その8
さて、おざなりになっていた別のラブコメの話である。
(やれやれ、我ながらお節介だと思うが、兄貴分として、この国の為にも動くべきだよな)
ミモクラ侯爵クルスは、腕組みをしていた。
彼がいる場所は、自分の執務室。
珍しく1人でジッと座っていた。
ここで、王国最大の懸案事項を解決するべく蠢動?暗躍?活躍するべく活動を開始していた。
有能な軍人であるとは言え、これは国家の大事。
大事すぎる大事。
自分1人では手に負えないと考え、きちんと援軍を呼んでいた。
当然、その相手は朴念仁ではない。
朴念仁は軍事以外に頼りにならないから呼ばない訳ではなかった。
あちら側の人間なので、呼ぶなど論外であった。
今回の大事は、母親である王嗣ラ・ミミから成功させるように厳命が下っていた。
もしこれに失敗したら、ロジオール家は分裂するだろう。
それくらいの覚悟を持って、クルスは臨んでいた。
普段軽口ばかり叩いているクルスだが、人生最大の試練と思い、妙な?微妙な?そこはかとない?緊張感を持っていた。
「ミモクラ侯爵閣下、ヘーネス公爵閣下ならびにローア伯爵閣下がお見えです」
扉の外から副官リミトの声がした。
「お通ししてくれ」
クルスはそう言うと立ち上がった。
「失礼します、ミモクラ侯」
ヘーネス公ヤルスは一礼して、部屋に入ってきた。
「失礼致します、侯爵閣下」
続いて、宮内庁長官のローア伯が入ってきた。
「お二人共、わざわざお越し頂き、ありがとうございます」
クルスは、そう言いながら2人を招き入れ、着席を促した。
そして、ヤルス、クルス、ローア伯の順で席に着いた。
無論、爵位の順番である。
「今回、お越し頂いたのは、言うまでもありません。
例の件です」
クルスは、前置きなしに早速議題を始めた。
それくらい、切羽詰まっての事なのだろう。
とは言え、ここには自分より爵位も地位も上のものがいる。
果たしてどうしたものかと、今更ながら思った。
「いえ、お気になさらず。
王嗣殿下からのご下命です」
ヤルスは、ふと自分の方を見たクルスに対して、何を考えているか直ぐに察したように言った。
一応、従兄弟同士である。
仲がいいとは言い難いが、まあ、悪くないし、幼少の頃からの付き合いだ。
何を考えているかぐらいは大体分かる。
たぶん……。
「はぁ……」
クルスは、出始めは勢いよく言ったが、やっぱり気になるものは気になってしまう。
これでも、貴族である。
「この件に関しましては、侯のグイグイ行く突破力が必要なのです。
この際、貴族の序列など、些細な事です。
王国の未来が掛かっています」
ヤルスは、念押しするようにそう言った。
実際、ヤルスにとっては、クルスは同年代。
何を遠慮する必要があるのかとも思っていた。
「……」
とは言え、クルスは直ぐに続けようとしなかった。
意外に、気が回るのかも知れない。
「首席大臣閣下がこうまで仰っているのです。
ミモクラ侯爵閣下が先頭に立ち、首相閣下がフォローする。
そして、儀式全般の準備は私が執り行うという事で、よろしいのではないのでしょうか?
最適な布陣かと愚考申し上げます」
ローア伯はこの場の年長らしく、やんわりとまとめた。
「了解しました」
とクルスは納得した顔でそう言うと、
「では、早速、議題に入ります」
と真顔に変わった。
あ、もう、いい加減にしろよと言う事だと思いますが、議題は例のあれです。
そう、リ・リラとエリオの結婚式の件です。
普通なら2人が主体的にやるべきなのでしょうが、まあ、女王の結婚ですからね。
そうも行かない事は明白である。
ま、と言うより、放っておくと、いつまでも進まないので、ラ・ミミが強硬手段に出たと言った方が分かりやすかった。
放っておくのも面白いのだが、自分達に害悪が降りかかってくるので、そうも行かないのだった。
要するに、物語の登場人物達からもいい加減にしろという事なのだろう。




