第84話 可愛い後輩♂とツイスターゲーム
と、そんな感じで、僕らはダラダラとツイスターゲームを始めた、のだが。
勝負も佳境に迎えたころ。
「へ、ヘイリリ、ルーレットを回して!」
百地が息を切らしながらスマホのAI機能に呼びかける。するとスマホは、デンッ!と効果音を鳴らすと。
「右足を赤に置いてください」
なんてAIの読み上げ機能が、両手が使えない僕らのかわりに、デジタル上でルーレットを回して教えてくれる。
「み、右足を赤だって!?」
百地は絶望したように反応した。
僕は今、逆四つん這いのような状態で、マットの上にバランスを崩してしまわないように踏ん張っている。僕はまだ耐えられているのだが。
僕の顔の横らへんにて、両手両足全てを片側半分の黄色と緑の円に乗せて、自分の足を交差するように屈んでいた百地は、そこから反対側の端に並ぶ赤の円へと右足を持っていかなくてはならないことに、悲観的になった。
「む、無理するなよ」
「……だ、大丈夫っす……いけます」
なんて百地は交差していた右足を、ほかの手と足をプルプル震わせながらもいい感じに抜いた。だが……
「ご、ごめんなさい先輩、失礼します」
逆四つん這いの状態であるため、僕は顔を天井の方へ向けているのだが。その僕の顔の真上を、百地の股間が跨った。
「ちょ、近い近い!」
「だから、ごめんなさいって!」
短いズボンは、お尻を突き出すようになった姿勢に布が引っ張られ、股間の膨らみを眼前で嫌にも視認してしまう。
「せ、先輩、顔もっと下げて、当たっちゃいそうです」
「ムリムリムリ、これ以上下げられない!」
百地の股間が、目と鼻の先に近づいてきた。今、息を大きく吸い込んだら、こいつの男としての濃い部分の匂いを感じてしてしまいそうで、僕は鼻で息をするのをやめる。
「ちょ、先輩、口から吐く息がなんだか湿っぽくて、うっ」
「お前、早く赤に足つけろよ!」
変なこと言うんじゃねえ!
なんとか顔の真上から股間はどき、百地の右足は赤の円に降りた。しかし現在、僕の頭上には突き出た百地のお尻が見えるような状態である。
「先輩、次を早く!」
「わかってる、ヘイリリ、ルーレット回して」
デンッと効果音が鳴り、リリは「右手を青、左足を緑」と指示が出た。ルーレットで出る手足の動かす数はランダムである。
僕は左手が赤の円に、右足と右手が反対端の緑の円に乗った状態で逆四つん這いになっている。青は赤の一つ内側の列にあり、僕の左足も青の列につけている。
僕は先に左足を、右足の下を通すように緑の円まで持っていく。そしたら、上に向いていた身体をくるりと下側へ向けながら、右手を青の位置に持ってきた。その移動の際、バランスがとても悪く、直ぐに右手を置いたのだが、円の場所まで調整をする余裕がなく、百地に近い位置の円に手をついたため、こいつのお尻に顔がぐっと近づいてしまった。
なかなか体勢がつらく、この状態を維持しているだけでも息があがってくる。だがさっきみたいに口で息をすると、湿っぽいとか変な反応をされたので、僕は鼻で大きく呼吸をする。
今僕らは、二人縦に並んで四つん這いのような体勢をしている状態だ。
「ヘイリリ、ルーレット」
「左足を黄色へ」
ルーレットに従い、百地は今度は左足を黄色に移す。緑の隣だしこれは楽勝だろうなんて考えた。その百地が左足を動かし、黄色の円へ乗せた瞬間。
百地のお尻の位置が後ろにぐっと下がってきて。
僕の顔に衝突した。
「ひゃっ!?」
その衝撃で、鼻呼吸をしていた僕は、咄嗟に息を止めるなんてことはできず、大きく鼻から空気を吸い込んでしまう。
百地のお尻に顔をくっつけた状態で、呼吸をしたのだ。
「!!????」
動揺した百地は、その場で節々が折れてしまったかのように崩れてしまった。
僕は、大きく吸い込んでしまった百地のお尻の匂いに、頭を支配されてしまい、身体が固まってしまった。
その、変な匂いがしなかった。めちゃくちゃ、いい匂いというか、普通に百地のフワフワした百地の清潔感のある匂いがして、ビックリしてしまった。
「せ、せんぱい〜」
百地に呼びかけられ、ハッと我に返る。
「ご、ごめんな百地、大丈夫か?」
「だ、だいじょばないっす、だって、先輩にお尻の匂い嗅がれたんすよ……」
涙目にお尻を押さえる百地は、やけに女々しくて、一瞬、変な気が僕の中に湧いてしまった。が、それを押さえるため、僕は地面に頭を強く打ち付けた。
「な、何してんすか!?」
「いや、なんでもない」
顔を上げると、百地は恥ずかしそうに視線を背けて体育座りをしていた。
「もう、こんなことされちゃったらぼく、お嫁にいけないっすよ」
なんて、顔を赤くして言う。
「先輩、責任取ってくださいよ?」
その表情がまたキュートすぎて、僕は再び床に頭を打ち付けた。
「い、今のはなかったことにしよう」
「えー、あんなアブノーマルな仕打ちをしておいて、なかったことにできませんよ」
「いや、そこじゃなくて、ゲームの勝敗をなかったことにしよう」
そう、百地が崩れてしまったから、このゲームは僕の勝利となったのだが。
「本当にごめん。僕が負けでもいい、だから許して」
いくら僕らの間柄だとはいえ、かなり失礼なことをしてしまったのだ。本人もすごく気にしてしまうかもしれないし、申し訳ないことをしてしまった。




