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十一泊目♪ ほっぺをむぎゅむぎゅしてみたり♪

「久遠ちゃん? 目を開けてもいいよ?」


真っ暗闇中の久遠ちゃんの世界に陽和の優しい声が届いてる?


「怖くない!? オバケはいないわよね!?」


不安と恐怖で思わず声を荒げてしまう。

両手で顔をかばうようなポーズをしているドキドキ怖がり久遠ちゃん。

ぎゅぎゅっと閉じた瞳は天の岩戸よりも頑丈かも?


「なんにもいないよ! いるのはわたし!」

「とっとと目を開けろよな〜」


二人の声の感じはいつもと同じ。


「だ、大丈夫なのね?」


そっと瞳を開けて?

両手を下げてキョロキョロ前後左右を確認してみると?


「あれ? ここって離れ屋……家の裏玄関じゃない?」


裏玄関を入ってすぐの土間には?

陽和と久遠ちゃんのローファーが二足と、いっちゃんのぽっくり下駄に、先生のフラットヒールなパンプスがきちんとそろえられている。

シューズクローク棚に置かれたデジタルフォトフレームにはやさしく微笑む和服姿の女将が写ってる。


「先生は!?」

「はいは〜い。先生ですよ〜」


あがりかまちの上でおっとり手を振る先生がほんのりゆさゆさ。


「先生! 大丈夫!?」


板間に駆け上がって先生の柔らかなもふもふをあちこちペタペタゆさゆさ♪

しっかり無事を確認しているような?

とっても満喫しているような?


「こそばいです〜。先生ならどこもなんともないですよ〜。心配してくれてありがと〜」


「久遠ちゃん役得だね!」

「いっしっし! 欲望丸出しだな!」


二人に見守られる久遠ちゃんの表情は悦びに満ちて悔いはなし!


「ええ……とっても堪能できたわ。じゃない!

ちゃんと心配してたのよ!

ていうかさっきまで居間の奥にいたわよね!

なんで裏玄関にいるのよ!

あの扉は裏玄関の扉に通じていたってことかしら!?」


なんだかとってもあたふた!

久遠ちゃんたらプチパニック?


「久遠ちゃん。お座り! 伏せ! 待て!」


シュタっとお尻を床について四つん這いに伏せる姿はお利口さん?


「わふ!」


次のご命令を待つ豆柴ワンコちゃん?


「いっしっし! 狼じゃなくて忠犬だな!」

「久遠ちゃん。いい子だね〜。よしよし」


頭をなでなで首筋をよしよしすると?

頭をスリっと狼しっぽをふりふりご満悦だったり?


「わふ〜ん♪

は!? なんてことやらせんのよ!

わたしは豆柴じゃない!」


「豆柴なんて言ってないよ?

久遠ちゃん落ち着いた?」


ぜ〜は〜してるけど?

いつもな感じで怖い気持ちはどこかにふわふわ行っちゃった?


「え? そ、そうね。

ふう。取り乱して悪かったわ。

よく分からないけど結局テレポートみたいなことが起きたのかしら?

それとも集団幻覚でここまで移動しただけ?

分からないけどなんにも問題なさそうね?」


建物に変わったところはなさそうだし?

置いてある時計の時間も問題なし?


「そうだね!

やることはただ一つ!

今度こそみんなで露天風呂!」


「働け!

借金を返すためにお金を稼がないといけないんでしょ!

それにほんとに大丈夫かどうかはまだ分からないじゃない!

ちゃんとしないとわたしはここを出てくわよ!」


「しょうがないなあ。

久遠ちゃん一人で旅館を切り盛りするのは大変だけどがんばってね!」


「お前もがんばれ!

わたし一人を働かすな!

先生だって美味しいスイーツを毎日用意してくれてるんだし、玄さんだってよぼよぼなのにしっかり掃き掃除をしてくれてるじゃない!

そうえいば玄さんはどこにいるのかしら?」


「さっき本館の便所を掃除してくれてたぜ〜」


老舗な温泉旅館だけどウォシュレットも便座ヒーターを完備な最新式!

客間には冷暖房に冷蔵庫や空気清浄機が完備だったり至れり尽くせり♪


「玄さんいつもありがとう!

とりあえずどうするか考えるために居間に戻るわよ!」


ビシッと指差す先はいつもの廊下。


「らじゃー!」

「いっしっし。俺は眺めてるだけだからな〜。応援くらいはしてやるぜ〜」

「先生はがんばりますよ〜」


そんなこんなで!

離れ屋の居間に向かってみんなでもふもふ大移動!


居間に到着してみると?


「ないわね」

「ないね!」


さっきまであったはずの開かずの扉がありません?


「いっしっし! 久遠の嫌いなオバケの仕業じゃね?

久遠! うしろうしろ!」


「きゃあ!?」


振り返るとにこにこゆらゆら夢楽ちゃんのうさちゃん耳がぴこぴこゆらゆら♪


「いっちゃん脅かさないで!?」


「ないものは考えてもしょうがないね!

お腹が空いたからなにか食べよ?」


「そ、そうね。たしかに」


「それなら〜。冷蔵庫におやつがあります〜」


「俺食べる!」


キッチンの冷蔵庫に高速ふわふわガチャリと開けると?


「プリンだぜ!」

「おいしそ〜!」

「なんだか普通のプリンと違うのかしら?」


かわいいガラスの器に入ったプリンは少し白っぽい?


「ダチョウさんの卵とオーガニックなごはんで育った牛さんのミルクで作ったんです〜」


「ダチョウのプリン!?」

「わ〜い♪ みんなで食べよう!」


それぞれプリンとスプーンを手に取って。

いっちゃんは宙に浮いてふわふわ♪

食卓の椅子に三人それぞれもふもふしっぽをするりと腰をかけると?


みんなの瞳に写る『突然ですがあなたに伝えたいことがあります』と書かれた便箋が一通。


「これってなにかしら?」

「どなたかへのお手紙です〜」

「誰だろうね?」


一番怪しい人物が一番不思議そうに小首を傾げながらプリンをパクリ♪

とろとろとろけるお顔がふにゃふにゃ♪

すかさずバクバクバクっと一気喰い!


「濃厚すぎてとろけて魂がとろけるところだったよ!

三途の川がはっきり見えたよ!

ママが手を振ってたかも!」


「俺も隠り世から帰ってきたとこだ!」


いっちゃんもプリンを一気喰い!

器に残ったプリンのかけらをぺろぺろもふもふ♪


「死ぬほどおいしいの!?

食べるのもいいけど目の前のことに向き合いなさいよね!

伝えたいことってどう考えても陽和にでしょ!

さっきまでこんな便箋なんてなかったわよね?

あら? 二枚目があるわよ?

どれどれ? やっぱり手紙みたいね?

陽和。読んでみなさいよ」


二枚目の便箋には文章がつらつらと書かれてる。

手にとって陽和に手渡そうとするけれど?


「ん〜? 久遠ちゃん読んでみて?」


口元にプリンの食べかすをつけたまま。


「だらしないわね」


白い指を伸ばしてサラッとすくってペロっとごくり♪


「久遠ちゃん……」


ほんのり頬を赤くする陽和の瞳が悩ましい♪


「どうかした?

わたしが読んでもいいのかしら?

まだプリンを一口も食べてないんだけど……」


「久遠ちゃんに読んでほしいな!」


「そうね……分かったわ。

(もしもショッキングなことが書いてあったら陽和の心が辛いわよね?)

こほん。

陽和。誕生日おめでとう。

ママはもう現世うつしよにはいないだろうけれど。陽和が十六歳に成長してくれて心からうれしいわ。誕生日を迎えたあなたには重大なことを知らせなければなりません」


「あ! わたしの誕生日って十日も前だった!」

「自分の誕生日くらい覚えていなさいよね!?」

「いっしっし!

開かずの扉が光ってた日だな!」


「開かずの扉が? 重大なこととなにか関係があるのかしら?」


「久遠ちゃん。続きを読んで?」


覚悟を決めた眼差しにごくりと息を飲む久遠ちゃんの汗がひとたらり。


「ええ。読むわよ?

旅館、九十九つくもを受け継ぐ綾樫あやかし家の歴代女将は十六歳になると一人前の女将となるために本来あるべき扉を開けることになります。わたしはなにも手伝うことができないけれど。どうか生き延びて立派な女将になってください。かしこ」


「本来あるべき扉? 生き延びて?

ねえ陽和。どういうことか……

わたしのプリンが全部なくなってる!?

ああ!? 手紙を読ませたのってそういうこと!?

わたしのプリン全部食べたわね!?」


久遠ちゃんの目の前にあるプリンの器は空っぽ!

陽和といっちゃんのお口がもぐもぐもきゅもきゅ♪

「なんのことかな?」

「俺、幸せだ〜♪」


「しらばっくれるな!

口元見ればバレバレだわ!

いっちゃんは許してあげる♪」


慌てて口に運んだから口の周りはプリンのかけらがいっぱい♪

いっちゃんにはどこまでも甘々ゆるゆるな久遠ちゃん♪


「なんのことかな?」


同じセリフをもう一度♪

さっと横を向く陽和の視線は夢楽ちゃんのプリンを狙ってる?

先生はまだ一口も食べてません♪


「せめてそのプリンのかけらを食べさせなさい!」

「むはは! わたしのプリティほっぺに攻め込むとはいい度胸ぽん!」


テーブルを乗り越えて!

口元についてるプリンのかけらをぐいぐいするほど集めてみたり♪

ほっぺをむぎゅむぎゅしてみたり♪


「ぽんじゃない! プリンの恨みを体で返しなさいよね!」


あちこちもふもふ♪

ぽむぽむぽんぽん♪


「ぽん!? うひゃひゃひゃ!

やったなあ! とりゃあああ!」


あちこちもふもふ♪

ぽむぽむわふわふ♪


「わふん!?

ちょ!? こら!?

わたしはそこまでやってないから!

こら! おい! やめろ!

あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」


どこまでも止まらない骨肉の争い!


「お前ら暇人だなあ」

「とっても平和です〜。久遠さん。はい。一口どうぞ〜♪」


小さなスプーンにぷるぷるぷるんと揺れるゆらゆらプリンとゆりゅゆりゅゆさゆさ♪


「先生ありがとう! あ〜ん♪」

「ぽん♪」


久遠ちゃんのお口に吸い込まれる寸前で横から高速でスプーンごとかっさらわれるゆらゆらプリン!

陽和の口に小さなスプーンがキラリと輝いて!


「ああ!? わたしの一口をよくも食べたわね!?」

「むはは〜! 争いの前線で油断する者が悪いのだ!」


「平和です〜」

「いっしっし!

俺たちで食べちゃおうぜ!」


いっちゃんの手には両手使いな二本のスプーン!

戦闘準備は完璧!


「みんな元気でなによりなにより。

ところで外の様子がおかしいんじゃがの?

わし、長生きがすぎてボケてしまったかもしれん」


久々登場!

あやかしかもしれないよぼよぼ玄さんが口元に人差し指を当てて小首を傾げてる!

かわいい?

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