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【恋人物語】 «男女比が狂った地獄みたいな世界で頑張ります»   作者: 三代目焼きそば定食


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8/10

隣の君



『メッセージの着信 カイ・リュート』


『ヤマトくん、今どこかな?(´・ω・`)』

『もしかして…まだ、補習中?(´;ω;`)』


『もう終わったよ、ちょっと、一休みしたくて、外をブラブラしてた』

『カイは?』


『部屋で勉強中(≧∇≦)b』


『マジか、流石カイ先生』

『次の定期試験でも、オナシャ〜ッス!』


『了解!(*´∀`)』

『もうすぐ夕食だから、一緒に行こ(。>﹏<。)』


『わかった、すぐにカイの部屋に行くから、ちょっち待ってて』


『うん!待ってるね!(-ω☆)キラリ』



視界内に、邪魔にならない程度に映し出される表示を切り、

俺は深く息を吐く、


「はぁー………、マ、ジ、で、癒されるわぁー……」


流石カイ、俺の心のオアシス、俺の唯一の天使、

もう、一生一緒にいてくれ、何でもするから、お願い。


完全に日も落ちたなか、

教室に向かいながら、俺は自身の想像以上に、疲れている自分に嫌でも気付かされる。身体も気分も、とにかく重い…なんか、俺だけ重力3倍くらいになってね?地球が嫌がらせをしてね?


午前中は、ゲーム授業の後、ナガレと取り巻き連中相手に、フルボッコ祭り。


その後は、ドS女王、シスター・アサと楽しいSMプレイ…じゃなかった、イジメ?シゴキ?ほとんど犯罪だよ!バカ野郎!なトレーニング。


そして、さっきのアレだ…


「濃すぎんだろ…胃もたれするわぁ…」



ちなみに、この世界の通信技術は、体内のナノマシンによって成り立っている。これに関しては星力は関係なく、ナノマシン自体の機能だ。


俺の中にある過去の知識、それのインターネットを使用した機能は全て、デバイスもなしで使用できる。

通話も、メッセージも、ネットワークの構築も、データベースへのアクセスも、その他諸々、意識を向けるだけで、脳内のナノマシンが全て処理して視界内に表示してくれる。


俺個人の感想を言わせてもらえば、脳内に、勝手に俺の意思を汲んでくれる、物言いわぬどころか、顔も声もわからぬ、便利な誰かが住みついているのと全く同じだ。

つまり多重人格だ。


最初はマジで慣れるのに苦労した。いや、苦労したなんてモノじゃなかった…それは、地獄としか言えない


だって俺の中では、こんなのもう超能力でしかない、科学技術というより、ただの魔法としか思えなかった。


とにかく、訳がわからない故の「恐怖」


これはナノマシンの話だけではなく、この世界の全てに対して俺が最初に思ったことだ。



それもこれも全て、俺が3歳の時に、


ある朝、目が覚めれば突然


「ある男のクソったれな記憶」


が上書きされてしまったせいだ。


異世界転生とでも呼べばいいのだろうか?

過去のクソ野郎の記憶では、そう呼ばれていた「ジャンル」

それなのかも知れない。


その中では、それを体験した主人公達は、皆、一瞬で適応し、ハツラツと生きていた人達ばかりだったが…


俺はそうなれなかった。


はじめて、それを自分が体験したとき、俺の中に生まれたのは…


恐怖


しかなかった。


考えてみて欲しい、それまで、たった3年とはいえ、ヤマト・リュートとして考え、感じ、生きてきたのだ。


それが、はい、今日から貴方は別人です、知識も常識も人格も、今までの貴方はゴミ箱にポイッです!と言われても、怖いとしか思えなかった。


自分は誰なのか?自分は何なのか?この世界は何なのか?


この世界はもしかしたら…


ただのクソ野郎が気持ちよくなりたいが為に…


勝手に見てる都合のいい…


末期の夢ではないと、誰に証明できる?


目を閉じたその瞬間、全て消えて無くなる事はないのだと、誰が保証してくれる?


だって、実際、




3歳だった「ヤマト・リュート」は消えてしまった




怖くて、怖くて、怖くて、どうしようもなかった。



だから、子供頃の俺は、自分の中にある「ある男のクソったれな記憶」に縛られ、

この世界の常識に適応できず、しょっちゅうパニックを起し、過呼吸や、気絶など、ありとあらゆる、重度の精神的障害を発症した。


後に、シスターの1人に教えてもらえたが、俺の保健室への隔離措置が真剣に検討されていたらしい、まぁ、当然の対応だ。


そんな、手の施しようがないほど壊れた俺を、救ってくれた人が、


「カイ・リュート」だった




ピンポーン

パタパタ

ウィーン


「ヤマトくん、補習、お疲れさま」


「……天使……」


「えっ?なに?なに?なにか言った?」


「ああ、いや、待たせてゴメンな」


「全然!もう、行ける?」


「カイが良ければ?」


「うん!僕は大丈夫」


「んじゃ、食堂に行こう」


そんなやり取りの後、俺達は教室にある食堂へと到着した。

食堂は、バイキング方式となっていて、各自で好きなモノを、好きな量、よそう形だ。

テイクアウトにも対応していて、自分の部屋や友達の部屋で食事を済ますことも許可されている。至れり尽くせりだね、本当にありがたい。


「うーーん」


「………」


「うーーん」


「………」


「うーーん」


やっぱり、何かの鳴き声みたいだよな…小さくてカワイイ系のやつ、癒されるわぁ。

山と積まれた、和洋中その他、様々な料理を前に、カイは先程から真剣に悩み続けている。

そんな横で和みながら待つ俺。

ゆっくりとした、いつもの俺の大好きで大切な日常だ。


料理に限らず、カイはこういった、自分の好きなモノを自分で選ばないといけない事が、少しだけ苦手で、いつも、ちょっとだけ他の人より時間がかかってしまう。


俺は、このカイを待つ時間が大好きなのだが、本人はそれを結構気にしてしまっている。

だけど、俺からすれば、それも美点にしか思えない。

それだけ真剣に考えてくれるのだ、作ってくれたシスター達だって、なんなら料理された食材だって報われるだろう。…何より、鳴き声がカワイイしな。


なのに、ああ、


「…おい……アレ……また……」


「あぁ…本当………せよなぁ…」


「……きだろ……マジ…なぁ…」


ヒソヒソと、ドブみてぇな悪臭を感じる汚らしい囁きさえなければ、本当に最高で完璧なディナーなんだけどなぁ!!


俺はまず、カイが気づいてしまっていないかを確認する、


「うーーん」


よし!カワイイ!

次に悪臭の発生源に目を向ける、アイツらか…


サマラ・リュート、

ナーラー・リュート、

ハシバミ・リュート、


ナガレの取り巻き連中の三馬鹿だ。俺達を見ながら三人で固まってヒソヒソ嗤っている。

俺は反射的にナガレの姿を確認したが、あいつは食堂にはいない様だった。


さて、それでは…カイからは見えないように注意しつつ、


バカ①、サマラにはヤの付くご職業なみの、メンチをきる!


はい、冷や汗ダラダラかきながら、静かに俯いて、不味そうに飯をモソモソと食べ始めたので、俺の勝ち!


バカ②、ナーラーにはシャクレた顎を強調しながら、上腕二頭筋の盛り上がりをアピール!


はい、明後日の方向見ながら、咳払いして、青い顔しながら、口元押さえ席を立ったので、俺の勝ち!


バカ③、ハシバミには無表情の口パクで「尻の穴に、手ぇ突っ込んで、奥歯ガタガタいわすぞ」と伝える!


はい、ナノマシンの機能で、口パクを正確に読み取った奴は、涙目になって頭を何度も下げているので、俺の勝ち!


そして、食堂に似つかわしくない悪臭は、元から除菌されたのだった。


奇跡のロックンローラー、ナガレがいなければ、三馬鹿なんぞ、こんなもんだ。

アイツらは、いつも、ナガレが無抵抗の俺を一方的にボコるのを、ビビリながら、眺めてるだけだもんな。


自慢ではないが、俺をボコれるのなんて、この狭い世界では、

ナガレ・リュートとシスター・アサしか存在しない。


…アレ?2人もいれば十分多いか?

つーか、人を簡単にボコるのはどうなの?普通に犯罪だよね?…やっだ!何ここ!治安悪い!


「ヤマトくん?どうしたの?」


「いや…こういうの、どこに訴えればいいんだろうなぁ…ってな?」


「??」


料理を選び終えたカイが、可憐に首を傾げた。うん、カワイイ。


午前中もそうだったが、ナガレとその取り巻き連中は、カイの選ぶ遅さを理由に、彼に因縁をつけ、ダル絡みを行う。

というよりも、カイを不当に非難したくとも、できるポイントなど、そこしないのだ。


星力量はぶっちぎりの1位。

座学のテストでも1位。

体育は少し低いが、それでも中の下。

ゲームの成績は、持ち前の星力量にものを言わせた、ゴリゴリのゴリ押しで何とかなってしまう。

性格は、見ての通り、だ。


こんなん因縁をつける方が、苦労して頭を捻らなきゃならん。


「あっ、放送が始まるよ!」


「ん?…あ、ああ、そういえば…今日だったっけ」


料理を運び、食堂に用意されたテーブルについた時、対面に座ったカイが、ウキウキした顔で教えてくれる。

なので、思考を「教室放送」に向けた瞬間、視界内にウィンドウが表示され、そこに1人のシスターが映し出される、


映し出されたシスターは

肌は黒、髪はシルバー、目は濃いパープルで、知性を感じさせるフレームレスの眼鏡かけている。

齢は、やっぱり美人なので判断が付きにくいが、40代くらいだろうか?他のどのシスター達より確実に上なのが、何とか分かる程度だ。

とにかく全身から、知性と厳粛さが迸り、何もなくとも頭を下げてしまいそうになる女性である。


そんな彼女がゆっくりと笑みを浮かべながら口を開き、言葉を発する、


「素敵な私達の皆々様!ごきんげんよ〜!!皆々様の事が、もう、食べちゃいたいくらい、愛しくて愛しくてたまらない…」




「シスター・モエだぞっ♡きゃは♡」




先人達の偉大さを痛感する日々です。どうしよう…とりあえず、ぼちぼちやってみます

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