第2話「有毒爆発聖光、誕生」
森の入り口で、ゴブリンが三匹。
初陣にはちょうどいい、とアルトは思った。思った、が。
「参ります!」
「先手必勝!!」
「データ収集、開始っす!!!」
三人が同時に動いた。
アルトが口を開くより早く、セレスティアが祈りを捧げ、純白の光が膨れ上がる。フラムがフラスコを三本、無造作に放り投げる。リプレがベルトから手のひらサイズの鉄球を取り出した。
「ちょっと待って、ゴブリン三匹ですよ!? 僕が剣で——」
「邪魔をしないでください、アルト様!!」
「危ないっす、下がってて!!」
「データが乱れる、余計な事しないでっ!!!!」
全員に遮られた。ちょっとひどくない?
光と液体と鉄球が、ほぼ同時にゴブリンへ向かった。
次の瞬間、何かが混ざった。
聖光がフラスコの薬液を巻き込んで変色し、鉄球の爆発がそこに火花を散らした。轟音。紫と金と橙が混ざった、見たことのない色の爆発がゴブリンを——そして半径十メートルを——飲み込んだ。
煙が晴れた。
三人が、互いを見た。
一瞬の沈黙だった。
「……聖光に干渉してきた。あの爆発、起爆タイミングを計算していましたね」
フラムを見る、セレスティアの目が細くなった。
「聖光の波長を読んで薬液を選んでたっす。反応が速すぎる」
リプレが口笛を吹いた。鉄球を指先でくるりと回しながら、フラムを見る。
「アーティファクトの起爆精度、誤差0.3秒以内。独学にしては……」
フラムが手帳から目を上げて、リプレを見た。
三人が、ほぼ同時に小さく息を吐いた。
「……なかなかやりますね」
「……認めたくはないっすけど」
「……次は邪魔をしないように」
褒め合っているのか牽制しているのか、判断がつかなかった。
アルトは立ち上がった。全身が白く光っていた。ステータス画面を確認した。
HP:999999。MP:999999。防御力:1200。
「……なんで初戦でもう四桁なんですか?」
「バフの複合効果です」フラムが手帳を見ながら答えた。「聖光と薬液と爆発エネルギーが同時にあなたの体を通過したので」
「通過したんですか、僕の体を!?」
「ええ、三回ほど」
「痛くなかったですよ?」
「だから問題ありませんわ!」
「問題の意味が違います!」
セレスティアがアルトの全身を検分するように見回した。
「傷がありませんね!」
「ないですね」
「では予防の追加を!」
「なんで!? いりません!!」
「念のためです!」
「念のためにも要りません!!」
「万が一のためです!!」
「万が一も要りません!!!」
リプレがクレーターを覗き込んで、何かを拾い上げた。ゴブリンの欠片らしきものだった。
「消し飛び具合が均一っす。次は角度を変えてみたいっすね~」
「次はないですよ!!」
「でも次の依頼、もう受けてあるっすよ」
「勝手に受けないでください!!」
アルトは剣を見た。鞘から一ミリも抜いていなかった。ぴかぴかだった。
フラムがフラスコに何かを書き込みながら、独り言のように言った。
「有毒爆発聖光。……いい反応だったわ」
「名前つけないでください!!」
「もう記録しました、ふふふふ……」
◇◆◇◆◇
「三属性の同時干渉、予想通りです」
ミラベルは手帳に丸をつけた。その隣には、今日の日付より三ヶ月前に書かれた数値があった。ぴたりと一致していた。
「次の項目へ、参りましょう」




