表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/16

第14話「魔王城が、癒やしパークになった」

 ダルクが泣き止むまで、十分かかった。


 その間、四人はアルトに追加の処置を施していた。ブランがスケジュールを管理し、ノワールがアルトの逃走を無言で防いだ。ゴードンはダルクに干し肉を差し出した。ダルクは受け取った。


「……お前は何者だ?」

「ゴードン。元傭兵だ」

「なぜ傷だらけなんだ」

「ヒールしてもらえんのだ」

「味方にか?」

「ああ、味方にだ」

「……私より不幸かもしれん」


 二人が干し肉を食いながら、遠くを見た。アルトは複雑な気持ちになった。


 その時だった。


 余ったバフエネルギーが、暴走し始めた。


 フラムが最初に気づいた。


「……あ」

「あ、じゃないです、何ですか」

「投与量の計算を、少し間違えました」

「少し?」

「三倍ほど」

「少しじゃないです!!」


 聖光が壁に染み込み始めた。薬液が床を伝って石に吸収された。アーティファクトのエネルギーが空気中に拡散した。ヒルダの盾から余剰魔力が漏れ出した。


 城全体が、白く光り始めた。


 石壁が柔らかくなった。床が温かくなった。崩れかけていた天井が修復され、代わりに謎の草花が生え始めた。玉座が溶けて、大きな寝椅子に変わった。拷問部屋だったと思われる一角が、気づいたら温泉になっていた。


「何が起きてるんですか?」

「回復エネルギーが城の素材と反応しています」 フラムが手帳に書き込みながら言った。「建材の質が変性して、全体が癒やし効果を持ち始めています」

「止められますか!?」

「止め方がわかりません!!」

「わかってから、安全性を確かめてから、ヒトに投与してください!」


 一時間後、魔王城は原形をとどめていなかった。


 外壁は白く輝き、堀だった場所に花が咲き、尖塔から温かい湯気が立ち上っていた。内部は全室が柔らかい光に包まれ、どこに座っても疲労が回復した。元拷問部屋の温泉からは、かすかに聖光の湯煙が漂っていた。


 ダルクが城を見渡した。長い沈黙の後、言った。


「……私の城が」

「申し訳ありません」

「癒やしパークになっているのだが……」

「……なっています」

「……悪くない」

「よかったですね」

「よくない!」 アルトが叫んだ。「よくないですよ魔王さん! あなたの城ですよ、ここ!」


 ダルクが寝椅子に深く沈みながら、目を閉じた。


「三百年ぶりに、肩が軽い」

「それは、よかったですね」 セレスティアが穏やかに微笑んだ。

「魔王城に癒やしパークを作った聖女を褒めていいのか、俺は?」 ゴードンが呟いた。


 ブランが手帳に書き込んだ。ノワールが出口を塞いだ。


 アルトは温泉を見た。白い湯煙を見た。花の咲いた堀を見た。


「世界、救えましたか、これ?」

「魔王が無力化されましたので、救えたと思います」 ブランが答えた。

「城が癒やしパークになったことは?」

「所詮は誤差です」

「……たぶん誤差じゃないですよ」


◇◆◇◆◇


「癒やしパークへの転用ですか、想定内ですね」


 ミラベルが手帳をめくった。魔王城の設計図があった。現在の姿と、ぴたりと一致していた。


「バフエネルギーの暴走も、建材の変性も——全て、計算の内ですよ、フラム様」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ