笑いを浮かべながら言った。


 当然、揶揄いが含まれていたのだった。


「!!!」

 エリオは呆れると同時に、何とも言えない恥ずかしさが込み上げてきた。


「流石の、殿下もそれには疎かったようですね」

 クルスは、完全に勝ち誇っていた。


「自分は、既にその役目を果たしたからって、余裕ですね」

 エリオは、反撃を試みた。


「そうですよ」

 クルスは、そう言うと胸を張った。


 クルスには、既に第1子があり、今年3歳を迎えるのだった。


 そして、順番から言うと、ロジオール家が次の王配を出す番である。


 そう考えると、クルスにとっても問題になるのである。


「でも、まあ、男女別にする必要はありますね……」

 エリオは、エリオで変な事を言い出した。


 無論、子孫を残さなくてはならないので、国王の配偶者は異性である必要がある。


「その時は、合わせられるように、何人でもです」

 クルスは、更に胸を張ってそう言った。


「……」

 エリオは、それを見て呆れて言葉が出てこなかった。


 完全に、エリオの負けだった。


「取りあえず、そう言う事ですので、頑張ってください」

 クルスはそう言うと、エリオの方をバシバシ叩いた。


 勝利宣言だった。


「はぁ……」

 エリオは、叩かれながら溜息しか出なかった。


「さて、馬鹿話はこれくらいして、道を切り開くので、付いて来て下さい」

 クルスはそう言うと、エリオを従えて、歩き出した。


 向かって先は、リ・リラの元である。


「皆様、本日はお二人にとって、大事な日です。

 この辺で、二人っきりにして、差し上げましょう」

 クルスは、リ・リラの周りに集まっている人達にそう宣言した。


 すると、今まで賑やかだった声は一気に止んだ。


 そして、気が回らなかったとばかりに、群衆(?)がリ・リラの傍から一歩引いた。


 それを見たクルスも、一歩退いて、エリオの傍らに立ち、行くように促した。


「……」

 あまりにも見事なやり方にエリオはポカーンとしてしまった。


 だが、視線の先のリ・リラを見て、一歩踏み出した。


 リ・リラは、もの凄い恥ずかしそうな表情で、照れていた。


 そこに、昔、自分に付き添っていたリ・リラを見た気がした。


「行こうか、リ・リラ」

 エリオは、そう言うと手を差し伸べた。


「はい」

 リ・リラは、うれし恥ずかしそうにエリオの手を取った。


 こうして、2人は会場を後にするのだった。


 この後、2人は上手く行ったのだろうか?


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