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一泊目♪ 女子高生の心は忘れない♪

「むはは〜。この世界の幸せはすべてわたしのものなのだ!」


王城のバルコニー。王冠をもふもふ頭にちょこんと乗せて♪

高らかに笑う女子高生なプリンセス♪

能天気なドヤ顔になぜかひれ伏す老若男女がいっぱいたくさん♪


「まずは!

回ってない高級特上お寿司を一万人前!

霜降り国産和牛のステーキを一万人前!

最高級天然物の特上うな重を一万人前!

わたしの前にずらりと並べるのだ!」


たらり。

暑い夏の陽射し。お昼の太陽を受けてキラリと光る雫がねっとりしてる♪


「じゅるり。とってもおいしそ〜。

みんなでいっぱい食べようね〜。あ〜ん」


にこにこもぐもぐ♪

にこにこもぐもぐ♪

老若男女と肩を並べて大食い早食い大競争♪

お皿に残る最後の一個!

脂がのった極上大トロまぐろが輝いている♪


キランと光る野獣の眼差し♪


「お箸なんてお上品なものは使わないのだ!

手づかみで口に入れてこそニッポンの粋!

とりゃあああ!」


誰よりも疾く!

誰よりも獰猛に!

少女の健康的な指先が鋭くしなやかに伸びていた!


どっすん。


「むにゃ。大トロおいし〜♪」


ふかふかベッドから落ちた少女が手にしたものをはむはむと食んでいる♪

革の香りがかぐわしい♪


「むー。ふわあ。あれ〜? お寿司は?」


口の中に突っ込んでいたものがポロリと落ちる。

光る雫がねっとりべとべと♪


「なんだっけこれ?」


それはテーブルの上に置いてあったもの。寝ぼけてつかんだもの。


九十九つくも女学園高等学校。

発行日と今年の年度が一致した学生証。

汗ばんでしっとりしたパジャマ姿の少女と顔写真が同じ能天気なもふもふ笑顔♪

茶色い頭の上に二つ。なんだかにょきっとまん丸なふくらみが?


学生証に記された少女の名前は綾樫あやかし 陽和ひわ

高校一年生の女子高生だったり♪


「あ! わたしの写真だね! 初々しくて可愛いね〜」


寝ぼけた目をこすってから学生証に写る自分の顔を見てにまにま。ちょっと照れくさそう♪


「そっかあ。高校生になってからもう2ヶ月!

ママ! わたしは立派な引きこもり生活をエンジョイしているよ!」


窓を見上げると太陽はそこそこ高いところに届こうとしている。

つまり朝はとっくに過ぎている。

入学式以来。一度も学校には登校していなかったり♪


きゅるるる。


「可愛い音が鳴ってるね。お腹がすいたことを知らせてくれる可愛いお腹にご褒美をあげないとだね!」


すくっと立ち上がってすぽんとパジャマを放り投げる。

お菓子の袋とか散らかったお部屋がさらに充実♪

壁に吊り下げられた女子高の制服に着替える陽和。

セーラーカラーの両端に小さなリボンがあしらわれたセーラー服が初夏に涼しく見える?

引きこもりでも女子高生の心は忘れない♪


「おっ顔をあっらおう♪」


とんとんとんたん♪

ちょっと軋む古い階段を駆け降りて最後はジャンプ♪

ぎしっとする板間が壊れそう?

歴史を感じる洗面台の蛇口をクイっとひねってお水がジャバー。

びしゃびしゃバシャバシャ♪

両手でやさしくお顔を洗顔♪

洗顔はぬるま湯がおすすめです!


「んー」


ぽたぽた顔が濡れて目が開けられない陽和。

タオルを探して右手と左手が迷子中♪


「タオルどこ〜?」

「ほらよ」


ふぁさっと両手にのっかるふかふかもふもふ清潔タオル♪


「ありがと!」


ゴシゴシふかふかもふもふ♪


「さわやか爽快だよ!

よだれの後も綺麗さっぱり今日もプリティだね!」


鏡に向かっていーっとむにむに♪

ほっぺをぷにぷにもふもふ♪


「いっしっし!

またこんな時間まで寝てたのかよ!

そんなんじゃ隠り世(かくりよ)にいる先代女将に笑われるぜー」


宙に浮いている白くて細長〜い毛玉が陽和の頭の上にちょこんとお座り♪


「あー。いっちゃんがまた意地悪言う!

毎日毎日、食っちゃ寝してるオコジョに言われたくないよお!」


「あ! またオコジョって言ったな!

俺はイタチ! 飯綱イヅナだ!

あんなかわいいだけのオコジョといっしょにするなよな!

大体にして陽和だって食っちゃ寝だろ!」


陽和の頭からぴょこんとジャンプ。目の前でくるくる空を泳ぐいっちゃん!

イタチって言うけどもふもふ毛色は白いし、耳は尖ってるし、ふかふかしっぽはギザギザ。


「いっちゃん。かわいいよ!」


にこにこにこにこプリティ笑顔♪


「え? そうか? まあな!

かわいさにかけては俺様の右にも左にも出るものはいないからな!」


くねくね照れ照れ白いもふもふが真っ赤っか♪

オコジョかわいいもっふもふ♪


「お腹すいた〜。げんさ〜ん。朝ごはんちょうだ〜い」


古びた木板の廊下をててっとパタパタ一直線。


「おい。かわいいって言ったばっかりなのに変わり身早すぎないか? 待てよ!」


すいっとふわっと宙を舞う白いもふもふ♪


げんさん、おはよう!

ぼろぼろのほうきで掃き掃除、おつかれさまです!」


裏玄関の入り口からサンダルをつっかけて飛び出して!

陽和の視線の先には?

ヨボヨボしわしわ白髪のおじいちゃんの姿。

首にぶら下げた緑の手拭いが亀甲模様。


高層ビルに囲まれた趣のある細い小道を竹箒で掃き掃き綺麗さっぱり。


「おお〜。朝から、ではないのう。そろそろ昼から元気じゃのう。

陽和ひわちゃん。おはよう」


「玄さん。玄さん。ご飯ある? お腹すいちゃった!」


制服の裾とキャミソールをめくって両手でお腹の素肌をぽんぽんぽんぽこ♪

白いお腹が奏でる空っぽ腹鼓のいい音色♪


「それなら食卓に用意してあるよ。たんまりお食べ」


指で指し示す先には?

古びた建物に古びた看板が下げられている表玄関。


「ほんと! 玄さんの手作り、毎日ありがとう!

わ〜い。いったっだきま〜す」

「まだ食い物ないじゃんか!」


エアご飯を口いっぱいに頬張ってる♪


「心頭滅却すれば心眼でもご飯がおいしいのだ!」


「そんなわけあるか! まあいいけどさ。俺も腹空いたし早く行こうぜ」

「そうだね! 食卓にレッツゴー! いっちゃんも一緒に食べようね!」


そんなこんなで!

裏玄関から台所にもふもふレッツゴー♪

食卓に置いてあるバスケットを発見。


「楽しみ〜♪ んん? あれれ? いっちゃん。開かずの扉がおかしくない?」

「んあ? なんだこの光?」


古びた居間の奥にある扉。

二人が注目する古い古い木の扉の隙間から漏れ出る光が揺れている?


「なんだろね? んー? なんだか夢があふれた冒険の香りがするよ?」

「冒険てなんだよ?」


「そう。それは誰も知らない不思議な世界……。

扉の先に広がるマロン!」


手にひらに肘を置いて顎に手をかけて思案顔。

キュピ〜ンと光る鋭い眼差し♪


「よし! 無視しよう!」

「無視だな! めんどくさいしな!

それより早く食べようぜ。腹減ったし」


「そうだね! どれどれ〜?」


バスケットに手を伸ばしてみると?


「んあ? 封筒が乗ってるよ? 開けてみよう!」

「俺にも見せろ!」


ぺりぺりっと封を開けると?

水彩で描かれた山査子さんざしの絵付けがかわいい便箋に美麗な筆文字がスラスラっと書かれてる。


「どれどれ? 先代女将からの手紙じゃんか。相変わらず達筆だな」


陽和の瞳に映るあったかい言葉の数々。

それは希望に満ちた未来への贈り物♪


「……ママ。わたし……旅館を……旅館、九十九つくもを復活して繁盛してみせるよ!」


実はあんまりちゃんと読んでないけれど?

胸に手を置いてから高々とガッツポーズ!

メラメラ萌える瞳が生ぬるい♪


「いっしっし!

陽和には無理じゃね〜!」


イタチなオコジョの瞳が疑わしい♪


「いっちゃん! わたしは決めたよ!」

「なにをだ〜?」


ダダっと二階の自室に駆け上がってスクールバッグをかっさらう。

食卓に戻ってご飯?の入ったバスケットをスクールバッグにぐいっと♪


「いっちゃん! わたし行ってくるね!」


「俺の飯は!?」


お腹をぺこぺこにしたイタチなオコジョを後にして!

颯爽と廊下を走ってる♪


「んっん〜〜〜♪

すっごい快晴!

いい天気だね!

今日は記念すべき脱引きこもり!

もう10時だけど高校生活初登校!

よ〜し! がんばるっぽん!」


青空に握りこぶしを掲げる女子高生♪

さっきも外に出ていたのに?

天気の様子にまるで気づいていなかった♪

いつも気持ちは新鮮♪

初夏の陽射しにセーラーカラーの両端にある小さなリボンが煌めいている?


「おお〜。張り切っとるのう。

陽和ひわちゃん、とうとう学校に行くことにしたのかい?

道に迷わんようにの」


げんさんは心配性だなあ!

迷子になんかならないから大丈夫だよ!」


「ほんとか〜?

泣きべそかいて戻ってくんじゃねぇの?

いっしっし!」


裏玄関の入り口の脇に置かれたたぬきの置物の上に座るイタチなオコジョ♪


「いっちゃん、いじわるばっか言う!

ママ、今日からちゃんとがんばるね!」


裏玄関の内側に顔だけのぞかせて。

シューズクローク棚に置かれたデジタルフォトフレームに声をかける♪

やさしく微笑む和服姿の女性の姿がそこに♪


「それじゃあ、行ってきま〜す!」


扉を閉めて第一歩!


ずべん!


「いっしっし!

さっそく転んでやんの!

尻のそれ、見つかんなよ!」


「む〜。わかってるもん!」


細い路地を抜けて、歩道に出る前に振り返る。

高層ビルに囲まれた趣のある細い小道。

石畳が敷かれた小道の先には、歴史を感じる古びた木造の建物が佇んでる。

表玄関には九十九つくもと彫られた趣のある天然木の看板が下げられていた。

都心の高層ビルのど真ん中にあるにもかかわらず、やさしい穏やかな陽が差している。


隠り世(かくりよ)で見ててね、ママ」


確かな決意を胸に大きく息を吸い込む!


「絶対、ママの旅館を復活してみせるんだから!」


二時間後!


「道に迷っちゃった♪」


どうなるの?

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