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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
29.第2次スワン島沖海戦

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その3

 さて、エリオにもう一方の艦隊と言われたフランデブルグ艦隊である。


 話は、サラサ艦隊が離脱する前に戻る。


「……」

 当然ながらフランデブルグ伯は難しい顔をしていた。


 オーマ艦隊とはまだ1回も砲火を交えていなかった。


 神経戦が続いていた。


 確かに、神経戦なのだが、お互いを凝視しているという訳ではなかった。


 勿論見てはいたが、それは周辺視野で見ているといった感じである。


 気になっているのは、別の所で戦っているであろうサラサとワルデスク侯だった。


 戦っているという情報は、オーマの方に入っていたが、伯爵の方には入ってはいなかった。


 情報格差である。


 伯爵が難しい顔をしているのは、情報が入っていないせいであった。


(さて、どうしたものか……)

 新情報が入ってこない以上は、このまま続けるしかないと伯爵は思っていた。


 だが、当然、このままでいいのかという考えもある。


 と言う事で、迷っていたのだった。


「……」

 サズーもサズーで判断材料がないので、何も言えない状態だった。


 ただ、今一番やってはいけない事は、現状を変える事だった。


 ここにオーマ艦隊を引き付けておく事で、敵に数的有利な状況を与えないのが最も重要だからだ。


 両艦隊は大分南下しており、このまま行けば、陸地も見えてくるだろうという海域まで来ていた。


 それを感じ取った瞬間、伯爵は何かに気が付いたように、表情を変えた。


「ルディラン侯は、このままキンダザゥに帰還する気でいるのではないか?」

 伯爵は、思い付いた事をそのまま口にした。


「まさか……」

 サズーは一度否定しかけたが、現状の為に机上の地図を見た。


「バルディオン第1艦隊、進路変更。

 東に向かっています」

 イーグがそう報告してきた。


「我が艦隊も、進路変更。

 追撃を続行せよ」

 伯爵は、直ぐにそう命令した。


 2つの艦隊は進路を東に向けた。


「確かに、閣下の仰る通り、第1艦隊は王都に帰還するようです」

 サズーは考えた結果、そう結論を出した。


「そして、第2艦隊はワタトラへと帰還する」

 伯爵はサズーの同意を得て満足という訳ではなく、次の懸念点を上げた。


「!!!」

 サズーは、万事敵の思惑通りに進んでいるので、唖然としていた。


 尤も、自分達が主導権を握っているとは露程思っていなかった。


 だが、これほど、見事にしてやられるとは思ってもみなかった。


 このまま行けば、敵の思惑通りで終わってしまう。


(とは言え、このままでもいいのでは?)

 サズーは口には出さなかったが、そう思い始めていた。


 このまま行けば、戦果は全くないが、損害もない。


 徒労感が残るが、死人が出た訳ではないので、良しとすべきだろう。


「ルディラン侯は、1対1ならば、我が方には負けないと思っているようだ」

 伯爵は自嘲気味だが、ちょっと苛つきながらそう言った。


 実力的にはそうなるのだろうが、態度で示されると結構頭にくるものである。


「???」

 サズーは、伯爵の意図が掴めないでいた。


「もし、向こうの戦いで、ワルデスク侯が敗れたら、非常に不味い事になる」

 伯爵は、先程とは全く違う事を述べていた。


 サズーは思考があまりにも飛んでいたので、付いていかなかった。


 だが、流石に艦隊参謀長であるだけに、伯爵の指摘に直ぐに気が付いた。


「そうなると、我が艦隊はバルディオン艦隊から挟撃される可能性があると?」

 サズーは、伯爵が最悪の可能性があるシナリオを提示してきたのに、気が付いた。


 そうして、ワルデスク艦隊を突破してきたサラサ艦隊が目の前に見えた気がした。


 それは絶望しかない世界だった。


 それにしても、フランデブルグ伯というのは面白い存在である。


 敵の意図を読みつつも、最悪な状況も直ぐさま感じ取る事が出来る。


 伊達に出世できた訳ではなかった。


「参謀長の言うとおりだと思う」

 伯爵は、溜息をつきながらそう言った。


 いくら戦略眼が優れていたと言っても、そうなってしまったらどうしようもない事は確かだったからだ。


「ならば、我が艦隊は今動くべきではないでしょうか?」

 サズーは、伯爵に決断を促した。


 撤退するのが一番だと思われるが、そうは行かない事はサズー自身よく分かっている。


 ここで、撤退すると敵前逃亡に当たるからだ。


 とは言え、このまま座して推移を見守るのはあまりにもリスクが高かった。


「取りあえず、ワルデスク侯が破れていない事を願って、合流するとするか……」

 伯爵はそう言ったが、命令を下した訳ではなかった。


 情報がなさ過ぎる。


 伯爵の一番の懸念点は、この情弱性かも知れない。


 そして、それが伯爵が決断できない点でもあった。


「私は、閣下のご意見に賛同いたします。

 どの道、今、動かないと益々危機的な状況に陥るでしょう」

 サズーは、伯爵の決断を促すようにそう進言した。


「……」

 伯爵は、しばらく無言でサズーを見た。


「……」

 サズーは伯爵に決断を促すように、無言で伯爵を見た。


「うん、そうだな」

 伯爵は決断したようだった。


 そして、

「我が艦隊は、ワルデスク侯と合流する。

 進路変更!」

と命令を下した。


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