その15
さて、呑気すぎるエリオである。
とは言え、報告を受けながら、自分で地図上の駒を一々更新していた。
現状把握は常に怠らない。
と言うより、身に付きすぎていて、ボケッとしている傍らにやっているという表現がピッタリである。
この辺が、やはり、残念無念な所である。
きちんと仕事をやっているのに、評価されないという典型例かも知れない。
「どちらに艦隊を移動させますか?」
マイルスターは、エリオの考えている事を察して決断を促した。
まあ、どういう結論を出すか楽しみという意味では、やはり、和やかだった。
こちらもこちらで、始末に悪い。
「う~ん……」
エリオは、マイルスターの質問には直ぐには答えられなかった。
やる事は決まっていたが、惹かれるものがあったのだろう。
「戦闘が激しくなるのはこちらでしょうが、こっちに惹かれるのですね」
マイルスターは、エリオの心情を代弁した。
勿論、和やかな表情である。
「ああ、ルディラン侯とフランデブルグ伯の戦いは見物だが、今回の任務としては、こちらに行かないといけないよな」
エリオは、残念そうにそう言った。
因みに、自分が残念だと思っている訳ではない事はここに記しておく。
そして、自分に関係ないと思い込んだら人間というものはお気楽なものである。
ただ、『漆黒の闇』と呼ばれているエリオ。
その後、遺憾ありきで、その能力を発揮するのは流石である。
ふと、マイルスターは、シャルスを見た。
何となく、と言うより、何かを感じたからだ。
シャルスは結構表情に乏しいというか、何を考えているか分からない表情をしていた。
だが、何か、興味深げに笑ったような気がした。
少なくとも、マイルスターにはそう感じられた。
この2人を見ていると、まともなのは自分だけだと感じられる。
その当の本人も、周りから見ると、かなり毒されていると思われているのには、気が付いていない。
とにかく、マイルスターは、シャルスの顔を二度見した。
が、今度は、いつものシャルスがそこにいるだけだった。
艦隊は、スワン島沖を離れ始めた。
別に、海戦の見物に行く訳ではない。
法国からの依頼で、監視任務に就くだけであった。
とは言え、エリオ以外の艦隊所属の面々はそう思っていない所が、実にシュールな光景である。
様々な思いが渦巻く中、エリオ艦隊は、サラサ艦隊とワルデスク艦隊の海戦現場へと向かうのだった。




