十二泊目♪ お座りくうんな脳内久遠ちゃん♪
「あ〜。玄さんだあ。
しばらく見ないから隠り世に行ってたかと思ってた!」
よぼよぼおじいちゃんとのすれ違いの日々。
実はずっと目にしてなかったかも?
「わたしたちのためにいろいろ働いていてくれてたのに、しばらく顔を合わせていないからってひどいわね!?
わたしもずっと見てないからあれ?って思ってたけどさ!」
久遠ちゃんも実は怪しい?
「先生は〜。学校に行ってる時間とキッチンに立ってる時間が長いので〜」
申し訳なさそうな下がり眉とゆさゆさがゆらゆら♪
お仕事だからしょうがありません!
「いっしっし!
さっき便所で見たって言ったばっかじゃねぇか!」
見てたのはいっちゃんだけだったり。
さすが警戒心の強いオコジョだったり?
「元気でよかったね!
そういえばバッタのサンドイッチも食べてないや!
久遠ちゃんもバッタレスだとさみしかったよね?」
「バッタはさみしくなんてないわ!」
夢楽ちゃんのスイーツが大満足だからバッタさんはもちろん食べてない♪
「玄さんが元気なら!
夢楽ちゃんのスイーツと玄さんのバッタで夢のコラボスイーツを食べたいよね!」
極甘イチゴのショートケーキ。
甘酸っぱいアップルタルト。
濃厚メロンのババロア。
ゆさゆさ丸ごと味わう特大スイカなどなど。
バッタをまぶしたトッピングはいかが?
「絶対遠慮しておくわ」
静かな口調だけど真剣な眼差しで断固拒否!
「いっしっし!
案外カリッと香ばしくてうまいかもだぜ?」
「あの〜? 玄さんお亡くなりになってませんか〜?」
ゆらゆらゆりゅゆりゅ手をあげる夢楽ちゃんの視線が釘付け。
後ろを向いてお茶を淹れようとしていた玄さんの背中にご注目?
「はい? 先生までおかしなこと言うなんてらしくないですよ?」
「でもほら〜」
「でも? ぶふっ!」
夢楽ちゃんの指差す先に視線をずらす久遠ちゃんのしっぽがもふもふビビッとぶっとい!
「玄さん背中になんか刺さってる!」
「いっしっし! 輝いてるな! 何本もあるぜ!」
「これは! ビジュを狙ったニューファッションかな?」
玄さんの背中にギラリと光る謎の物体が数本!
「んなわけあるか!
これとってもおっきい獣の牙じゃないかしら!?
狼とか虎とか肉食獣の類いよね!?」
「それにしちゃでっかいよな〜?」
「とってもエキセントリックなアクセサリーだね! 流行の先取り最先端?」
玄さんの着物と羽織り姿にプラスされたでっかい牙はファッションリーダーの証?
「牙が刺さってる着物ファッションって流行りそうもないと思うわよ!?」
ヘビメタロックに着物なアクセントはいかがです?
「久遠ちゃんの牙はかわいいよね!」
にんまりちらっと久遠ちゃんの口元を見つめてみたり♪
「え! いやその。えと。面と向かってかわいいなんて言われるなんて照れちゃうじゃない」
ほんのり赤いほっぺに狼のしっぽとケモみみがもじもじくねくね♪
「豆柴ってかわいいよ!」
へっへっと舌を出してお座りくうんな脳内久遠ちゃん♪
「誇り高い北欧の狼よ!
それより玄さん! 体は大丈夫なの!?」
「あ〜。だいじょぶじゃね〜?」
「うんうん。よぼよぼでボケてるかもだけど、わたしたちヤングな若者よりも元気いっぱいだよね!」
ゆっくりのんびり動作はぷるぷるよぼよぼ♪
「普通にシルバーなお年寄りよね!?
どう考えても刺さってるんだけど!?
羽織りだって破けてるじゃない!
玄さん横になって!
先生! 救急箱を!
それとも救急車を呼んだ方がいいかしら!?」
「はいは〜い。どっちもにしましょうね〜」
「待って先生!」
救急箱の入った棚に手をかける夢楽ちゃんを止める陽和!
「なんでよ! きっと着物の中は血だらけよ!?」
「むはは〜。これを見るのだ!」
玄さんの着物と羽織りをつかんで勢いよく引っ張ると!
鋭い牙でビリッと切り裂かれて!
着物がはだけて右肩から半分背中が丸出しに!
「龍のタトゥー! いえ……蛇かしら?
ていうか肩も腕も盛り盛りがすごくないかしら!?
お年寄りなのに張りのある筋肉が細いようでゴリマッチョ!?」
肉厚な肩には蠢きそうなほどにおどろおどろしい蛇の紋様!
「切れてるよ〜! 切れてるよ〜!
肩にちっちゃい重機が乗ってるよ〜!
二頭が超盛り! チョモランマ!」
陽和の掛け声でポージング!
のりのりに切れてる応援はいかがです?
ボディビルダーも顔負けのナイスバルク!
「どういう掛け声かしら!?
決めポーズからの凛とした視線にドキドキしちゃう!?
実は玄さんてキリッとするととっても渋いイケジジなのよね!」
みんなに注目された玄さんの視線が鋭く異彩を放ってる!
角刈り玄さんに睨まれると震え上がるほどの任侠肌だったり?
「は!?
この醸し出す雰囲気はもしかしてジャパニ〜ズマフィアなのかしら!?
そ、それにこれは!? 亀の甲羅じゃないかしら!?」
背中に亀の甲羅を背負ってる!
「いけねぇもんを見せちまった。姐さん。こいつは黙って見過ごしてくれやしねぇですかねぇ」
ギラリと眼光鋭く醸し出す空気に往年の組長マフィアな風格が漂ってたり?
「誰かしら!? よぼよぼ玄さんに戻ったのに目つきだけ鋭いわ!
姐さんてわたしのこと!?」
気合いのポージングの後はぷるぷるよぼよぼしてました!
「亀の甲羅に牙が刺さってます〜」
「ほんとだわ! みんなで抜くわよ!」
「触っちゃいけねぇな。姐さんの白い柔肌を傷物にするわけにはいかねぇ。わしに触れると火傷をするだけじゃあすまねぇぜ」
久遠ちゃんの差し出す手をぎゅっと握りしめてから優しく下ろして手放す玄さん!
破れた着物をさらした肩に羽織り直して!
お茶を淹れるよぼよぼ玄さんの眼差しもよぼよぼ!
「完全なよぼよぼに戻ったわ!
ま、まあ刺さったままでも問題なさそうだしいいのかしら?
手紙の内容といい扉といい。よぼよぼ玄さんの背中に刺さった牙。
ふう。いまのところなにも異常は……
問題発生だらけだわ!?」
「久遠ちゃん? 一人ボケツッコミ楽しい?」
「ちょっと楽しいわ!」
「ん〜? 玄さんはどこに行ってたんでしょ〜?」
眼鏡の下のほくろに人差し指を当てて困り眉でゆっさゆさ?
「そうよ! 開かずの扉から入ってきたのかしら!?」
「陽和ちゃんたちの後をついてきただけじゃがの?」
「いつの間に!?」
「みんなプリンで楽しんどったからのう。
邪魔せんようにいつも通り表玄関から小道の端まで掃き掃除をしてたんじゃよ」
「玄さん、そんなんだから姿を見ることがないのね!?
小道に化け物でも出たのかしら!?
……ていうか玄さんて何者なの!?」
「玄さんは玄さんだよな〜♪」
「ね〜♪」
「先生も〜♪」
二人仲良くプラスゆさゆさ一人が体を斜めにるんるん三角に向かい合ってみたり♪
「わたしも混ざりたい!
表玄関ね!
外の様子が気になるわ!
行ってみましょうよ!」
ダダっと本館に繋がる廊下へと駆け出す久遠ちゃん!
足音が気になって後ろを振り返ると!
「なんで誰もついてこないの!?」
「え〜。女将だけど本格化した引きこもりは外には行かないよ?」
「俺もめんどくせ〜」
「先生はちょっと怖いです〜」
「本格化ってどういうこと!?
引きこもりの女将って自分で言うな!
そうね!
先生は危ないから待ってて!
わたし一人で行ってくるわよ!」
「久遠ちゃん!」
鋭い視線で呼び止めてみたり!
「なによ!」
「鋭い牙のあるオバケが出るかもよ?」
人差し指をくわえて困り眉♪
「やっぱり行くのやめたわ!」
手のひら返して背中をくるり♪
「そうだよね! 今度こそみんなで露天風呂にレッツゴーだね!」
「いっしっし!
肩までつかってぬくまろうぜ〜」
「そうね。わたしもちょっとツッコミ疲れたからお湯に癒されて……
って、そんなんでいい訳あるか!
命に関わることが起きてるかもしれないのに放っておけるか!
(正義の殺し屋としての勘がみんなの命の危険を知らせているわ!)」
「だけどオバケは?」
もう一回、人差し指をくわえて困り眉で小首を傾げてみたり?
「お願い。ごめんなさい。わたしと一緒にきてください。一生のお願いです」
お顔は真っ青。
狼のしっぽがしょんぼり。
ケモみみがぺったり垂れてどんよりどよどよお顔が曇ってる♪
陽和ちゃんの制服の裾をつまんで、ふわふわ浮いてるいっちゃんの着物の袖をつまんで、弱々しさを猛アピール!
ついでに先生のゆっさゆさにお顔を埋めてる♪
「先生は怖くてもかわいい生徒のためにちゃんとご一緒しますよ〜」
「いっしっし! どさくさに紛れてニヤけてんじゃんか!」
「しょうがないなあ。従業員のお願いを聞くのもできる女将のカリスマだよね!」
一人一人の重い悩みを解決するのもリーダーシップたる女将の仕事!
「ダメ女将がカリスマなんてことあるか!」
「一人で行く?」
人差し指をくわえて困り眉で小首を傾げてみたり?
「よ! カリスマ女将! できる女将はチョモランマ!」
ご機嫌取りな媚びた掛け声が切れにキレて切れている!
「むははのは〜!」
「反り返るほどにぺったんな侘び寂びの強調が慎ましい!」
「いっしっし!
俺よりちっさい凝縮されたストロベリーだけどな!」
「とっても素敵な高級スイーツです〜」
ゆりゅりゅ手を叩くほんとのチョモランマがゆっさゆさ♪
そんなこんなで!
離れ屋から本館の表玄関にみんなでもふもふ大移動!
匠な職人の手で造られた伝統と趣のある表玄関の両扉を前にする女子高生二人と着物姿のいっちゃんと教師スタイルなうさちゃん先生!
「とても立派なジャパニ〜ズエントランスよね。そういえばだけど。わたし、表玄関の扉から出入りしたことないわ」
「先生もです〜」
「わたしもだよ!」
「使用人は掃除や出迎えのとき以外は裏玄関から出入りするのが基本だからな〜」
「つまり陽和は女将じゃないってことね?」
ふふん。と鼻で笑う久遠ちゃん♪
「ぷう! わたしはできる女将ぽん!」
「それなら先に外に行ってみなさいよね? カリスマ女将さん?」
「むはは〜! できる女将の出番だね!」
両手でガラリと勢いよく!
広々大きな引き戸を開け放つと!
「うわあ♪ でっかいトカゲさんがいる〜♪
久遠ちゃんの知り合いぽん?」




