十四泊目♪ 含み笑いが止まらない♪
「俺は飯綱だからな!
人や獣の心を操るのは得意だぜ!
それが魔物やあやかしでもな!
いっしっし!」
竹の筒、篠笛をくるくると小気味よく回しながらふわふわ踊るオコジョな美少女♪
「あら〜。とっても怖そうなのがいっぱい歩いています〜」
鋭い牙とツノを持った四つ脚の獣の群れが一方向に向かってる?
「いっちゃんすごいわ!
先生! とっても危なかったのよ!?」
陽和を抱きしめたまま夢楽ちゃんに駆け寄ってさらに抱きしめる久遠ちゃん!
肉食なモンスターはゆっさゆさなうさちゃんをターゲットにごくりとのどを鳴らしてる?
「むはは〜♪」
「あらあら〜。ご心配をおかけしました〜」
ギュギュッと極上甘々特大スイカが潰れそう?
凝縮された甘々ストロベリーは問題なし?
「陽和も先生も無事でよかった……
ゆっさゆさが無傷でうれしいわ!」
「ゆさゆさ〜? 先生もうれしいです〜」
「ねえねえ久遠ちゃん? あれを見て?」
ゆりゅゆりゅを満喫しながら陽和の指差す方に首を向けると?
「ええ!?
モンスターが崖に向かってるわよ!?
ねえ! あれってなんなのよ!?」
牛のようなツノに全身に虎のような模様があるしなやかな巨体が次々と大地を駆け始めてる!
「ありゃ。牛虎の類だな。
落ちたらお陀仏だぜ。
いっしっし!」
向かうは崖の下! 死の大行進!
「いっちゃん? 死んじゃったらかわいそうだよ?
牛虎さんも食っちゃ寝できないと嫌だよね?」
陽和の瞳が悲しそうに曇ってる?
「んあ? まあな〜。
人を襲うようなやつらは退治しといた方がいいけどよ。
陽和が言うならまあいいぜ〜」
「うん! さすがいっちゃんだね!
いじわるばっかりじゃなくて優しいいっちゃんも大好きだよ!」
「う、うるせぇなあ。
じゃ始めるぜ」
ちょっとほっぺたを赤くして?
いっちゃんが舞い踊って篠笛を奏でる流麗な音色が空に響く!
ギュギュッと急ブレーキをした牛虎モンスターたちがUターン!
ほっとした顔?で森へと帰っていく!
くるくると回した篠笛を振袖に収めるいっちゃん。
とってもお見事な和の舞と演奏でした♪
不思議な獣を見送る三人がにっこり眺めていたり?
「ボケっとしてないで宿に戻ろうぜ〜?」
「そ、そうね。玄さんに起きた謎も解けたみたいだし、こんな恐ろしいところにいつまでもいられないわ!」
「今度こそみんなで露天風呂だね!」
「のんびり風呂になんて入ってられるか!
大体ここがどこかも分かんないのよ!
もしかして……地球じゃなかったりするの!?
それとも恐竜の時代にタイムスリップしたとかかしら!?」
「いいから戻ろうぜ〜」
いっちゃんは夢楽ちゃんを守るようにふわふわしてる♪
「ねえねえ久遠ちゃん?」
なんだかにまっと久遠ちゃんを覗き見るように?
「な、なによ? そんな顔して」
「助けてくれてありがとね?」
きゅるんと笑顔に感謝の言葉♪
「べ、別に! あ、あんたに死なれでもしたら日本に帰れないかもしれないからよ!」
ちょっと照れ臭い久遠ちゃんは言い訳じみてる?
「ふ〜ん? 素直じゃないなあ。そういうことにしといてあげるね?」
「あげるってなによ!?」
「知らないぽん♪」
久遠ちゃんの腕をとって肩に頬を寄せる陽和の笑顔がはにかんでたり♪
久遠ちゃんは困ったようなまんざらでもないような?
ほっぺがちょっと赤いかも♪
そんなこんなで!
本館の表玄関の中にみんなでもふもふ大移動!
渾天儀のような不思議な世界時計がカチコチカチコチ穏やかなひとときを刻んでる♪
「ひどい目にあったわ」
「むはは〜。わたしは楽しかったよ?」
「一度は食べられてもいいって悟り顔をしてたわよね!?」
「先生は怖かったです〜」
「いっしっし! それが普通だよな!」
旅館、九十九の伝統あるパブリックスペースで趣ある椅子に背もたれたみんながほっと一息。
「ねえいっちゃん。
なんだか知ってそうなことがある口ぶりだったけど……もしかしてここがどこだか分かるのかしら?」
「んあ? まあな〜。
そんじゃあよ。おもしろいもん見せてやるよ。
驚くなよ?
いっしっし!」
「おもしろいもの?」
「うわ! びっくりっぽん!
びっくりびっくりびっくりびっくり!」
「やかましい!
まだなんにも起こってないわ!
そうね。オバケじゃないなら見てみたいわね?」
「先生もいろいろ気になります〜」
「そこに時計があんだろ? その隣の壁にぶら下がってる札を見な〜」
渾天儀のような不思議な世界時計が和の趣ある飾り棚に置かれてる。
古びた壁には金属のようなプレートがいくつも吊り下げられていて?
渾天儀とは? 太陽や月、天体の動きを再現して観測する機構のことだったりします♪
「なにかしらこれ? 数字や記号に文字が羅列された札がいっぱいぶら下がってるわよ?
なんだかとっても不可解な文字ね? ちょっと光ってる?
陽和。時計は元々あったけど、こんなのいままでなかったわよね?」
壁にぶら下がるたくさんの金属の札をいぶかしく睨みつけてみたり?
「ん〜? 覚えてないかな?」
人差し指をくわえて困り眉で小首を傾げてみたり♪
「自分の旅館のことくらいしっかり把握しておけ!」
「いっしっし!
開かずの扉に入ったから現れたんだぜ!
陽和は知らねぇと思うけどよ?
一番右上の札がいいか?
時計の下に札を入れるのにぴったりな隙間があんだろ?
入れてみな」
渾天儀の台座には不思議な世界時計が三つも並んでいて、台座には札を入れるのにちょうど良さげなスリットがあったり。
「ここに入れるとなにか起こるのかしら?」
一番右上の札を手に裏表をくるくる確認しながらスリットの穴を覗いてみたり?
「いいからやってみろって!
いっしっし!」
「……陽和。女将のあんたがやんなさいよ」
ずいっと札を陽和の胸元に差し出しす久遠ちゃんのお顔がなんだかこわばってたり?
「久遠ちゃん。もしかして怖いのかな?」
「べ、べべべ、別に怖くないわよ!
だけどほら! できる女将ならこれくらいなんてことないでしょ!」
焦る言葉はなによりの証明だったり!
「むはは! できる女将にまかせるぽん!
とりゃあああ!」
「わ!?」
久遠ちゃんの手から渡された金属の札をパシッと横殴りに奪い取って!
高々と天高く掲げて!
「よいしょっぽん♪」
そろっとゆっくり丁寧に優しくスリットに差し込む陽和!
「案外お行儀いいわね!?」
「壊れないようにしろよな〜」
壊れると危ないってことがあるかもしれない?
「あれれ? なんか動き出したよ?」
「え? ほんとだわ!」
陽和と久遠ちゃんが見下ろす時計に動きあり!
「輪っかが激しく回ってます〜?
星でしょうか〜?
なにかを示す小さな球体が消えたり増えたりしてます〜?
これは……なにかの座標を特定するための装置かも〜?」
ゆっさゆさ注目する夢楽ちゃんの目の前で!
淡く発光する金属のようないくつもの輪がぐるぐると回転して!
中心にある複雑な図形が記された金属のような球体も不規則に回ってる!
「さすが理科の先生ね!
わたしにはさっぱり分からないわ!」
「ねえねえ? 輪っかも丸っこいのも浮いてるよ?」
「ほんとだわ! よく見るとどれも繋がってないじゃない!
どれも宙に浮いたまま動いてるわ!?
どうなってるのよ!?」
それぞれのパーツと本体を繋げる軸のようなものがないのに固定されている?
「いっしっし!
時計も見てみな〜?」
三つある世界時計の文字盤を見てみると?
ギリシャ数字で記されていた文字が変形して知らない文字や数字に置き換わって?
時を刻む時針と分針と秒針に、月齢と日付の表示も目まぐるしく変動してる!
「なによこれ!?」
「あれ〜? ゆっくりになってきたっぽん?」
激しく稼働していた機構がゆっくりのんびりピタッと動きを止めて?
「さっきとまったく変わってます〜」
輪っかの数も球体の数も位置も、中心にある球体の図形も、時計の指し示す情報もすべてが変わってる。
中心にある時計だけが、カチコチカチコチ穏やかなひとときを刻んでる♪
「いっちゃん? とても不思議には違いないけれど、これがどうかしたのかしら?」
眼鏡をキランと光らせてクイっと、ぶつぶつと訳のわからない科学用語?をつぶやく先生を尻目にする久遠ちゃん。
「いっしっし! 表玄関から外に出てみな!」
「え!? 外!? さっきみたいなでっかいトカゲとかいないかしら!?」
不安げな久遠ちゃんをほっといて?
「えい!」
ガラッと両開きの引き戸を勢いよくドバンと開き切る陽和!
「勝手に開けるな!
また恐ろしいモンスターにさらわれても助けてあげないわよ!?」
「え〜? それはやだなあ」
振り返って久遠ちゃんの瞳を困り眉で見つめてみたり?
だけど久遠ちゃんの視線は陽和のいる先に釘付けだった。
「どうなってるの!?」
駆け出して表玄関の外に飛び出すと!
高層ビルではなくて、石造りの壁に挟まれた石畳の小道が続いてる。
小道の先に行き交う人々の不思議な姿が小さく見えたりして?
「久遠ちゃん! 行ってみようよ!」
「わふ!? ちょっと待ちなさいよ!」
「先生も〜」
「いっしっし! 先走ってしょうがねぇな〜。俺も行ってやるよ!」
いち早く駆け出した陽和のたぬきしっぽを追いかける久遠ちゃんの狼耳が揺れている。
後に続く小走り夢楽ちゃんもゆっさゆさ♪
ふわふわ宙を舞ういっちゃんの含み笑いが止まらない♪
そんなこんなで!
みんなでもふもふ大移動♪
「むはは〜! 絶景だね!」
「うわあ。とっても素敵です〜」
「久しぶりだぜ!」
小道から躍り出た先にある光景にみんなの胸がドキドキ踊ってる♪
息を飲むほどの甘々スイーツがいつも通り横並び♪
「嘘……ここってもしかして……
異世界よね!?」
異世界ぽん♪




