第88話 可愛い後輩♂に耳かきされる④
「先輩、ここ弱いっすね」
いや、知っていた?
「なぜわかる?」
「だって、先輩ここを擦るたびに鼻息が強くなるんすもん。太ももに生暖かくて荒い息が当たってくすぐったいっすよ」
「そ、そんなに鼻息出てたのか?」
「ええ、そりゃもう、ブルドックのように鼻の穴を大きくして、ぷしゅーって」
ブ、ブルドックだと?
「あと、先輩太ももに頭強く押し付けすぎっす。変態ですか?」
「い、いや、別に押しつけてなんかいないが」
「いいえ嘘っす。いくらぼくの太ももがもちもちスベスベで気持ち良いからって、さすがに鼻息当てながら頬を擦り付けられると、ちょっと、ねぇ。引きますよ」
「いや、まるで僕が興奮してるみたいな反応をするな。男に膝枕された上で耳かきを受けてるんだ、お前なんかに興奮するかっての」
「えー? いいんすか、認めなくても」
「認めるも何も、本当のことだ」
「ぼくのお尻の匂い嗅いだときから、ドキドキしちゃってるんじゃないのー? というか、本当は故意的にぼくのお尻嗅いできた?」
「事故だって、被害妄想酷すぎるだろ」
「えー? じゃあ……」
ピタッと、耳かきの手が止まった。
「正直に、興奮してたって認めないと、本当に高速耳かきの刑に処すっすよ」
「なんだよ、その高速耳かきは」
「ズボズボズボズボって、素早く先輩の耳の中ほじっちゃうっす」
高速で耳の中をほじるだと?
そんな痛そうなことされてたまるか。
「だから、興奮してないって言ってるだろ?」
そんなことを言われても、百地相手に興奮したとは思っていないのだから、認めるも何もない。
「そっすか、意地でも認めないんすね。じゃ、仕方ないっす」
百地は僕の頭を片手でぐっと抑えた。
「お前、まさか本気で高速耳かきなんて怖いことする気じゃないよな」
「痛くないっすよ、すっごく気持ちいいっす。だから先輩、ぼくのテクに酔いしれちゃってくださいっっっす!!」
語尾の「す」のタイミングで、思い切りズボッ!と、綿棒が奥の方へ入ってきた。
「っっっ!?」
思わずびっくりして飛び跳ねそうになるも、「危ないっす!」と咄嗟に、百地は僕の頭を抱きかかえるようにして抑えた。
が、そのせいで目の前に、先ほどまでよりもほんの目と鼻の先に、百地の股間辺りが近づいてしまった。
「さ、いくっすよ、スリスリスリスリ……」
そして始まってしまった、高速耳かき。耳の中の丁度気持ちのいいツボを、こいつは強くない、絶妙な力加減で、早口で擬音を口にしながら高速で擦ってきやがる。
それが、思った以上にとてもとても気持ちが良すぎて。
「も、百地、これやばっ……」
一瞬で口が緩み、よだれがたれそうになってしまう。
「一応これは尋問なんすよ先輩。正直に答えてください、ぼくの太ももに興奮してたって、認めてください。じゃないとやめないっすから」
「いや、だから違っ……」
「はい、脳みそまでズボズボしちゃいまーす」
ズズズッと、さらに奥の方へ綿棒が入ってきた。
決して痛くはない、気持ちのいい耳かきなのだが、緊張して首が硬くなり、怖くて身体が揺れてしまう。
「だから、危ないって言ってるでしょ、動かないでくだいっす」
「む、むりだ」
「言うこと聞かないなら、こうっす」
すると百地は、僕の頭を、お腹に押し付けるようにグッと抱きしめてきた。
いや、お腹じゃない。お押し付けられたのは、お腹にではない。
とうとう、百地の股間に顔が当たってしまった。僕は目を閉じているのだが、しかし百地の柔らかい感触を、顔肌で感じているのだ。
「んんん!」
「ちょ、先輩、鼻息荒いっす。やっぱ変態っすか」
反論しようにも、押しつけられたことで口がふさがれてしまい、声を出せない。
「ちょ、変なとこでもぞもぞしないでくださいっす。このっ」
耳かきがさらに激しくなる。ローションの交じった綿棒が奥の方へゴシゴシと押し付けられ、その感覚はまるで脳が犯されているみたいで、次第に視界がチカチカしてきた。
やばい、おかしくなりそうだ。たかが耳かきをされているだけのはずなのに、息を吸えば百地の柔らかい匂いが心を刺激し、そしてコショコショした百地の心地よい声がこそばゆく、耳かきには脳を犯される。
「先輩、さっきよりも身体中ピクピクしてますよ。ふふっ、気持ち良すぎてバカになっちゃいそうっすか」
「んんんんっ」
「あはは、抜いてほしいっすか? えーどうしようかな」
意地悪に、ゴシゴシと耳を犯し続ける。
ああ……駄目だ……飛んでしまいそうだ。ただの耳かきなのに、変なところへ行ってしまいそうだ。
やめてくれ……もう終わってくれ。耳かきがあまりにも気持ち良すぎて、変になる。
おかしくなってしまう……
「はい、スポッ」
「っっ!?」
急に、耳かきが耳から引っこ抜かれた。
突然の解放感に、僕の身体が猛烈にうねりだした。




