表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
29.第2次スワン島沖海戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/263

その6

 さて、ワルデスク艦隊が何故エリオ艦隊に向けて進路を取ったかである……。


 生意気に見えたからという理由は、まあ、その内の一つである事は言うまでもないだろう。


 幼少の頃からエリオという人物は、なにかと絡まれやすい人物だった。


 絡むとヤバいという噂は広がってはいたが、当の本人を目の前にすると、不思議とその噂の真実性が疑われてしまう。


 そして、ついには、噂は真実ではないと言う事で、行動に出てしまうらしい。


 コイツを倒せば、「ビックになれるぜ」という理由ならば、漢として立派なのだろう。


 いや、そうではないかも……ね……。


 まあ、それはともかくとして、絡む側から見ると、何かかんに障るのだろう。


 ただ、ワルデスク侯も一端の貴族である。


 それも、13貴族という栄誉ある貴族である。


 そんな理由だけでは、エリオには絡まなかった。


 その理由は、アメット海海戦にもある事は明白である。


「父上、このまま済ます訳には行きません!」

 息子のジル・ワルデスク伯は、何度も転ばされた後に、ようやく立ち上がった。


「!!!」

 息子の意見に対して、父親のワルデスク侯は、黙ったままだった。


 年の功と言いたい所だが、歯を食いしばってワナワナと震えているのを見ると、そうでもなかった。


 サラサ艦隊とワルデスク艦隊の戦いは、最初はワルデスク艦隊が押していたが、サラサ艦隊に上手く逃げられた。


 簡単に総括するとこんな感じになるだろう。


 これを受け入れてしまえれば、問題ないのだが、ワルデスク侯の誇りはそれを許さないらしい。


 ラロスゼンロで総指揮を執ったヒンデス侯爵が潔い最期を遂げた事も影響している。


 ちなみ、ヒンデス侯爵も13貴族の一角であり、ワルデスク侯と同格である。


 そう考えると、このままでは自分も同じ運命を辿る事になる。


 なあに、この任務を受けた時からはそういった覚悟がない訳ではなかった。


 好敵手とやり合った結果、そうなったのなら潔くその結果を受け入れただろう。


 だが、今回の海戦はそうではなかった。


 少なくとも、シーサク王国側、特に、ワルデスク家にとっては、正々堂々の戦いとは思えなかった。


 こうなると、正々堂々とは何かという問題になる。


 ワルデスク家にとっては、正面から撃ち合うのがそれであり、戦いはそうあるべきだと考えているようだった。


 だが、サラサはそうは考えていなかった。


 というより、エリオとの戦いで、その無意味さを痛感させられていたと言っていいだろう。


 正面決戦を挑み、敵を撃破する事は格好がいいものである。


 だが、その事により、決定的な損害を受けてしまったら元も子もないのである。


 それは、国家存亡の危機に直結するからだ。


 クライセン家とルディラン家がそんな戦いをしないのは、そういう理由からだ。


 だが、重きを置く場所が違うワルデスク家はそうではないようだ。


 なので、サラサ艦隊との戦闘で頭に来ている事は確かである。


 上手く戦っていた気でいたが、最後は上手くやられた。


 そう、上手くやられただけならいいが、最後は弄ばれた感が強烈に残っていた。


 それでも何とか態勢を立て直し、反撃出来れば良かった。


 だが、反撃と行きたかった所、サラサ艦隊は遙か彼方に過ぎ去っていた。


 しかも、追う事は難しいだけではなく、それをすると恥の上塗りになりだけだった。


 ワルデスク侯にはこういった長すぎる理由で、義憤に駆られていたのだった。


「父上、元はと言えば、あやつが元凶ではございませんか!」

 ジル・ワルデスク伯は、撤収しようとしているエリオ艦隊を指差した。


 彼の艦隊ならば、十分攻撃できる位置にあったのだった。


 しかも何だか、ふわふわと漂っている小さな艦が4つ。


 如何にも弱そうに見えた。


 それだけならいいが、監視役というのが気に入らなかった。


 ま、弱いのに偉そうだという風に感じたのだろう。


 伯爵は間違いなくそう思っていた。


 そして、父親の侯爵の方も、息子に感化されていった。


「確かに、元凶は彼奴らだな!」

 ワルデスク侯は、決心したようだった。


「いけません、閣下。

 彼の艦隊は、教会に依頼されてここにいるのです。

 手を出したら、国内外に影響が及びます」

 スライスは、命令が出される前に素早く止めに入った。


 他に止める人間がいなかったからだった。


「ふん、あんな矮小な艦隊、一気に捻り潰せる。

 そうすれば、後は何とでもなる!」

 ジル・ワルデスク伯は、吐き捨てるようにスライスの意見を否定した。


 これは沈めてしまった後、隠蔽が可能という事なのだろう。


「……」

 スライスは、唖然としながらも司令官の裁可を待つ他なかった。


「ここまで来て、何も得ずに帰る訳には行かない。

 あの艦隊を討ち取るぞ!

 全艦突撃!」

 ワルデスク侯は、息子に呼応するかのように命令を下した。


 ただ、これは自分の保身の為に命令したという訳ではなかった。


 そこに、エリオ艦隊がいたから攻撃を仕掛けたに過ぎなかったのだった。


 『漆黒の闇』の本領発揮という所だろう……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ