二泊目♪ 初めてのくちびるの感触♪
「おかしいなあ。
入学式のときはちゃんと一人で来れたのに?」
口元に人差し指をくっつけて小首を傾げてみるけれど?
入学式は年老いた同居人の玄さんに付き添ってもらっていたことはとっくに忘れてる♪
「お腹すいちゃった!
玄さんが作ってくれたご飯を食べちゃおっかなあ♪」
ぐぅ♪
「おなかのかわいい音に、ごほうびあげなきゃね!」
意気揚々と出かけた陽和だけど、自分でお弁当を作る気合いはない!
スクールバッグに入れたバスケットを開けると?
「サンドイッチだ!」
サンドイッチを一切れと、もう一切れ。
両手に持って歩き食い♪
一口ずつもぐっともぎゅもぎゅ♪
「うっま〜♪
さすが玄さん。
料理人でもないのにおいしい〜!
もうひっとっくちっ♪
あいたっ!」
「きゃあ!?」
ふにゃんとやわらかい、初めてのくちびるの感触をお互いに感じつつ♪
住宅街の曲がり角でアスファルトに転がる二人!
「痛たたた……
ごめん! 大丈夫!?
サンドイッチを意地でも離さない感じでうつぶせで倒れてる!?
こぼれそうになったハムに飛びついてくわえてる!」
ギリギリセーフなスライディングでハムをホームスチール?
「だって〜。
わたしの朝ごはんと昼ごはんなんだぽん」
「ぽん? もんと聞き間違えた?
ほら、手を貸して」
滑らかな白い手に引かれる健康的な元気なおてて♪
「ありがとう!
お礼にサンドイッチ食べる?」
ぐいっと食べかけ♪
「いらんわ!
くっきり歯形がついたサンドイッチを差し出すな!」
「おいしいよ?」
もう一度食べかけをぐいっと♪
「左手のもいらん!」
「ん!」
食べかけを再びチャレンジ♪
「もっかい右!?
食べないからね!?」
「そこらへんの草とバッタのサンドイッチ、おいしいのにな〜♪」
食パンに挟まったこんがり甘々イナゴの佃煮がたっぷり♪
サクサクカリカリ食感と香ばしい香り♪
エビのような味がする日本の古き良き郷土料理だったり♪
そこらへんの草は?
つくし、よもぎ、ドクダミ、オオバコ、ふき、ふきのとう、たんぽぽあたり?
ドクウツギ、トリカブト、ドクゼリなどなど。食べるととっても危険なものもいっぱいあるので専門家に聞いてね♪
「原型がくっきりはっきりすぎる!
そんなもんを食わそうとするな!
ていうか……さっきの感触ってもしかして……」
ポッと赤らむ真っ白ほっぺ♪
「やわらかかったね!」
「やわらか……ふわ!?」
口元をおさえる白い手♪
「ねえねえ。あなたのスカート汚れてない?」
サンドイッチの最後の一口を放り込んでバッタをむしゃむしゃしながらしゃがんでる。
ピカピカおろし立ての制服がくすんでる♪
「え! あ〜、転校初日に転ぶなんて……
あなたは大丈夫?」
「ん〜? 大丈夫だよ?
わたしも汚れちゃったかな?
久しぶりの登校、ピカピカで行きたいよね!」
「久しぶり?
見せてご覧なさいよ……
スカートがめくれてパンツ見えそう!
イチゴに気をつけて!
ていうか!
でっかいしましましっぽのアクセサリーが生えてる!?」
「ぽん!? 見ちゃダメぽん!」
くるんと短いスカートの中に隠すけどもう遅くない?
「なにそれ?
しっぽのアクセサリーをおしりにつけるなんて子どもじゃないんだから。
同じ制服だし同じ学校よね?
そんなの外しなさいよ!」
太いしましまもふもふをギュッとつかんでぐいっと!
「痛っ!」
「取れない? えい!」
「痛った〜い!」
少し涙目。スカートの上からしっぽの付け根をさすりさすり♪
「痛いって、もしかして接着剤でつけてるの!?
って、こんなことしてる場合じゃないし!
約束の時間に遅れちゃう!
わたしは今日が初登校なんだけど、もしかしてあなたも転校生?
だったら一緒に行くわよ!」
「うん! 一緒に行くよ!
なんとかバレなかったみたい!
ラッキー!」
くるっと背中を向けてスタスタ♪
「なんのこと?
そっちじゃない!
なんで来た道を戻るの!?」
「えへへ〜。
間違えちゃった!
実は迷子になっちゃったんだよね」
「そうなの?
じゃあついてきて?」
次の曲がり角♪
「ついてきてって言ったのに、なぜ右に!?
まっすぐだから! 左に行くな!
もう! 手を繋いで!」
白い手にきゅっとつかまれる元気な手がぬくぬくあったか♪
「ありがとう!
手を繋ぐなんてママ以来……なんだか恥ずかしくなっちゃうなあ。
へへへ。とっても優しいね」
口元に手を添えて物憂げな瞳とほんのり赤らむ柔らかほっぺ♪
「な、なんでもじもじ赤くなってるのよ!
ほら! 時間がないから行くわよ!」
「そっか! じゃあ急がないとだね!
むふ〜!
わたし、こう見えて足が速いんだよ!
引っ張ってあげるから!」
ぐいっと引っ張る手と全速力な脚力が元気いっぱい!
「あ! こら! 抜かすな!
そんなに速くないし、そっちじゃないし!
あっち!
迷子が道案内しようとしないで!?」
ピタッと止まってそそそと後ろに下がってみたり。
「ごめんね〜!
そうだ!
まだ名前を言ってなかったよね!
わたし陽和! 綾樫 陽和!
よろしくね!」
「自己紹介まだだったわね。
久遠よ。
ところで、あなたのその茶髪ってくせっ毛?
髪の毛が二ヶ所も丸く盛り上がって、何かの動物の耳みたい」
「あ、これ〜?
髪の毛じゃなくて耳だよ?」
「耳? もしかしてかわいそうな子?
面倒だけど……しょうがないわね。
こっちだから、いらっしゃい!」
導く白い手が優しさにあふれてる?
「わ〜い♪
友だちできた〜♪」
「友だち認定はさすがに早くない!?
でもそうね。
初めての友だちか。
ドキドキしちゃうかも!?」
そんなこんなで!
九十九女学園高等学校に到着!
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン♪
「今日のホームルームは終わりです〜。
まだ帰らないでくださいね〜。
注目して〜。
転校生をご紹介しまぁ〜す。
どうぞ〜」
ゆりゅゆりゅっとおっとりな先生の声に誘われて♪
ガラッと開けて黒板の真ん中までスタスタしてからピシッと気をつけご挨拶♪
「はじめまして。
明日から皆さんとご一緒させていただきます。
ヴォルフ 久遠です。
日本のことはわからないことだらけですが、ジャパニ〜ズ文化には興味があります。
いろいろ教えてください。
よろしくお願いいたします」
スカートをつまんで持ち上げて。ぺこりと優雅にカーテシー♪
「ヴォルフさんはおうちの事情でヨーロッパやロシア、中東、アメリカを転々として、日本に帰ってきたばかりの美人さんで〜す。
お母様は貴族のご出身、みなさん憧れのセレブ生活です〜。
だけどお家の都合で一人でお引越ししてきました〜。
皆さん、仲良くしてくださいねぇ〜。
はい、拍手をどうぞ〜」
クラスの女子「すっごい美人!」
「ミックスだよね?」
「シルバーブロンドすご!」
「天然かな!?」
クラスの女子全員ざわざわ!
パチパチパチパチパチパチっと盛大拍手!
「それともうひとり〜。
入学式以来から初登校のクラスメイトの〜。
綾樫 陽和さんで〜す。
今日から皆さん温かい目で迎えてあげてくださ〜い」
「入学式以来からひきこもってました〜!
生あったかい目でぬくぬく甘やかしてください!」
ふんわりゆるゆるビシッと右手を上げてご挨拶♪
「自分でひきこもりって言っていいの!?」
「ほんとのことだし、別にいいけど?
ご紹介にあずかりました!
陽和って呼んでください!
皆さんのこと、一人も知りませんけど仲良くしていたことにしてください!
なんなら学園のプリンセスでもいいです!」
キュピ〜ンと光る二つの瞳♪
「なんで!? のっけから要求が激しい!
頭のゆるいプリンセスだからしょうがないわね?」
「早速ですが!
仲良しクラスメイトの一員としてお願いがあります!」
「仲良しってまだ一分しかたってないわよね?」
ぐるりとクラスの女子を見渡して?
ビシッと一言!
「わたしの旅館で働け!」
「いきなり命令口調!?」
「はいは〜い。
先生、働きたいです〜」
「はい! 即戦力採用します!」
先生の柔らかいほんのりピンクな手をギュッと握ってぶんぶん♪
揺られてたぷたぷもゆっさゆさ♪
「せめて労働内容の確認しましょうよ!?」
「そんなわけで、アルバイト募集のチラシを掲示板に貼っておくね!
正社員もオッケーだから!
和食のフルコースや割烹料理ができる人は大歓迎!」
いつの間に用意をしていたの?
教室の掲示板に瞬間移動な速さで画鋲でピン!
「女子高生でそんな料理できる子はいないと思うけど!?
料理学校ならともかく、ここはお嬢様女子高よね!?」
真面目そうだったり?
気が強そうだったり?
メカが得意だったり?
不思議女子だったり?
鋭いおめめだったり?
席についているのはいろんなタイプのかわいいお嬢様JK♪
「それじゃあ、バイバ〜イ!
連絡待ってま〜す!」
教室の扉を開けてシュタっと右手でバイバイ♪
「帰るんかい!」
「あ、先生は連絡します〜」
廊下に顔だけ覗かせて背中を見送ったり。
「先生、副業していいの!?」
そんな二人を後にして?
廊下を走る陽和の手には葉っぱの束が握られている。
葉っぱでなにをするのかな?




