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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
29.第2次スワン島沖海戦
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その4

 フランデブルグ伯と対峙していたオーマ艦隊の行動である。


「ワルデスク艦隊の援護に向かいましたね」

 ヤーデンは、フランデブルグ艦隊が遠ざかっていくのを見ながらそう言った。


 そして、オーマにしては反応が鈍いと感じていた。


 一応、決断を促す為に、そう言ったのだが、意外にも何も返ってこなかった。


 オーマ艦隊に入っている報告としては、サラサ艦隊とワルデスク艦隊が砲撃戦を始めたと言う事だった。


 つまり、フランデブルグ艦隊より正確に状況を把握していた。


「閣下、して、どうなさいますか?」

 ヤーデンは、いつまで待っても答えが返ってこないと感じたので、直接尋ねる事にした。


「う~ん、ちょっと意外な行動だったのでな。

 罠があるのではないかと、観察していたのだよ」

 オーマは、フランデブルグ艦隊をジッと見ながら、ようやく口を開いた。


「!!!」

 ヤーデンは、「そう言われてみると」となった。


 敵が急に行動を変えたとなると、確かに真っ先に警戒すべきは罠の存在だった。


 罠だとしたら、戦いに引きずり込むというものだろう。


 が、果たして、それは敵の利益になるのだろうかと言う事である。


 その辺が、オーマには理解が出来ないでいた。


 尤も、これはフランデブルグ艦隊も、オーマと同じ情報を持っているという前提で考えている。


 だが、その前提自体がおかしいという事は、流石にオーマ達も気が付いてはいなかった。


 そういう面もあり、判断が遅れてしまった。


 要するに、難しく考えすぎたのだった。


「閣下、このままですと、敵艦隊は合流します。

 そうなると、明らかにサラサ様が不利になるのでは?」

 ヘンデリックは、現状を見たままに、報告するように言った。


 ヘンデリックにして見れば、考えは至って単純だった。


 罠があるにせよ、追撃せねば、事態は悪化するという考えだった。


「……」

「……」

 オーマとヤーデンは、ヘンデリックの進言に顔を見合わせた。


 成る程と思うと同時に、今回の件ではお互いに精彩を欠いているのを自覚した。


 とは言うものの、その辺は流石の2人である。


「その通りだな」

 オーマは、遅まきながらヘンデリックの意見に賛同した。


 ヤーデンも隣で頷いていた。


「全艦、敵艦隊を追尾する。

 ただし、罠の可能性もある。

 慎重に追尾するぞ」

 オーマは、賛同すると直ぐに命令を下した。


 ヘンデリックは敬礼すると、各所に指示を出すように伝令係に伝えた。


 オーマは艦隊は、フランデブルグ艦隊を追撃し始めた。


 慎重さもあり、距離はフランデブルグ艦隊がオーマ艦隊を追尾していた時よりは離れていた。


 付かず離れずといった感じだろう。


 とは言え、追尾する側が完全に逆転したのは興味深い。


 そして、また、これは違う神経戦の始まりでもあった。


 ……。


「閣下、第2艦隊より報告。

 敵艦隊からの離脱に成功。

 現在、ワタトラへの帰還ルートを航行中との事です」

 ヘンデリックは、追撃戦の終わりを告げるかのように、報告した。


 報告が入ったのは、オーマ艦隊が追尾を始めて、それ程時間が経っていない時だった。


「!!!」

「!!!」

 オーマとヤーデンは、口には出さなかったが安堵の表情を浮かべていた。


 信頼していたとは言え、こうしてちゃんと報告を受けるまでは心配で堪らなかったからだ。


「敵艦隊への追尾を中止。

 以降は、支援艦艇での監視へと移れ」

 オーマは、報告に対しての命令を下した。


「了解しました」

 ヘンデリックは、そう言うと、伝令係に指示を飛ばしていた。


 と同時に、艦隊にも安堵の空気が流れ始めていた。


「やれやれですな……」

 ヤーデンの方も、作戦の終わりを確認したかのようにそう言った。


 この言葉は、これまで如何に緊張を強いられていたかを物語っていた。


 そして、意外にあっさりと終わった事と無事に終わった事に喜んでいた。


 エリオのいつもの面倒くさがりとは全く違うやれやれだった。


「全くだな……」

 オーマもヤーデンに賛同するかのように、苦笑いを浮かべながらそう言った。


「とは言え、これで敵は引き下がりますかね?」

 ヤーデンは、安心したと同時に参謀長としての懸念を伝えた。


 ようやく平常運転に戻ったという感じだった。


「何処までも追ってくる可能性がない訳ではない」

 オーマは、ヤーデンの懸念点にそう答えた。


 当然、この事は、ヤーデンだけではなく、艦隊に再び緊張を強いるものだった。


「だが、近くに格好の獲物がいるとなると、話は違ってくる」

 オーマは、地図上の駒の一つを指差した。


 その艦隊は、言うまでもないだろう。


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