第85話 可愛い後輩♂に耳かきされる
フッと百地は笑うと、コップに注いでいたコーラを一気に飲み干してから言った。
「いいや、先輩にお尻の匂い嗅がれたからって、そんなことでバランスを崩したぼくが悪いんす。ここはぼくのまけでいいっすから」
「いや、でもお前が負けだと罰ゲームが」
「はい、罰ゲームを受けます。だってぼくが持ち出したルールなんすから、負けたからにはちゃんとうけるっすよ」
そう言い、百地は罰ゲームが書かれたトランプの山札を取り出した。
罰ゲームトランプ。百地はツイスターゲームを購入する際、こいつもセットで買っていたらしい。罰ゲームがあった方が盛り上がりそうだからと。
罰ゲームトランプはカード一枚一枚に罰ゲームが書かれていて、今回は山札から引いたカードに書かれている罰を受ける、というルールで用意してある。
しかしこのトランプ、タイトルにR18と書かれていて、つまるところ、ちょっとエッチな罰ゲームも混ざっているみたいだ。なにもこんな過激なものを買わなくたってよかったじゃないか。
「さて、お尻の匂いを嗅いでくるような変態な先輩が相手です。ぼくはどんな罰ゲームをうけるのか、どんな屈辱を味わってしまうことになってしまうのでしょうか」
なんて囚われの姫みたいな事を言いながら、しかし表情がやけに楽しそうで。
お前、まさか、はなから罰ゲームを受けることを望んでいたんじゃないよな。
「じゃあ、めくりまーす」
声を高らかに、百地は躊躇もなくトランプの山札の一番上をめくった。
頼む、エッチなやつ、というかどやされそうな面倒くさいやつは引かないでくれ。
「お、なになに〜?」
百地はめくったカード、ダイヤのエースを見せる。そこに書かれていたのは。
「ほかの人に耳かきをする〜」
耳かき、か。
「なーんだ、もっと盛り上がりそうな札が出るかと思ったのに、地味なやつ引いちゃったっすー」
「ち、ちなみに、他にはどんなカードがあるんだ」
僕は山札から数枚をめくって確認した。
「なになに? えーっと」
……下着姿になる? こいつはかなり大胆な事が書かれているな。
こっちのカードは……脇のニオイを嗅ぐ? これはどぎつい。そしてこのカートは……相手の太ももを舐める!?
「お前とんでもないもの用意しやがったな」
「ね、盛り上がりそうでしょ」
「いや、セクハラだろ」
「セクハラ? 先輩相手にセクハラとかありませんよ。というか、ぼくの方が丁度セクハラを受けましたしー」
なんて、まるで平気そうに、百地は棚から、竹の耳かきと綿棒を取り出してきた。
「さて、罰ゲームは遂行しないと面白くありませんから。今から先輩に耳かきをしますね」
「えー、お前の耳かきとか怖いんどけど」
「大丈夫です。耳かきなんておちゃの子さいさいっす。コントロールレバーみたいにグワングワンやってきれいにしますから」
「やめろ。というか、人に耳かきをしてもらうなんて、何というか恥ずかしいし、怖いんだよ」
「先輩、気にしなくていいんす、気を抜いてしまっていいんす、ぼく、耳かきには自信ありますから」
「お前、そこまでして僕に耳かきしたいのか?」
「罰ゲームっすから。罰ゲームは絶対、すよ」
なんて、なし崩し的に、僕は百地に耳かきをされる流れになる。
「ささ、先輩、ぼくの膝の上に頭を乗せてください。無礼講っすよ」
竹の耳かきを片手に構える百地は、正座をすると、ポンポンと自身の膝を叩いた。
短パンだからこその、百地の生太もも。男のくせに、毛が一本も生えていないような、スベスベな白い肌だ。
僕は躊躇するのだが。
「ぼく、一度家族以外の人に耳かきしてみたかったんすよ」
なんて、百地は乗り気である。
「耳かきって言っても、僕はこまめに耳の中綺麗にしてるから、汚れはそんなにないと思うぞ」
「それでも、マッサージだと思ってください。最近、おつかれだったりしません?」
「まあ、ここ最近はいろいろあって疲れてはいるけれど」
引く気はなさそうで、まあそこまで言うなら、なんて僕は左側の頬を太ももに乗せるように、百地の膝に頭を乗せた。
小柄で、肉付きもそんなにない百地だが、しかしいざ頭を太ももに乗せてみると、プニッとしていて柔らかかった。
肌からも、石鹸のようないい匂いがした。僕が遊びに来る前に、お風呂に入ったのだろうか。
「先輩、あまり太ももをクンクンしないでください。恥ずかしいっす」
「し、してないし!」
百地は僕の耳の周りを、優しく、ぐるっと一周指でなぞった。
「ふひっ!?」
いきなりだったので、僕は変な声を出して驚いてしまった。
「先輩、耳に産毛が生えてますね。後で剃ってあげましょうか?」
「べ、別にいいっ」
僕は少しぶっきらぼうに返した。
「先輩、緊張してます?」
「そりゃお前、他人に汚いところを見せるんだ、恥ずかしいし、あまり穏やかにはなれない」
「別に、そんなこと気にせずリラックスしてください。ぼくと先輩の仲っすよ。ぼくは、たとえ先輩の耳の中がドブまみれの排水管のように汚くても、さわれちゃいますから」
なんて、百地は僕の耳の穴を片手で広げるようにして、覗き込んできた。




