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第68話 王子様対猫②

 二人はにらみ合って息を整える。


「なかなかすばしっこい。しかしそんなに息を切らしてしまって、体力の限界かな」

「まさか。あんたこそ、余裕ぶってながら結構疲れてる様子だけど?」


 お互いに煽りあいながら一呼吸置いている状態だ。


「ふ、二人とも、もうやめよう」


 ここまで俯瞰していた僕は、落ち着いたここぞとばかりに呼びかけた。


「ごめん、木野くん。この王子様を倒さないと、やめられない」

「そうだね、決着をつけないと、このまま終わって解散、なんてことにはならないよね」


 だが、二人はこの戦いを辞める気はない。そりゃそうだ、僕を取り合っての戦闘なんだ。途中でやめても問題が解決しない。

 煽りあって笑っていた二人は、すごい剣幕で間を詰めて。 


「ウニャーー!!」


 猫俣さんが再び両手の爪を金色に光らせると、突風の勢いでとびかかった。

 その刹那、キーーンと脳に響く甲高い音を立てたかと思えば、青く発光した鳩島先輩の細剣が、その爪を受け止める。続けて猫俣さんは斬りつけにかかるが、鳩島先輩も、魅せるような剣技で防いでは突き刺しにかかる。


「あんた、王子様なのに、女の子に好かれようとボーイッシュを演じてるのに、なんで木野くんに好かれようとしてんだよ!」


 ドスッ! と猫俣さんの蹴りが鳩島先輩のお腹に入った。先輩は腹部を抑えながら、背後にふらつくように下がって距離をとる。


「矛盾してんじゃんか!」

「矛盾なんかしていない。木野くんはそこらの男と違う、特別なんだ! さっきも言っただろう?」


 先輩は再び斬撃を一つ飛ばして牽制する。猫俣さんはまた片爪で斬撃を防ぐも、隙を見て先輩は真っすぐ飛ぶように、一気に距離を縮めた。


「だから絶対に君みたいな子猫ちゃんには渡せない。彼がいなと、ボクは女として生きていけないんだ!」


 そう威勢を張りながら、細剣を大きく横向きに振りかざした。とたん,ブワッと突風が起こる。猫俣さんは剣を爪で防ぐも、強風にあおられるように、背後に吹き飛ばされてしまった。

 その態勢を崩したところへ、鳩島先輩が顔面に向けて細剣を突き刺す!


「猫俣さん!」


 さすがに危ういと感じた。しかし猫俣さんは強靭な歯で剣先に噛みついて、突き刺しを止めてしまった。


「ふにゃあああ!!」


 しっかりと細剣が嚙みつかれてしまい距離が近づいた先輩。懐に入った猫俣さんはそこへ光らせた爪を一撃、胴体にかました!


「うあああっ!!」


 先輩は腹部に鋭い一撃を受けた、ように見えたが、とっさに腰に携えていた鞘を引っ張り出して防いでいた。だが斬りつけられた衝撃で先輩も背後に吹き飛ばされて、また距離が開いた。


「ハア……しぶこいね」

「あんたも……ハァ……ハァ、とっととくたばってよ」


 お互いに体力を消耗し、息切れを起こしている。


「君は、可愛いね……」

「は?」

「ギャルはファッション、可愛いを追求している。自分を堂々と着飾っている。そんなところが素敵だ」 


 突然、先輩は猫俣さんを褒め始めた。


「なに、見境なくナンパってんの?」

「そういうわけじゃないさ。ただ、うらやましいと感じるんだ。君のように自分の可愛いを追求した子が」


 可愛いを追求したファッションに、女性らしさを押し出した身なりに、先輩がうらやんでるようだ。


「そんなにうらやましいなら、先輩も可愛い服着ればいいじゃん」

「できないから、うらやましいのさ」

「できないってなんですか? かっこよくなくちゃいけないから? なんで、自分の気持ちに嘘ついてんの。木野くんへの気持ちには正直なのに、中途半端っすね」


 先輩に向け、ギャルっぽく小悪魔に、あざ笑うような冷笑を向けた。


「……君に、何がわかるのさ」


 どっと低い声で、先輩は鋭い視線を向けたが。

「わからないです。わかろうともしないですし。あーしは木野くん以外の人間に興味がないですから」

「そうだね……」


 鳩島先輩は背筋をピンと伸ばし、凛々しく細剣を構えた。

 その刹那、空気が変わった。

 澄んだ風が渦を巻くように流れると、先輩の細剣はまた青く光る。しかし鮮やかに輝いた細剣からは強い殺気を感じとり、宙にプラズマのようにチカチカと小さな発光が巻き起こった。 


 僕は察した。また、地面に大穴が空くような、強烈な一撃必殺を繰り出すつもりなのだと。


「これで終わりにしよう。ボクの感情のありったけを、味合わせてあげる」


 それに対抗するように、猫俣さんは腰を低く構えると。両手の爪が、金色に輝きだした。


「いいよ、あーしが負かしてあげる」


 猫俣さんからも背筋がぴりつくような殺気を感じた。

 ギラギラと輝く猫俣さんの爪。その発光が一気に強まると、光の粒子がかさを増すように、爪が膨張して大きくなる。

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