十八泊目♪ 乙女の秘密が見え隠れ♪
「わたしばっかり心配してバカみたいじゃない!」
「「わ〜い♪」」
やっぱりぶつぶつ文句を言いながらズカズカ大股で進む久遠ちゃん♪
追いかける陽和とお姫様が手を繋いでルンルン気分に息もぴったりもふもふスキップ♪
「いっしっし!
気楽にだらけるのが一番だろ!
久遠よう。もっと肩の力抜けよな!」
ふわふわ宙を浮いて先頭の久遠ちゃんに並んだり♪
いっちゃん実は気遣い上手?
「いっちゃんがわたしの心配してくれてる!
とってもうれしい〜♪」
「うわ!? いちいち抱きつくな!」
むぎゅっともきゅもきゅもふもふ♪
「ところでいっちゃん?
表通りから続く小道に入れば旅館が丸見えじゃない?
お姫様を狙った犯人や護衛の騎士たちが捜索にこないかしら?」
いまさらな疑問だけど大事なことだったり?
「んあ? ああ。そんなら問題ないぜ?
小道も含めて旅館の敷地全体に人払いの結界が張ってあるからな。
結界を破られでもしない限り侵入されないから大丈夫だぜ!
いっしっし!」
入りたくても入れない!
見つけたくても見つけられない!
そんな不思議な空間です♪
「人払いの結界?
なるほどステルスシールドみたいなものね。
それだと視覚操作だけになるわね。
それとも認識阻害……
いえ。阻害するだけなら侵入できるわよね?
ていうことは意識に働きかけて立ち入りを抑制してるってこと?」
あごに指先を添えてぶつぶつぶつぶつ神妙真面目な久遠ちゃんがとっても凛々しい♪
「久遠ちゃん? なんだかとっても裏の世界に生きてる久遠ちゃんの本性が隠せてないよ?」
指をくわえて困り眉で聞いてみる♪
「……いけない。
うっかり裏稼業のクセが出たわ。
え? ……陽和!?
気づいてたの!?」
久遠ちゃんのびっくり顔にびっくり♪
いままでで一番のびっくりかも?
「だっていろいろ丸出しだったよね?
わたしを助けてくれたときもスカートひらひら丸見えだったよ?」
陽和を飛竜から助けた狂風吹き荒れる崖の上では大事な乙女の秘密が見え隠れ♪
「どこを丸出しかしら!?
たしかにわたしの魔狼銃に魔狼盾も見せてたわ!
いままで黙っていてくれていたことの方が不思議なくらいよね!?」
「久遠ちゃん……人は誰にも言いたくないことや知られたくないことがあるものだよ」
気遣う眼差しに聖母のような輝きを感じてみたり?
「陽和……ありがとう。
ずっと気づかないフリをして気を遣っていてくれてたのね。
そうよ。
誰にも知られてはいけない裏の仕事は正義の殺し屋。
とうとう知られてしまったけれど……
その気持ちがとてもうれしいわ」
ぐすりと潤む曇り顔の久遠ちゃんの瞳が切なかったり。
「だってめんどくさいからね!」
たぬき耳に人差し指を突っ込んで聞いてはいなかったり♪
つまりまだ裏の仕事は秘密?
「感動の涙を返してくれないかしら!?」
ぽたりとこぼれそうになっていた涙を人差し指でぬぐって!
ビシッ!
雫が壁に突き刺さるほどに手刀を振るってみたり♪
殺し屋稼業は飛び道具なら涙も暗器になったりして♪
「いっしっし!
安心しろよ久遠。
こっちの世界じゃ暗殺業なんて珍しくもないからな!
そうそう。ここの結界はそんじょそこらの暗殺屋くらいじゃ入れない代物なんだぜ!」
「いっちゃんもそんなこと言ってごまかしてくれるのね?
そう。それなら安心していられるわ。
……
……
……
ちょっと待て。
それならお客がこなくて当たり前よね!?」
「んあ? そうとも言うな!
いっしっし!」
「陽和!? とっても重大な事実が判明したわよ!?」
「ん〜? 人払いの結界のことなら知ってるよ?」
人差し指をくわえて困り眉で小首を傾げてみたり♪
「知ってたんかい!
どうやって借金を返すつもりだったのかしら!?」
さっきのびっくりよりももっとびっくりな顔してる?
「え〜? 妖怪や神様からがっぽり?
妖怪の妖怪による妖怪のための隠れ宿だからね!
もちろん神様も大歓迎!」
「そのセリフならもう聞いたわ!
そういう意味だったのね!?
玄さんは電話番って言ってたけど!?」
「いまどき妖怪も神様もスマホやAIくらい使ってるよ?」
「たしかにわたしも持ってるわ!
だけど神様も!?
AIまで!?
現代文明にだいぶ毒されてるわね!?
それにしたって借金返済期限まで二ヶ月もないのよ!?
ローンを組むにしたって毎月の返済ができないじゃない!」
「いっしっし!
それも日本に戻らないと結局できないけどな!
まあ心配すんなって!
こっちの進む時間とあっちの進む時間はうまいこと調整されるからな!
それにこっちの奴らはほとんど魔力持ちで日本で言うところの妖怪みたいなもんだぜ!
それによ。人払いの結界をいじれば普通の人間も入れるようにはなるぜ?」
「その方がいいね!
ぬくぬく露天温泉に入ってもらってみんなにママの旅館で癒されてほしいな!」
「陽和の気持ちは分からないでもないけど?
それだと追っ手の問題もあるし、いろいろ大変じゃないかしら?」
「そんなことない!
みんなからお金をもらってよりよくがっぽがっぽだよ!」
「どういうよりよくかしら!?」
「みんなもぬくぬく幸せ! わたしの懐もぬくぬくほかほか!
ウインウインだね!」
「欲望が全開なウインウインね!?」
「いっしっし!
稼ぐ方法ならほかにもあるぜ!
異世界はお宝の山だったりするからな!」
「なんですって?
……
……
……
ちょっと待て。
お宝の山!?
安心安全の老後の貯蓄にプラスできるかも!?」
久遠ちゃんの頭の中でたぬきの皮算用が始まってる♪
老後は温泉であたたまった体をお金のうちわであおいでみたり?
「金銀財宝とかかな?
そしたらあれだね!
請求書の束もなんとかできるよ!
異世界でお宝をざっくざく獲得して!
人類借金補完計画の始動だね!」
陽和ももちろんたぬきの皮算用♪
ゴールドラッシュなざっくざく♪
「いつの間に人類の問題になったのかしら!?
陽和の計画に異論はないわ!
なんなら落ちぶれたヴォルフ家の復興までできるかもしれないわね!
俄然やる気が出てきたわ!
お姫様!
まずは温泉を一緒に楽しんでマブダチになりましょう!」
久遠ちゃんの瞳がキュピ〜ンと怪しく光ってる♪
お姫様はずっとにこにこ黙ってました♪
聞いてた?
「うわ〜。久遠ちゃんの瞳が真っ黒に見える〜」
「いっしっし!
どっかの誰かに似てきたな!」
「は!? 誰のことかしら!?」
驚愕の事実はいつも唐突♪
「マブダチですわね?
マブダチといえば民の間では唯一無二の親友と、メイドのミインと近衛騎士長のシェイムから聞いたことがあります。
ぜひマブダチになってください!
わたくしのことはフィーと親しみを込めてお呼びいただけないでしょうか!」
友達と言われただけで友達になっちゃう感じ?
「心の底からの要望がビシバシ伝わってくるわね?
フィー様。わたしは久遠でいいわ!」
「久遠さん。様はいりません。呼び捨てでお願いします!」
「そう? じゃあフィーって呼ぶわ」
「お父様とお母様以外からの初めての呼び捨て!
これがお友だち!
わたくしとっても感動ですわ!」
思いもかけない心のドキドキにハートがきゅん♪
「わたしはフィーちゃんて呼ぶよ!」
「ちゃん! なんて甘い響きなんでしょう!
ありがとうございます! 陽和さん!」
お姫様の敬称は?
フィー様。フィー王女。などなど。
庶民な振る舞いとお友だちに憧れてたり♪
「おいフィー。俺はいっちゃんでいいからな!」
「おいですわ!
そんな呼ばれ方も初めてのこと!
なんてうれしい連続の嵐!
はい! いっちゃん!」
「いっしっし!
ゆるゆる簡単でいいな!」
そんなこんなで!
天然露天温泉にもふもふ大移動!
「なんて素敵な風情なんでしょう!
趣のある岩と苔むした落ち着きのある佇まい!
四方を石造りの伝統建築に囲まれて、まるで独り占めするかのような秘密の空間!
見上げれば青空に飛ぶ野鳥に飛竜!」
「危ない単語が聞こえた気がしたけど!?
襲われたりしないのかしら!?」
「王都は王立軍に護られておりますからご安心くださいませ♪
なによりも世話好きな侍従たちの目がない天然の温泉にのんびりと気楽に浸かる幸せ!
なんて素晴らしい香り!
滑らかにしっとりと潤うお湯の肌触り!
わたくしの神がかった美しさがさらに魅力にあふれてしまいそうです!」
感動でときめく新鮮なロイヤルピーチがぬくぬく温泉ウェーブにぷかぷかちゃぷちゃぷ揺られていたり♪
「つまりそっくりさんなわたしの微の美も神ってことだね!」
「まったくその通りですわ!」
お風呂に肩まで浸かってパチンと両手を合わせる陽和とフィーちゃん♪
侘び寂びイチゴとロイヤルピーチがほかほか仲良し♪
「なによ。パイタッチなんかしてさ?
二人の世界ってわけかしら?
フィーも誰かさんと並んでなかなかね?
顔が同じだと心もゆるいのかしら?
まあでもお気に召してよかったわ。
このお風呂はわたしが汗水流して毎日お掃除してるのよ!」
ちょっとやきもち久遠ちゃん♪
それは尊い労働の汗と涙の物語!
「久遠ちゃん! 大変なお風呂掃除をいつもありがとう!
こうやってお風呂を楽しめるのも久遠ちゃんのおかげだよ!
はい! ハイタッチ!」
両手を掲げる陽和の手がわきわき♪
「陽和……
初めて労ってもらった気がする!
そ、そうね。
それじゃあハイタッチ♪」
照れ照れもじもじな久遠ちゃんの両手をすり抜けて?
「ぽん♪」
甘々メロンにもふもふぽんぽんわきわき♪
「わふん!?
なにするの!?」
「パイタッチ♪」
「〜〜〜〜〜!
わお〜〜〜ん!」
大爆発に真っ赤っかな美声が露天の青空にこだまする♪
「むはは〜。照れた遠吠えがかわいいね♪」
「や、やかましいわ!」
そんな二人を前にして?
感涙の涙を流すお姫様がふるふるしてる?
「なんて素晴らしいお仕事なんでしょう!
このような神々しい空間を創造されるなんてまるで神職ですわ!」
モップでごしごしもきゅもきゅする姿は神々しい?
「大げさもいいとこじゃないかしら!?
だいぶ盛ってきてるわね!?」
「いっしっし!
実際、この温泉は神様が作ったもんだからな!」
「「へ?」」
いっちゃんの思いもかけない言葉に言葉を失う久遠ちゃんとフィーちゃんだけど?
「先生もお風呂にきました〜。
冷たいスイーツも携帯冷蔵庫でしっかり冷やして持ってきましたよ〜」
タオルを巻き巻きしたゆっさゆさ夢楽ちゃんの手にはゴロゴロカートな小型の冷凍庫が引かれてる♪
「先生早くないですか!?」
「スイーツの下拵えは毎日してますから〜」
「先生いつもありがとう!」
「い〜え〜。お風呂のお掃除は久遠ちゃんにまかせっきりですから〜」
「スイーツ担当は夢楽ちゃん!
お風呂掃除は久遠ちゃん!
食っちゃ寝はいっちゃん!
その他もろもろは玄さん!
女将はわたし!
旅館、九十九が大復活だね!」
「まだ始まってもないわ!
でも待って?
フィーがお客様なら旅館が再開したってことになるのかしら?」
「まあ! それではわたくしが記念すべきお客様第一号ということですね!
とっても感動です!
なんて喜ばしいことでしょう!
王族であるわたくしの保養地としてこれからも堪能させてくださいまし!」
「もちろんだよ!
お金ががっぽがっぽな予感だね!」
目の前にいるそっくりさんなお姫様のバックに見える金貨の山は幻かな♪




