森の探索
森の中を、できるだけ音を立てないように進む。
途中、地面に転がっている石を拾い集める。
袋もないし両手で持てる分だけだが、ないよりは役に立つだろう。
川の音は確実に近づいている。
もう少しで水面が見える距離まで来たとき、別の音が聞こえた。
「ゲギャギャッ! ギャッ!!」
「ギャー!!!」
甲高く、短い叫び声。聞き覚えがある。
ゴブリンの声だ。
しかも、複数。
争うような音も混じっている。
木の幹や枝が軋む音、何かが地面を抉る音。
……近づくべきか。
正直、怖い。
だが、ゴブリンだったらもしかしたら共闘できるかもしれない。
その場合は、今後その争い相手と一対一で戦うよりは圧倒的に有利だろうし、絶好の安全に経験値獲得するチャンスだ。
音のする方向へ慎重に近づく。
木々の隙間から、小さな広場のような場所が見えた。
そこにいたのは——角の生えたウサギだった。
体長は1メートル近く。後ろ足が異常に太く、額から1本の角が生えている。
そして、その角に、すでに二体の子ゴブリンが串刺しにされていた。
動かない。完全に死んでいる。
残った一体の子ゴブリンが、血だらけになりながら、必死に棍棒を振って抵抗している。
角ウサギは低く構え、次の一撃を狙っている様子だ。
どちらも血まみれで、息も荒い。
長引いた戦いなのだろう。
……介入するか。
明らかに死んでいるゴブリンと血まみれの2体。心臓がうるさく鼓動し、手は震える。
だが、腹の奥で、別の何かが疼いた。
昨日感じた、殺戮衝動だ
経験値だ。
レベルを上げろ。
強くならなければ死ぬ。
そして、何より——逃げたとしても、今後一人であんなやつと戦わなければならないという恐怖。
石を握り直す。今が絶好のチャンスだ。
木の陰から、できるだけ静かに体勢を整える。
最初の一投。
石は角ウサギの横を大きく外れた。
二投目も、地面に落ちた。
全然あたらねぇ。。
焦る。ただ、位置がばれないように隠れながら移動する。
ウサギの意識が正面のゴブリンに戻ったところで三投目。
今度は、運良くウサギの側頭部に当たった。
「ピィッ!?」
角ウサギが小さく悲鳴を上げて、一瞬体勢を崩す。
その隙を、子ゴブリンが逃さなかった。
血の付いた棍棒を振り上げ、角ウサギの横顔に思い切り叩き込む。
ウサギがのけぞる。
今だ。
僕は木陰から飛び出し、地面に落ちていた血まみれの棍棒——おそらく死んだ子ゴブリンが使っていたもの——を掴み、角ウサギの背後に回り込んだ。
振り下ろす。
鈍い音がして、棍棒が角ウサギの後頭部に食い込んだ。
角ウサギが大きく揺れる。
子ゴブリンも、もう一度棍棒を叩き込む。
連続で打撃を受けた角ウサギは、ついに体勢を崩した。
そのあとはもうぐちゃぐちゃだった。
小ゴブリンは爪を立てながら首に齧り付き、僕はためらうことなく、何度も何度も強く振りかぶる。
呼吸を荒げながら、腕がパンパンになろうとも動かし続けた。
遂に限界を迎えたとき角ウサギは動かなくなっていた。
【ホーンラビットを撃破。経験値を18得ました。】
【レベルが3から5に上がりました。】




