第4話「救いを求めた先が地獄だった」
ギルドの窓口に、アルトは走り込んだ。
「ミラベルさん! 助けてください!!」
ミラベルは書類から目を上げ、完璧な微笑みを浮かべた。
「おや、どうしました?」
「どうしたじゃないですよ!? 昨日、骨を十七回折られました!!」
「でも全部治りましたよね? 問題ないでしょ?」
「そ、そういう問題じゃないんです!!」
アルトは窓口に両手をついた。
「あの三人、解散させてください。僕、一人で魔王倒せます。たぶん」
「たぶん、では困りますわ」
「じゃあ一人増やしてください。普通の人を! 常識のある人を!!」
「う~ん、常識のある冒険者は、あなたのパーティには来ませんよ」
「なんでですか!?」
「あなたが強すぎて仕事がないからです」
ミラベルは書類を一枚、窓口に置いた。
「アルト様のパーティ、先日の討伐報告を見ましたよ。ゴブリン三匹に対して有毒爆発聖光、でしたか……。周辺の魔物が半径二キロから消えたそうです」
「それ、僕のせいじゃないです……」
「そうなんですか? ——それにしても」
ミラベルが眼鏡を押し上げた。
「ガードが足りないようですね」
「……は?」
「あなたを守る人員が、まだ足りない。あれだけの火力があって、防御担当がいないのは危険です」
「十分すぎるくらい危険なんですが、方向が逆なんですが!? 攻撃の補充ではなくて!?」
「追加しますね!」
「聞いてますか!?」
ミラベルはすでに別の書類を取り出していた。
「ご安心ください。今度は攻撃しない人を選びましたので」
「……本当ですか?」
「ええ。守るだけです」
「……それは、普通では?」
「きっとお気に召しますよ」
にこり。
アルトの背筋に、冷たいものが走った。この笑顔を、知っている。パーティ結成の日に見た笑顔と、まったく同じだった。
「ミラベルさん、一つだけ聞いていいですか」
「どうぞ!」
「なんで僕だったんですか。勇者、他にもいましたよね?」
「いましたよ」
「なんで僕を選んだんですか?」
「う~ん、とね。耐久値が高かったので」
「……最初から壊れることを前提にしてたんですか!?」
「いえ、壊れません。その前に治るので」
ミラベルが微笑んだ。
「アルト様は死にません。ですから、何をしても大丈夫なんです!」
「大丈夫の基準がおかしいんですよ!」
「ご安心ください」
「……何をですか?」
「全員、あなたのことを本当に大切に思っていますよ」
「そうかもしれないですが、そうかもですが……。今は、それが一番怖いんです!!」
ミラベルは何も答えなかった。ただ微笑んだだけだった。それが何より怖かった。
「ミラベルさん」
「はい?」
「さっき紹介するって言った人。その人、絶対おかしいですよね?」
「ご想像にお任せします」
窓口のシャッターが、静かに閉まった。
◇◆◇◆◇
「泣きつくのは今日の午前中、と見ていました。少し早かったですね」
ミラベルは手帳に「想定より十二分早い」と書き込んだ。
「ガードが足りないようですね。——もちろん、最初からそのつもりでしたが」




