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異界発掘機構ARK ~異世界の数だけ物語がある~  作者: Tomsug
第一編 墓守の少女

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第3話 証言

 王都郊外・生存者聞き取り記録。


 記録担当、サミ。


⸻


001:郊外の農夫


「畑を耕してたんだよ。そしたら、どおんって音がしてな。何事かと思って振り向いたら、街の方から土煙が上がってた」


「音は一度だけ?」


「いや、何度もしたぞ。最初にでっかいのが一発、そのあとも、どがががって。あんな音、生まれて初めて聞いたわ」


「地面は揺れた?」


「そりゃもう。立ってられなくて尻餅ついたくらいだ。畑の畝も崩れちまった」


「畑は王都からどれくらい離れている?」


「歩いて半刻くらいだな。馬ならもっと早い」


⸻


002:街道沿いの宿屋の女将


「音? 聞いてないねえ」


「聞かなかった?」


「厨房で鍋をかき回してたんだよ。そしたら棚の皿が一斉に落ちてきてさ。地震かと思って外へ飛び出したら、街の上にでっかい土煙が上がってた」


「建物が崩れるところは?」


「見たよ。遠くの塔が倒れるのも見えた。あれ、何だったんだろうねえ。最初は戦争でも始まったのかと思ったんだけど」


「軍隊は見た?」


「見てないね。兵隊どころか、逃げてくる人間だっていなかったよ」


「そうか。それと、街道に怪我をした商人がいる。救助と荷馬車の修理を頼める者に心当たりはないか?」


「それなら、近所の連中に声をかけてみるよ。場所を教えとくれ」


⸻


003:王都を出たばかりの荷運び人


「俺は見たぞ。街が潰れていくところ」


「詳しく聞かせてほしい」


「門を出て坂を上がったところだった。振り返ったら、街の一角で屋根が落ちてな。地面に吸い込まれたみたいに見えたんだよ」


「地面に?」


「いや、実際に沈んだかどうかは知らんぞ。遠かったし。ただ、建物が上から順番に見えなくなったんだ」


「その後は?」


「周りの建物も次々に崩れた。こっちへ向かって広がってくるから、荷物なんか放り出して逃げたよ」


「炎は見えた?」


「火なんか見えなかったな。土煙がすごくて、それどころじゃなかった」


⸻


004:郊外の牧場主


「牛がな、急に暴れ出したんだ」


「崩壊が始まる前?」


「それがよくわからん。牛を追いかけてたら、王都の方からものすごい音がしたんだ。あいつら、柵をぶっ壊して逃げちまってな」


「牛は戻った?」


「半分くらいは。残りはまだ見つからん」


「王都の様子は見えた?」


「土煙だけだな。あとは屋根がいくつか見えなくなってた。牛を探すのに必死で、それどころじゃなかったんだよ」


⸻


005:王都近郊に住む老婆


「神様がお怒りになったんじゃよ」


「そう思った理由は?」


「あんなこと、人間にできるわけがなかろう。王都が丸ごと壊れたんじゃぞ」


「何かを見たのか?」


「見たとも。家の窓からな。最初は山でも崩れたのかと思ったが、よく見たら街じゃった」


「光や炎は?」


「知らんよ。怖くて窓を閉めたからの」


⸻


006:農夫の妻


「うちの人は地震だって言い張るんですけどね、私は違うと思うんですよ」


「というと?」


「風です。ものすごい風が吹いたんです。洗濯物が全部飛んで、庭の桶までひっくり返ってしまって」


「風はどちらから?」


「王都の方からです。あの人は揺れたって言いますけど、私は風の方が怖かったですねえ」


「地面の揺れは感じなかった?」


「揺れたかもしれませんけど、あんなにいろんなものが飛んできたら、それどころじゃありませんよ」


⸻


007:街道警備の経験がある男


「敵襲じゃないのか?」


「そう考えた理由は?」


「王都だぞ。あれだけの城壁があって、あれだけの兵がいる。それが一度にやられたんだ。何かとんでもない兵器でも使われたんじゃないか」


「攻撃している者を見た?」


「いや」


「軍勢は?」


「見てない」


「飛来物や魔法の光は?」


「……それも見てないな」


「ほかに気づいたことは?」


「おかしいと思ったのは、逃げてくる兵がいなかったことだ。王都から出る街道はいくつもあるだろう。なのに、俺が見ていた道には誰も来なかった」


⸻


008:街の外で薪を集めていた少年


「俺、最初は花火かと思った」


「花火?」


「だって、すごい音がしたから。お祭りでもやってるのかと思って木に登ったんだ」


「そこから何が見えた?」


「街が壊れてた。屋根がいっぱい落ちて、煙みたいなのがぶわーって広がって……」


「火は見えた?」


「ううん。土がいっぱい飛んでた」


「それから?」


「怖くなって木から落ちた」


「怪我は?」


「お尻が痛かった」


⸻


009:王都近郊の行商人


「災害が起きたのは間違いないんだろうけど、何が原因なのかさっぱりわからん」


「崩壊の瞬間は見ていない?」


「ああ。別の村で商売しててな。翌日になって王都がなくなったと聞いたんだ。最初は冗談かと思ったよ」


「その村でも被害は?」


「窓が割れた家が何軒かあったくらいだ。あと、王都の方からものすごい音がしたって奴も多かったな」


「王都から逃げてきた人間はいなかったか?」


「俺がいた間は見てない。ただ、王都のパン屋の夫婦は助かったらしいぞ。ちょうど街を離れてたんだと」


「ほかに生き残った者は?」


「さあな。どこかへ逃げた奴もいるんじゃないか?」


⸻


010:街道沿いの農家の男


「夜になっても王都の方が赤かったんだ」


「火災か?」


「そうだと思う。昼間は土煙でよく見えなかったが、暗くなったらあちこちで火が上がってるのがわかった」


「崩壊は夜まで続いていた?」


「いや、建物が崩れるような音は最初だけだったと思う。そのあとは時々、何かが倒れる音がしたくらいだ」


「誰かが助けを求める声は?」


「……聞こえなかったな」


「人を探しに行った者はいるか?」


「何人か街の方へ向かったよ。けど、途中で引き返してきた。瓦礫だらけで進めなかったって」


⸻


011:郊外の丘にいた羊飼い


「俺がいた場所からは王都がよく見えるんだ」


「崩壊の始まりも?」


「ああ。全部じゃないが、街の一角から崩れ始めたのは見えた。あっという間だったよ」


「爆発のようなものは?」


「爆発っていうのかねえ。何かが破裂したというより、建物がまとめて吹き飛ばされたように見えたな」


「崩れ始めた場所に何か見えなかったか?」


「土煙が上がる前のことか? いや、何も。普通の街だったよ」


「その後は?」


「羊を連れて逃げた。あのまま丘にいたら巻き込まれると思ったからな」


⸻


012:王都の外に住む母親


「子どもがね、泣き止まなかったんです」


「崩壊のときに?」


「ええ。家が揺れて、窓が割れて……抱きしめているだけで精一杯でした」


「王都の方は見えた?」


「少しだけ。家の屋根が見えなくなって、煙が上がっていました」


「逃げてきた人は?」


「見ていません。私も子どもを連れて村へ逃げましたから」


「その後、王都には戻った?」


「いいえ。主人が、様子を見に行くと言って……」


「ご主人は?」


「まだ、帰ってきません」


⸻


013:元王宮職員


「最初は地震かと思いました。地面が大きく揺れましてね。そのあと、ものすごい風が吹いてきたんです」


「王都の様子は?」


「土煙が上がっていました。建物も次々と崩れて……まったく、何が起きたのか。……いや、まさかな」


「何か心当たりが?」


「……私は以前、王宮に勤めておりましてね。上司が代わってからは、別の部署へ移されましたが」


「王宮と今回の崩壊に関係があると?」


「わかりません。私の考えすぎかもしれませんし……ただ、国の機密に関わることですので、私の口からは申し上げられません」


「では、何を調べればいい?」


「王宮です。原因をお調べになるのでしたら、王宮を調べてみてください」


「理由は?」


「……それ以上は、ご容赦ください」


⸻


 聞き取りを終えたサミは、集まった証言を順に確認していた。


「音を聞かなかった人もいるのね」


「場所も状況も違うからな。全部が正確とは限らない」


 フティは証言者のいた場所を地図に落とし込み、墓地周辺で確認した破壊の方向と照らし合わせた。ほとんどの証言は、王都の一角から崩壊が始まり、周囲へ広がったという点で一致している。


「でも、誰も原因は見てないのよねえ」


 オトキが地図を覗き込むと、エルティも隣から顔を出した。


「元王宮職員のおっさんだけ、何か知ってそうだったけどな」


「肝心なところは話してくれなかったわねえ。国の機密だなんて言われちゃ、仕方ないけど」


「それでも、調べる場所は教えてくれた」


 フティは地図を畳み、サミに記録の保管を指示した。


「次は王宮だ。あの男が何を疑っていたのか、確かめる」


 遠くには、今も王都から立ち上る煙が見えている。


 その下に何が残されているのか、彼らはまだ知らなかった。

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