その7
「閣下、シーサク艦隊、停戦に応じないどころか、加速してきています」
シャルスは、努めて抑揚無くそうと努力して、報告してきた。
(やっぱりか……)
それを和やかにマイルスターは見ていた。
「……」
エリオは、唖然としていた。
この状況を三者三様というらしい。
でも、まあ、それはそれとして、敵艦隊の攻撃の意思は明らかである。
ならば、迎撃態勢を整えればいい筈である。
だけど、今、ここで、戦う合理性は全くの皆無である。
少なくとも、エリオはそう思っていた。
「閣下、迎撃なさいますか?離脱なさいますか?」
マイルスターは、黙ってしまったエリオに対して結論を促した。
呆れながらもいつも通り和やかな表情であった。
「あ、いや、もう一度、警告。
『停戦しない場合、攻撃する』と」
エリオは、我に返ってそう命令を下した。
あっ、そうしちゃうの……。
エリオ以外の艦隊の誰もがそう感じただろう。
4隻でここにいるのだけでも、挑発と受け取られても仕方がない。
その上で、停戦命令を出した。
そして、これを完全に挑発だとして、敵艦隊はいきった。
そう、もう既にダメ押しをしたのである。
その上、更にそれ以上の事をするのかという感じで、皆の意見は一致していた。
とは言え、シャルスは反論せずに、エリオの命令を実行するべく動いた。
今更、もう状況は変えられないし、ならば、何をしても変わらないだろうという判断なのだろう。
先程の停船指示命令の信号と同様に、敵艦隊に信号を送った。
ドッカ~ン!バッシャーン!!
敵からの返礼であった。
「敵艦隊、停戦命令に対し、砲撃で答えてきました」
シャルスは、敵艦隊からの砲撃をそう報告した。
当然、報告されなくても砲撃音と水飛沫が上がったので、分かっている事である。
「……」
流石のマイルスターも呆れて物を言うのを忘れてしまった。
「……」
エリオの方は、呆然としてしまった。
間抜けすぎる。
とは言え、そこは流石の稀代の策略家。
きちんと敵艦隊の距離を測ってはいた。
なので、有効射程外からの砲撃であり、危険が及ぶ事はなかった。
だが、これで完全に敵を逆上させてしまったようだ。
煽りの天才、ここに面目躍如という所だった。
「閣下、事ここに至っては致し方ありません。
反撃すべきでしょう」
マイルスターは、和やかにそう進言した。
4vs24。
敵の数は6倍。
どう考えても圧倒的な数的不利だった。
だが、エリオ艦隊の面々は誰もが至って普通だった。
そして、エリオ以外の面々は既に戦闘態勢になっていた。
これは、敵を殲滅する必要がない事と、煽られた為か、明らかな射程外からの砲撃。
既に、敵の実力を見切っていたから普通に対応できていた。
まあ、間抜けな話なのだが、『漆黒の闇』という戦争の天災がいるのも多少の影響はあった。
「う~ん……」
エリオは、まだ納得はしていなかった。
だが、残念な事に既に戦闘モードに切り替わっていた。
それが、マイルスターやシャルスには手に取るように分かっていた。
なので、命令を待った。
……。
あれ?
命令がないので、沈黙が流れてしまった。
ドッカ~ン!バッシャーン!!
そうこうしている内に、また敵からの砲撃があった。
敵は近付いているので、先程より近い位置に砲弾は落ちていた。




