十九泊目♪ 夢の食っちゃ寝生活がんばるっぽん♪
「さっきは御礼はいらないって言ってなかったかしら?
せめてそういう表現はもう少し柔らかく包んで隠しましょうよ。
でもなるほど。
ロイヤルファミリーや高貴なお客様を相手にする隠れ宿は特別感があっていいかもしれないわね?」
「それもいいかも!
だけど誰でも大歓迎だよ!
わたしの旅館は癒やしを求める人々の憩いの空間!
あやかしJK女将の異世界隠れ宿だね!
働かなくても商売繁盛!
夢の食っちゃ寝がたったいまから本格始動だよ!」
「働け!
おんなじことを何度も言わすな!
……第一王女のフィーが口コミで広めてくれたら貴族を相手に商売が軌道にのること間違いなしだわ。
それにほんとに神様の創った温泉ならいい宣伝効果になるわよね?」
「こっちの神様もお客さんとしてくることになるかもだね!」
「……神様、神様ってやたら出てくるけどほんとにいるのかしら?」
「もちろんだぜ?
日本にも神様いっぱいいるだろ?
こっちの世界も変な奴らがいっぱいいるぜ〜」
「神様を変ってどうなのかしら?」
「そんなことはいいからさ!
夢楽ちゃんのスイーツを温泉に浸かりながら食べようよ!」
「「「食べる!」」」
「はいは〜い♪
いっぱいありますからね〜。まずはお一つずつどうぞ〜♪」
ポータブル冷蔵庫を開けるとひんやり冷え冷え♪
ゆさゆさ夢楽ちゃんからみんなの手にアイスクリームリレー♪
「甘〜い♪ 凝縮された乳の味が濃厚だね!」
「乳って言うな。ミルク味でしょうが」
「どっちもおんなじだろ! まじうめぇ〜」
「これがアイスクリーム……お口の中がパラダイスです!」
「楽しんでもらえて先生うれしいです〜」
みんなでぬくぬく♪
アイスクリームのカップを片手に銀のスプーンでパクリと甘々♪
「はあ♪ 肩まであたたまりながらひんやりとした甘さが口の中にとろけるわ〜♪」
「わたくし。こんな天国のような贅沢ができるなんてまさに夢のようで……
きゃっ!」
フィーちゃんの新鮮なロイヤルピーチにアイスクリームがひんやりぽってり♪
温泉でぬくまった体温で上気するしっとりお肌にとろけるミルク♪
なんだかとっても魅惑的に輝いておいしそう?
「お風呂に落とすわけにはいかない!
もったいないオバケに祟られるぽん!」
キュピ〜ンと光る怪しい瞳!
新鮮なロイヤルピーチへと再び滴るミルククラウンにロックオン!
「きゃあ!?」
ぷにっとたぷたぷ♪
ぺろんとほんのりピンクなロイヤルピーチがお風呂にちゃぷり♪
露天に植えられている葉っぱや岩で乙女の秘密は秘密のままです♪
「むはは〜♪ 溶けかけたミルクアイスが大満足だよ〜♪」
ミルクなロイヤルピーチは食感もお味も天国パラダイス?
「なんて素敵な食べ方なのかしら……
フィー! わたしもいいかしら!?」
銀のスプーンにアイスクリームをひとすくい♪
フィーちゃんの二つのピーチにトッピング?
「ええ!? それはちょっと!?
マブダチでもいやんです〜!」
「わ〜い♪ わたしは夢楽ちゃんのゆっさゆさにしようっかなっ♪」
「ゆさゆさ〜?」
「いっしっし!
風呂に入るマナーもへったくれもねぇな!
アイスうまっ!」
「魅惑のひんやりスイーツを味わうもふもふ甘々ぬくぬく温泉堪能プラン!
もう一つのおすすめ宿泊プランが爆誕だね!」
ちゃぷちゃぷ甘々♪
天然露天温泉に浸かりながら冷たいスイーツを楽しむおすすめ宿泊プランが増えました♪
そんなこんなで♪
趣ある椅子に背もたれて、お風呂上がりで浴衣姿のみんながゆるゆるのんびり♪
旅館、九十九の伝統あるパブリックスペースでくつろぎのひとときを満喫中♪
異世界時計がカチコチカチコチ穏やかなひとときを刻んでる♪
「はあ〜♪
なんて素敵なひとときなんでしょう♪
なにもかも忘れてくつろぐことのできる時間が……
……
……
……
時間……
……
……
……
は!?
もう10日も経ってますわ!?
天然温泉の露天風呂に甘々極上スイーツ!
第一王女の激務も責務も自負も忘れさせる穏やかに流れる時間!
なんていう人をダメにするもふもふ隠れ宿の魅力!」
「わたしとおんなじようなこと言ってるわ。
うんうん。その気持ち身にしみて分かるわよ?」
「こうしてはいられませんわ!
さすがに城に帰りませんと!」
「え〜! フィーちゃん。もう帰っちゃうの〜?」
「はい。いまごろ国中が大騒ぎになっているでしょうから。
すぐに正装に着替えておいとまいたします!」
「わたしもすっかり忘れてたわ。まあ当然の判断よね?」
「いっしっし!
俺はちゃんと気づいてたぜ!
みんな遅せぇんだよ!」
そんなこんなで♪
プリンセスドレスに身を包んだフィー・リア・レーギス第一王女をお見送りするために?
従業員一同、表玄関にずらりと整列♪
並ぶ順番はいつも通り甘々スイーツの順番だったり♪
最後は渋〜いよぼよぼ玄さん♪
「命を助けていただいたことと合わせて御礼は必ず。
そしてお友だちとして再び遊びに訪れてもよろしいでしょうか?」
にっこり笑顔でフィーちゃんの両手をみんなでギュギュッともふもふ♪
「もちろんだよ!
フィーちゃんはわたしたちのもふもふマブダチだからね!」
「先生さみしいです〜」
「一人でちゃんと帰れるかしら?」
「いっしっし!
こいつも陽和と同じくらいゆるいからな!」
「もちろんですわ。王都を捜索しているだろう騎士たちにすぐにでも会えるでしょうから。
せめて……これを受け取っておいてくださいませ」
陽和の手に渡されたのは桃色に輝く大粒の金剛石!
「ピンクダイヤモンドの指輪じゃない!」
「わ〜い♪ おっきい宝石もらっちゃった!」
「あんたのものじゃないからね!?
フィー。刻印までしてある大事なもののようだけどいいのかしら?」
刻印はもしかして王家の証?
「はい。わたくしのささやかな気持ちです。
必ず御礼をさせていただくための証明です。
次に訪問させていただくまで預かっていてください」
「それなら必ず遊びにいらっしゃいね」
「はい必ず! ですがお別れはやはりさみしいです」
フィーちゃんの目尻にあふれる涙をそっとぬぐう久遠ちゃん♪
「そう……わたしもみんなもさみしいわ。
って、帰るんかい!
陽和が身代わりになって暗殺者から助けるとか!
そんな展開になるんじゃないんかい!」
「え~。そんなのやだよ?」
人差し指をくわえて困り眉♪
「嫌でもなんでもお姫様のそっくりさんがいたら定番のお約束でしょ!?」
なんだか久遠ちゃん一人で盛り上がってる?
「久遠ちゃん。アニメの見過ぎだよ?」
「そんなことはないけど!?
正義の殺し屋としての勘が外れたのかしら?
せめて大通りまでみんなで送って行きましょうよ」
「そうだね!
わたしの安全が一番にいられるところまでは行こうか!」
高々と持ち上げた人差し指を自分のほっぺに当ててみたり♪
「あんたねー。こういうときはお姫様が一番でしょうよ」
「えへへ〜♪」
照れ照れもじもじたぬき頭をぽりぽりしてみたり♪
「褒められたようなアクションをするな!」
「いっしっし!
我が身が最優先だな!」
「まあね。あれから十日も経ってるから問題ないとは思うわ。
だけど……陽和」
「久遠ちゃん?」
陽和を見つめる瞳がキュピ〜ンと怪しく輝いてる?
そんなこんなで!
石造りの高い壁に挟まれた石畳の小道を進んで!
人払いの結界を通り抜けて大通りにぽわんぽわんとみんなの姿が一歩二歩!
お姫様をもふもふお見送り!
「それでは皆様。これにて失礼させていただきます。
ごきげんよ……」
「(見つけた! その首もらったあ!)」
通行人にギョッとされながらも気にせずにっこりご挨拶するフィーちゃんの言葉が途中まで!
トス。トストストストス。
望遠眼に捉えたお姫様の白く輝くうなじに!
黒く鋭い羽根が何本も突き刺さる!
「殺った!
見失ったポイントに張ってて正解だったね。
城の奴らの騒ぎが収まらなかったから怪しいとは思っていたけどずっと潜んでいたとはさ。
これで報酬いただきだ!」
大通りの真向かいにある建造物の屋根の上で大成功を確信する黒い姿。
そして!
「へ〜。こんなところにいたんだ?
(前回と違って直後まで殺気が感じられなかったからいるかどうか分からなかったのよね)」
「誰だ!?」
黒い姿が振り返ると?
建物の側面を駆け上がって屋根に着地した久遠ちゃんの視線が犯人を射殺すように睨んで!
魔狼銃をかまえてる!
殺し屋としてのスキルと狼の知覚が暗殺成功後の油断を捉えてました!
「誰でもいいわ? あんた。もう終わりよ?」
「終わり? 姫は!?」
眼下を見下ろすと?
首に刺さったプリンセスドレスに身を包んだお姫様の姿がぼふんと葉っぱの山に変化!
「(失敗! もしや暗殺を誘われた!?)」
次の瞬間!
屋根の上から身を踊らせる黒い姿!
黒い翼をたたんで頭の先から真っ逆さまに急降下!
「鴉だぽん!」
落ちる黒い姿を捕捉して叫ぶ陽和!
黒い翼に黒い肌!
その姿はまさに鴉なベリーショートのスレンダー美少女だったり!
「ふん。姿を見られたのはまずったけど終わりなんてことはないさ!
あん? 今の声は?
なんだ! 姫ならいるじゃないか!
それでも変装してるつもりかよ!
大気迷彩」
髪の色と衣装は違くても?
他人から見たら本人認定間違いなし?
「消えた!? 逃すわけには!?」
屋根上から見下ろす久遠ちゃんの視界には黒い姿がどこにもあらず!
黒い姿が誇る望遠眼に捉えたのは女子高生な頭のゆるいプリンセス!
「いっちゃん!」
「悪りぃな! 俺の術は相手を認識してねぇと効果がねぇんだ!」
「先生のスイーツはお役に立てませ〜ん!」
陽和の隣にいる二人は見てるだけ!
「陽和! 気をつけて!」
「ぽん?」
葉っぱの山になる前のお姫様の影に隠れていた陽和の目にもなんにも見えてない!
「(ひわだかなんだか知らないが!
姫の命はあたしのものだ!
今度は確実に殺ってやる!)」
姿の見えないその手には黒い羽の刃がギラリと輝く!
「ん〜? 鴉と言えば? 光り物が好きだよね?
ぽん!」
「王家の証を投げた!?」
持っていたピンクダイヤモンドな指輪を空に放り投げると?
ポイっと宙に描くゆるゆるふわふわ放物線♪
「は!? その輝きは!?
かあっ♪」
キラリと輝く金剛石に狙いを変えて!
羽ばたく翼で進路変更!
思いもかけず迷彩解除!
空中でパシッとお宝ゲット!
「そんな単純な手に暗殺者が引っかかるな!
去れよ!
我が手に来たれ! 魔縛砲弾!」
屋根から飛び降りた久遠ちゃんが真っ逆さまに急降下しながらロックオン!
見事に命中!
華麗に着地!
「うきゃあ!?」
「捕縛完了ね?」
魔導で編まれた捕縛網に絡まる鴉なスレンダー美少女!
「いっしっし!
光る石には目がないのが鴉ってもんだよな!」
「一度ならず二度までも!
皆さん! ありがとうございます!」
ぽわんと人払いの結界を通り抜けて大通りに現れるフィーちゃん!
ずっとみんなの様子を見てました♪
「フィー様!」
「姫!」
大通りの向こうから騎士たちを引き連れて走る美少女が二人!
「ミイン! シェイム!」
「あら。話に聞いてた姫様直属の侍従長と近衛騎士長ね?
陽和? どうするかしら?」
「それはもちろん!」
「もちろん?」
「ずらかるよ!」
「いっしっし!
めんどくさいのはごめんだな!」
「それもそうね。
この鴉はどうしようかしら?」
「ん〜? わたしの隠れ宿の天然露天温泉にみんなで入ろっか!
きっと仲良くなれるよ!」
獲物に飛びつく鷹のように!
捕縛網ごしにシュピンと密着する手と体勢がまるで王子様とお姫様♪
百合が咲き誇る脳内ビジュを背景に優しくふわっと抱き上げて?
「は!? あたしをどうするつもりだ!?」
「あれ? なんだか変な匂いがしないかな?」
困り眉で小首を傾げてみたり?
「臭くて悪かったな!
あたしは屍鴉だ!
あたしだってこんなんじゃなかったいまごろもっと普通に……」
「しかばねぽん?
だったらなおさらお風呂に直行だね!
神様が創った神々しい露天温泉で清めるよ!」
「清め!? あたしをどうするつもりだ!?」
たぬきなお耳は問答無用?
あっという間にお姫様抱っこな猛ダッシュ!
「はあ。なんでそうなるかまったく理解できないわ」
「甘〜いスイーツを食べれば悪いことなんて忘れちゃいますよ〜」
「先生の頭の中もけっこうゆるゆるよね?」
「皆さん! 早く行ってください!」
騎士たちを引き留めるフィーちゃんの新鮮ロイヤルピーチがぷるぷる♪
「いっしっし!
どいつもこいつもおんなじだな!
食っちゃ寝生活復活だぜ!」
どこもかしこもゆるゆるゆっさゆさ♪
「そうだ! 今度は違う場所に転移しようよ!
久遠ちゃん! 早くしないと置いてくよ!」
「はあ!? 転移!?
待ちなさいよ!
わたしを置いて行ったらダブル女将にならないでしょ!」
大通りから人払いの結界に入ると?
石造りの高い壁に囲まれた趣のある細い小道。
石畳が敷かれた小道の先には、歴史を感じる古びた木造の建物が佇んでる。
表玄関には九十九と彫られた趣のある天然木の看板が下げられていた。
いまは都心の高層ビルのど真ん中じゃないけれど?
やさしい穏やかな陽が差している。
「旅館、九十九が異世界で大復活だね!
わたしは女将!
借金をチャラにして!
夢の食っちゃ寝生活がんばるっぽん♪」
「働け!」
たぬき耳としっぽがウキウキワクワク♪
オコジョとうさちゃんもふわふわゆさゆさ♪
狼耳としっぽをピンと張りながら追いかける姿がルンルン気分♪
鴉な美少女は大混乱?
今度はどこの異世界に行くのかな?
もふもふあやかしJKの異世界隠れ宿の魅力はまだまだこれから♪
なんだけど?
おしまいぽん♪
ここまでの実況と中継は?
陽和のママであるわたし。
綾樫 陽子でした!
雲外鏡のお姉様の神通力をお借りして隠り世からお届けさせていただきました〜♪
また皆様にお泊まりいただけますように♪
ぽん♪♪♪




