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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
28.アメット海海戦

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その14

 エリオとサラサの神経戦が行われた後、砲撃が始まった。


 サラサの予想通り、アメット海に入った途端に戦端が開かれた。


「砲撃せよ」

 号令を掛けたのは、ワルデスク侯だった。


 ドッカーン!ドッカーン!


 砲門が一斉に火を噴いた。


 サラサ艦隊がワルデスク艦隊の前を通り過ぎようとした時だった。


 距離は射程圏という訳ではなく、離れていた。


 しかし、砲撃を開始した。


 ある意味、これは逃がさないという意思表示なのだろう。


 と同時に、ワルデスク艦隊が加速し、艦隊間距離が縮まっていった。


 攻勢を仕掛けるには絶好のタイミングと思われた。


「父上、先手を取りました!」

 息子のジル・ワルデスク伯爵が歓喜の声を上げた。


 本格的な対外戦とは初めてなので、興奮していた。


 あ、まあ、父親の方も艦隊戦は初めてなのだが……。


 そんな中、副官のスライスは何だか浮かない表情だった。


 先に砲撃を始めれば、先手が取れるのは必然である。


 それが効果的であるかどうかである。


 とは言え、この行動は悪手とは言えない。


 寧ろ、定石寄りであろう。


「伯よ、戦いは始まったばかりだ。

 そう興奮するな」

 侯爵は、息子を諫めるように言ったが、どこか楽しげだった。


「はっ、父上。

 油断しないようにします」

 伯爵は、父親の言葉に素直に従った。


 が、興奮している状態は隠しようがなかった。


(まあ、仕方がないか……。

 怯えて、縮こまるよりはマシだな)

 侯爵は、息子の姿をどこか微笑ましく見ていた。


 だが、息子ばかりを気にしてはいられない。


 侯爵は、砲撃の先にいるサラサ艦隊を見た。


(『銀色の魔女』との異名を持つ少女。

 その噂は本当なのだろうか?)

 侯爵は、腕組みをしながら見極めようとしていた。


 一方的に砲撃されているサラサ艦隊。


 特に動きはない。


 不思議な感覚に囚われた。


「父上、敵艦隊の動きがやけに鈍い気がしますが……」

 伯爵は、ニヤリとしながらそう言った。


 これは明らかにマウントを取った感を漂うわさせていた。


(フラグを立てた?)

 スライスは、びっくりしたような表情で伯爵を見た。


「だから、そう急くな。

 敵には敵の思惑がある……」

 侯爵は、父親らしく自制していた。


 とはいえ、侯爵自身も意外性を感じていたのだった。


 サキュス沖海戦とは、明らかに違った面を見せていたからだ。


(状況は違うとはいえ、こんなに違うのか……)

 侯爵は、自問するように考えた。


 そうしている間に、自艦隊からの砲撃が続き、艦隊距離が縮まる。


 そうなると、サラサ艦隊の鈍重さが目に付いてきた。


「父上!」

 伯爵は、サラサ艦隊の様を見て、目をギラギラさせていた。


「分かっている。

 このまま距離を縮めろ!

 砲撃の手を緩めるな!」

 侯爵は、息子に促されるまでもなく、一気に攻勢を掛ける事を決断した。


 スライスは不安に思いながらも、侯爵の命令通り、伝令係に指示を飛ばしていた。


 とは言え、スライス自身、その不安が何なのかはよく分かっていなかった。


 なので、何かを言う事はなかった。


 そうこうしている内に、また変化が現れた。


「敵艦隊、陣形崩れました」

 スライスは、受けた報告を告げた。


「父上!」

「よし!」

 伯爵と侯爵の叫び声が交錯した。


 それと同時に、艦隊の士気が一気に上昇するのが分かった。


「このまま一気に敵を突き崩すぞ!

 突撃!」

 侯爵は、更に攻勢を仕掛ける命令を出した。


 序盤は、ワルデスク艦隊の攻勢が上手く嵌まっていると言えたのだった。


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