その1
ラ・ライレの崩御から始まった混乱は、収まりが付いたのだろうか?
少なくとも、ここバルディオン王国では、小康状態と言えるべき状態ではある。
太陽暦536年11月現在は、バルディオン王国は何処とも戦闘行為を行っていないからだ。
その合間を縫うように、サラサとバンデリックは、王都に召喚されていた。
トット連盟への派遣任務成功の為、国王に呼ばれていた為だった。
まあ、成功とは言い過ぎではあるが、国王自らそう判断したので、そう言う事になっていた。
同盟こそ締結は出来なかったが、盟主から親書を持ち帰った事もあり、期待以上の成果を上げたという評価なのだろう。
混乱が収まった?
いや、一息吐いた所で、2人を呼んだという事である。
親書には、人的交流の提案があった。
特に、軍事面での人的交流を求めており、これを礎に同盟締結まで持って行けるのではという期待感が持てた。
こういう親書を持ち帰った事で、普段、サラサを下に見たい諸侯もその成果を認めざるを得なかった。
でも、まあ、連盟の思惑はどうなんだろうか?という疑問がない訳ではない。
そして、それはともかくとして、サラサとバンデリックが王都に来たのは、国王自ら恩賞を与えるという事である。
だが、それ以上に、2人には違う目的があった。
それは、オーマの執務室へ寄って、報告をしなくてはならない事があるからだった。
こう書いていると、それぞれが勝手な思惑手動いている事がよく分かる。
サラサとバンデリックが、オーマの執務室に入ると、いつもの面々が出迎えてくれた。
バンデリックは一礼すると、扉の前で立ち止まった。
サラサの方は部屋の中に進み出ていき、自分の席に座っているオーマと、その傍らにいるヤーデンとヘンデリックの方へと向かった。
そして、オーマの執務机の前で立ち止まった。
「よく来たね、サラサ」
オーマは立ち上がりながら、自分の娘の来訪を歓迎した。
「ありがとうございます」
サラサは、ニコリと笑った。
「大分時が過ぎてしまったが、今回の件、よくやってくれた。
父親としても、大変嬉しく思う」
オーマは、珍しく手放しで喜んでいるようだった。
「恐縮です」
サラサは、再びニコリと笑った。
父親の前だと、素直になるのがサラサの特徴である。
(ん?)
バンデリックは微笑ましく見ていたのだが、何か違和感を感じていた。
父娘の会話が何だか微妙に噛み合っていない気がしたからだ。
「今回の件、陛下も大変評価なさっている」
オーマが続けてそう言った。
(あれ?)
サラサの方も、浮かない表情になった。
「そう言う事で、今回、陛下が2人を召喚なさったのだ」
オーマはサラサの反応に気が付かず、更に続けてそう言うと、誇らしげだった。
(えっ、あっ、そっちの事……)
サラサは、面食らってしまった。
あ、この表現は適切ではないかな?
何せ、サラサが自分で勝手にそう思っていただけだったからだ。
「それにしても、2人共、よく無事に戻ってきてくれた」
オーマは、しみじみとそう言った。
その表情は父親の安心しきった顔だった。
隣にいたヤーデンも、しみじみとして頷いていた。
ヘンデリックの方はほっとはしていたが、副官らしく、一歩引いて見ていたので、何やら噛み合っていない事に気が付いていた。
愚弟の様子もちょっと変だったからだ。
「御父様、ご報告する事があります」
サラサは全ての流れを裁ち切るように、はっきりとした口調で言った。
サラサは、自分勝手にまどろっこしさらを感じていたからだった。
今回の戦略目標は、それではない。
戦略という言葉が出てしまうのは、残念極まりないのだが、これはこれでいいと思う。
考え方ではなく、結果が全てだからだ。
「!!!」
思わぬ言葉を言われたオーマは、目を見開いて絶句したのは言うまでもなかった。




