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姫姉さまが成敗します!! 〜勇者の剣を継ぐ女帝、身分を伏せて闇を討つ〜  作者: 柴犬乃ぐんて
【女帝初陣ノ章】 「狙われた米と麦。少女が見た帝都の闇」
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Ⅵ「意志」

 御手洗いの外に誰かいる。クリスティーナは、レティを個室に隠すと、警戒しながら扉を開けました。


「あっ、小さな女の子が来ませんでしたか!?」


 看護師が少し上擦った声で、クリスティーナに声をかけます。

 外にいたのが看護師だった事にホッとしたクリスティーナ、しかし一応警戒は解きません。


「どうされたのですか?」

「もし見かけたら、保護して、誰にも渡さずに、近くの看護師に声をかけて下さい。お願いします」


 切羽詰まった様子の看護師は、そう言って、すぐに別の場所を探しに行こうとするのです。


「あの、ここに居ます」


 クリスティーナがそう言い、個室を開けると、看護師は安堵の表情でレティを抱きしめるのでした。


「どうされたのですか?」

「このレティさんは、今朝の火災でご両親とご兄妹を亡くされたのです……」

「私の父もその火事で搬送されました」

「では……お悔やみ申し上げます。その件でなぜかポリシアの隊員が、なぜか執拗に探していまして」

「重要参考人だから、保護しようという事でしょうか?」

「それがそういう感じではなく……我々もどうしたら良いものか……」

「私に保護させてもらえないでしょうか?」

「えっ?!」

「私は陛下にお仕えしております、帝宮使用人の執事長です。レティちゃんを守るには最良の場所かと思うのです。一旦宮殿にて保護し、それから法務局に受け渡すというのは、どうでしょう?」


 その後すぐに看護師長と医院長との協議のもと、クリスティーナは保護者として、レティを保護する事になりました。


 ハッシャーマーケットの4階の事務所の奥の社長室に通されたポルポは、緊張した面持ちで、社長室に入りました。

 そこで待っていたのは、眉に大きくシワを寄せて、不機嫌に葉巻きを吸うハッシャーの姿がありました。


「生き残りが出たと聞いてるが、そこから足がついたら、どうしてくれるんだね、ポルポ」

「ガキの言う事なんて、誰も信じちゃくれませんよ旦那」

「万が一って事もある」

「始末する事も考えましたがね、生存者が謎の死を遂げる方が、変な憶測を生んでしまいますぜ」

「確かにそれは、そうだ。う~む」

「ガキの命より、金の話がしたいですね」

「失敗しておいてか?」

「ペアー商店潰しは成功でしょう?」

「確かにな……だが、もう一仕事やってもらってからでも良いか?」

「ボーナスを付けてくれるって事なら、いくらでもやりますぜ」

「明日の4時に、隊商《キャラバン》が帝都に入る予定だ。いつも通りウチに出荷する農家以外の荷車を襲ってくれ」

「良いですが、最近、隊商《キャラバン》が組合《ギルド》から用心棒を雇ってるケースがあるんですよ。負ける事はないですけどね、戦闘になって、武器や防具からポリシアが関わってると割れるのもいけねぇ、流石に俺達だけじゃ隠蔽が難しいですし、何か策は無いですかい?」

「足のつかない武器か、考えておく」



 帝都の西の城壁に太陽が隠れ始めた頃、レティを連れたクリスティーナが、夕食前の陛下の私室を訪れました。そのただならぬ雰囲気に、陛下はすぐ人払いをし、3人のみでお話しをされました。


「お父様についてはお悔やみ申し上げます……しかし放火殺人の嫌疑があるのですね?」

「このレティ嬢は、ペアー家の御息女で……彼女が言うには、両親ともに殺されたと」


 クリスティーナの足に必死にしがみつくレティを見て、陛下はうっすらと涙を浮かべておられました。


 アズール前皇帝陛下の事を思い出したとも言っておられました。


「しかも治安を守るはずの、ポリシアにその犯人がいるかもしれないと……」


 陛下は情報を整理しながら、しばらく考える陛下は、扉の外に気配を感じられました。


「モモ、お帰りですか?」

「はい、こちらに」

「入って下さい」


 モモはそう言われ、サッと入室しました。


「モモの方はどうでしたか?」

「各役所を回りまして、南部では商家ペアー邸の火災の話題は多く話されてました。他はやはり物価高を心配する声が多かったという印象です」

「先ほどのクリスティーナの話は、モモは聞いていましたか?」

「はっ、しかし放火殺人の噂はありませんでした」

「そうですか」

「ただ……南部の役所で、偶然にコーラルローズの武器屋ダグラス・ポートに会いまして」

「マークのお父様ですね」

「はい、付き添いで南部の商店街に行ったのですが……他店よりも米の価格が抑えられて販売されており、尚且つ在庫も十分に売っている商店がございました」

「それは何と言う商店でしょう?」

「ハッシャーマーケットです。ポリシアの剣士がその店に訪れるのも目撃致しました、万全な山賊対策をしているのかもしれませんが、並んでいる商品と価格に違和感を感じました」

「……なるほど」


 陛下は目を閉じ、考えをまとめられ、ゆっくりとお話しになられました。


「これより、帝都に降ります」


 その時の凛とした陛下の姿、今思い出しても、心が震えます。


「直接見たい物があります。これは譲れません」

「しかし、ここはコーラルローズとは違います。陛下が街に行けば混乱を生むかもしれません」

「もちろん変装し、お忍びで参ります。モモ、守って下さいますか?」

「御意。この命にかけて」


 陛下は、クリスティーナに向き直り、


「クリスティーナ、明日の謁見、会議の予定は全てキャンセルでお願いします。あなたならやれますね」

「本気でございますか、陛下」

「レティちゃんの命を救う為、あなたの父とレティちゃんの両親の仇を探す為、引いては帝都の未来の為に、今、立たねばなりません。クリスティーナ、あなたの協力が必要です」

「承知致しました。陛下は風邪気味の為、顔合わせの謁見は控える様に、日程を調整します」

「ありがとう。クリスティーナ」


 陛下は、魔力を込める前の短剣状態の勇者の剣を、手に取り、


「帝国の民の平和は私が守ります」


 そう勇ましくおっしゃりました。

 それは本当に、本当に、勇者としか思えない出で立ちでございました。

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