Ⅷ「初任務」
すると受付嬢は、「戦闘職とは?」というボードを出しました。
「戦闘職は、まず基本となる、剣士、武道家、魔導使い、狩人の4つのジョブがございまーす。ここで何時でもジョブチェンジは可能で、それぞれに実績解除で上がるランクと言う物があります」
「私は剣士を選ぼうと思うのですが、ランクとは、実績解除とは何でしょう?」
「実績解除は、平たく言えば経験値ですね。例えば剣士のランク2になるには、護衛依頼を3回以上、魔物討伐5体以上ですね、ちゃんとに役所に報告をお願いします。条件はそれぞれのジョブで違いますし、上級職って言うのもありますぅ」
受付嬢は次のボードを出し、図解で姫姉様に説明をします。
「例えばお連れ様の「忍」は剣士ランク15、武道家ランク15、魔導使いランク10、狩人ランク10、上級職 トレジャーハンターランク5、それに加え、繰り返し貴族、皇族を護衛した実績で解除される最上級職ですねぇ」
姫姉様はモモを見ると
「モモって凄い努力をしたんですね。感心しました」
「姫姉様の為です」
そういうモモは、褒められた事が嬉しくて、耳を真っ赤にしておりました。
「では、基本職は剣士として、何を目指して行きますかぁ?」
「そうですね。勇者というのは、ありませんか?」
「フフフ、あなたは面白い人ですねぇ。勇者は、後にも先にも、初代皇帝 勇者ローレン・グリドニフ・ヴァーミリオン様だけ、魔王を倒した者にだけ許される称号ですよ。そう言う意味では、魔王討伐の実績解除が必要って事でしょうかねぇ」
受付嬢は笑いながら、姫姉様にそう言いました。
「なるほど、では先ずは現実的に目指せる、魔法剣士を目指します」
「わかりました。魔導適性テストはどうされますかぁ?」
「今は大丈夫です。その代わりと言っては何ですが、今から向かえる護衛任務はありますか?」
「今からですかぁ……欠員が出て、急募中の任務がある事はあるんですが、本来なら確かにランク上げに適した護衛任務なのですが……」
「それはどういう任務ですか?」
受付嬢は、任務の書かれた書類を出し、それを見せながら説明をします。
「隊商の護衛任務です。上からはこういう任務はランク下位に向いていると強く言われているんですけど、最近山賊が多く、個人的にはあまり低ランクの方にオススメ出来ないと思っていまして」
「ぜひそちらの任務をやってみたいです」
しかし受付嬢は困った顔で、承認を出し渋っていました。
「僕も行きます。ならば問題ないかと」
モモが受付嬢に顔を見せ言います。
「確かにそうですね。あなたがいるなら、何が出ても大丈夫でしょう。分かりました。任務の承認をしましょう。その前に登録を、えっとお名前は?」
「イーリス・ビリオン。世間知らずのメイドですが、宜しくお願い致します」
「ではイーリスさん、剣士として登録しました。以後はあなたが人に名乗る時は、メイドではなく剣士でお願いします。剣士として役所で任務を受注しないと、剣士の実績は解除されません。実績解除は任務報酬を受け取る時点での報告で完了します。これからあなたの力を帝国の為に使って下さい」
「はい、もちろんです」
受付嬢に言われた集合場所は、南部の城壁の出入り口にあたる「戦士の門」のそばにある「ヨッタン」という馬車置き場のある酒場でした。
酒場に入ると、仕事を終えた者が酒に酔い、これから夜の任務に出る者が食事をしたりと、色々なお客がいました。
「2名様ですか?あれ?」
ウェイトレスが声をかけるのですが、同じ様なメイド衣装を着ている姫姉様とモモを見て、
「ヨッタン?新しいバイト雇ったの?」
と、ヨッタンと呼ばれた店主を呼びます。
「雇ってないよ」
大柄でふくよかな体型、糸目、頭にタオルを巻いた店主が、2人を見て
「メイドさん?ここは居酒屋だよ」
そう言うヨッタンに、姫姉様が答えます。
「私たち隊商護衛任務の待ち合わせなんです」
「メイドさんじゃないの??ギルドの任務の待ち合わせなら、ここで間違いないよ。僕は一応戦闘職で、ここをみんなの憩いの場にしたくて、始めた店だからね」
すると、
「隊商護衛なら、僕らの部隊だよ」
すぐ隣りの入口に一番近いテーブル席の剣士が声をかけてきました。そのテーブルには他に2人、仲良く楽しげに話しているわけでもなく、目を合わせるわけでもなく、黙って座っていました。
「ボンド君たちと待ち合わせだったんだね。任務前の腹ごしらえ、ちゃんとして行ってね」
ウェイトレスとヨッタンが仕事に戻ると、自然と自己紹介が始まりました。
最初に自己紹介を始めたのは、20代前半の剣士。チェーンメイルの軽装な装備で、腰に長剣、座っている席にウッドシールド。まだランクが高くは見えません。
「僕はボンド・ゾルゲ。どこのギルドにも所属していないフリーの剣士でね、ランクは8。今回、一番ランクが上だったから部隊長になっちゃった、部隊長は初めてだけど、宜しくね」
ボンドが紹介を終えると、次に隣りに座っている胸が大きくセクシーな女性が話す。女性は弓と短剣を装備しており、防具は動きやすい為……なのか?少し肌が出すぎで薄着な印象です。
「私はミラン・ミラルダ。見ての通り狩人よ」
見ての通りとは?と、姫姉様とモモは疑問符を頭に浮かべました。
「ゲヘヘ……こんなセクシーな女とメイド姿のお嬢さんが2人、こりゃいいや、今回の任務は楽しめそうだぜ」
残る1人。魔導使い風の男がイヤらしい笑いをしながら、ビールをグイッと飲みました。
「任務前に酒を飲んでる魔導使いより使えると思うけど?」
魔導使いに反論するミランでしたが、その魔導使いは
「俺を誰だと思ってるんだ?治安部隊ポリシアにも腕を買われている、魔導使いゲニス・チュウダンだぞ。こんな一杯や二杯の酒で酔って任務を失敗するかってんだ」
姫姉様もモモも知らない事ですが、その者はペアー邸に火をつけたあの魔導使いだったのです。




