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十泊目♪ シンクロナイズド困り眉♪

「え〜」


ほっぺをぷくっとたぬき眉をひそめて不満顔♪


「え〜じゃない!

ちゃんと働いてダメ女将は返上しなさい!」


久遠ちゃんの声がちょっと厳しい?

出会ってからいままでで一番怖いかも?


「ダメ女将……。

わたし……女将としての資格……ないのかな?」


いつもにこにこ元気満開なお顔が曇ってる。

どんよりどよどよ。

うっすら浮かぶ涙が切なくて悲しい?

そんな陽和に久遠ちゃんは想いを寄せていて?


「陽和……夢に見るほど想いが強いのは知ってるわ。

その……寝言で聞いたし。

わたしも手伝うからがんばりなさいよね!」


「そうだね!

久遠ちゃんがほとんど全部一人で働いてくれるんだもんね!」


晴れやかな笑顔が心地いい♪

どんよりどよどよはどこ行った?


「ほとんど全部!?

どうしてそうなった!?

ふ、ふ〜ん。それならわたしが女将ってことでも問題ないわね?」


「うん。いいよ!」

「いいんかい!」


ふふん。と鼻を鳴らして試すようなことを聞いてみれば二つ返事に元気いっぱい♪


「夢の食っちゃ寝が達成できれば!」


それは変わらない普遍の魂!

瞳が熱く燃えている!


「ママのためはどこに行った!?

そんなんじゃ、草葉の陰で泣かれちゃうわよ!?」


「やだ……ママを勝手に殺さないで?」


口元にきゅっと握った拳を当てて節目がちにうつむくたぬきの耳がぺたんとヒコーキ耳に。


「え? あ。ごめんなさい。

だってもう……あの世に行ってるのよね?」


なかなか聞きづらいお話だけど確認しないと分からないこともあるよね?


「うん! 隠り世(かくりよ)にいるよ!」


たぬき耳がぴんぴん。元気いっぱい天空を差す指が一本!


「はい???

(隠りかくりよって、『ジャパ〜ンのココロ』サイトによるとあの世のことよね?)」


とっても便利なニッポン紹介サイトはなんでも載ってる便利なホームページ?


「きっと元気でいると思うんだ!」

「いっしっし!

俺もそう思うぜ!」


「あ……。そう。そうなのね。

陽和……陽和はママのことが忘れられなくてあの世でも元気に生きていると思ってるのね。

あなたって能天気でお気楽でのんきで天然でゆるくておバカだけど実は健気よね」


不憫な娘を見る想いはまるで保護者になったような気持ちのようでいて?

実は低評価な現実が丸見えだったり?


「わたしはそんな風に見られてるんだね?」

「なにか間違いがあるかしら?」


ありません♪

合わせ鏡のように小首を傾げる二人♪


「そんなことより久遠ちゃん!」

「けっこう大事な重たい話がそんなことでいいの?

で。なにかしら?」


「女子高生な美少女ダブル女将もいいよね!」

「ダブルの意味が分からないわ?

美少女はまあ……い、いいかもしれないわね?」


まんざらでもない緩んだ目線と口元がうれしそう♪


「久遠ちゃんがそんなにやる気があるなんて知らなかったよ〜!

実務は久遠ちゃん!

裏の番長はわたし!」


「不良少年グループのリーダーか!

裏番て女将が表に出ないでどうする!」


「お前ら。そんなどうでもいいことばっかりしゃべってないでだらだらしてればいいんじゃねぇの〜」


いっちゃんはパブリックスペースに置いてあるマッサージチェアでウインウイン揉まれて「ふわあ♪ やべぇぜ〜♪」なんて恍惚なお顔がうっとり♪


「あ♪ そうだね。いっちゃんがそういうならくつろいじゃおっかなあ♪」


しっぽふりふり♪

野生の狼の血はどこへやら♪

豆柴ワンコがいそいそと隣のマッサージチェアに座っていたり♪


「久遠ちゃん。そんな感じで十日間ずっとだったよね?」


生あたたかい視線が生ぬるくなったコーラよりも生ぬるい♪


「は!? ついうっかり!

先生! 請求書の日付は!?

支払いはいつまでなんですか!?

あ〜♪」


とか必死な口調で言いながら?

しっかりウインウイン揉まれてうっとりだらしない♪


「え〜と〜? 期日は来月末日ですけど〜?」


「来月末日! 夏休みになっちゃう!

二ヶ月もないじゃない!

こんな大金、絶対無理だわ!

旅館を担保に借金してローンを組むしかないわよ!?」


「え〜! 旅館が取られちゃうよ〜!」


たぬきな困り眉がどこまでも困ってる♪


「情けない顔しないの!

取られないようにがんばるんでしょ!

あら? 先生? その手に持ってるのはなんですか?

手紙?」


「あ。忘れてました〜。開かずの扉がピカピカガタガタしてたので〜。

近づいてみたら封筒が落ちてきたんです〜」


「封筒? どれどれ? えーと……陽和。あなた宛の手紙みたいよ?」


「わたしに手紙? なにかな?」


陽和へ。と達筆綺麗な筆文字で書かれてる。


「開けてみないさよ。ほら」


ぺりぺりっと封を開けてみると?


「ハヤクコイ?」


青紫の花が水彩で描かれた便箋に小さく短く一言だけの一筆。


「早く来い? どういうことかしら?」


「この絵、手描きだ……狸豆の花だよね?

小さいころにいっぱい遊んだっけ」


青紫の花はタヌキマメという山野草だったり。

小さなかわいい花穂は硬い乾いた果実となって、振るとカラカラと音を立てる。

子供のちょっとしたおもちゃになったり?


「ママ!」


ダダっと駆け出す陽和の表情は誰の目にも分からなかったり。


「待ちなさいよ! 二人とも追いかけるわよ!」

「はいは〜い♪」

「んあ? しょうがねぇなあ」


しっぽをピンと野生の狼の俊敏な動き♪

ゆっさゆさのんびりうさちゃん小走り♪

宙をふわふわオコジョのしっぽはもふもふ♪


開かずの扉に向かってみんなでもふもふ大移動!


離れ屋にある古びた居間の奥に佇む扉。

みんなが注目する古い古い木の扉の隙間から漏れ出る光が揺れている。


「先生。手紙はここから?」

「は〜い。隙間からゆらっと舞い上がって先生の手の中に収まりました〜」


ゆらゆら夢楽ちゃん先生だからこそ届いたりなんてあるかも?


「開かずの扉だね!」

「開かずの扉だな!」

「「無視しよう(ぜ)!」」


くるりと背中を向けてスタスタふわふわ!


「するな! ちゃんと向き合え!

ママの手紙なんでしょ!

扉を開けてみればいいじゃない!

大体にして開かずの扉ってどういうことよ!」


「ん〜?

開けたらダメな扉?」

「そうそう。絶対めんどくさいからな! のんびり食っちゃ寝するなら無視だ!」

「そうだよね!」


「そうだよねじゃないわ!

意味を聞いたわけじゃない!

なんで開かずの扉なんてもんが離れの家にあるのよ!

誰かの黒歴史が詰まってるとか、そんなんじゃないんでしょ!?」


歴代女将の秘密が詰まっていたりとか?


「ん〜? 知らないよ?」

「先生も知らないです〜」

「どうだかな〜?」


三人そろって人差し指を口元に当てて小首を傾げてみたり?

たぬきにオコジョにうさちゃんのシンクロナイズド困り眉♪


「久遠ちゃん仲間はずれ〜♪」


ちょっと寂しい気持ちがあふれてみたり?


「仲間はずれじゃないわ!

うん。先生が知らないのは当然だと思う。

陽和くらいは知っとけ!

早く来いって書いてあったんでしょ!

なにがあるかは知らないけど……ママに会えるかもよ!」


あの世へと旅立った存在には決して再会することはできない。

久遠ちゃんだって分かってはいるけれど。

言わずにはいられなかった瞳が切ない?


「別に合わなくてもいいよ?」

「いいんかい!」


激しいツッコミもなんのその♪

あっけらかんと明るくさっぱり能天気♪


「うん! ママは隠り世(かくりよ)で見ててくれればいいの!」

「いっしっし!

引きこもってばかりでダラダラしてたら怒られるもんな!」

「そうだね!」


「ダメ女将はどこまでもダメだった!

いいわ!

それならわたしが開けてあげるわよ!

見てなさい!」


開かずの扉はなぜかレトロな洋風。

歴史を感じる装飾が施されたドアハンドルに手をかける久遠ちゃん。


「ほんとに開けるのかな?」

「めんどいことになるからやめといた方がいいぜ〜」


ドキドキな不安もあるけれど?

ちょっとワクワクしてみたり?


「開けるわ!

だけど……なにかしら?

やっぱり懐かしいわ?

ドアハンドルの手触りといい……この扉、わたしは知ってる?」


幼いころの久遠ちゃんの記憶がいま蘇る!

ガチャリと開く扉から?


『パパ〜。ママ〜。おかえりなさ〜い』

『ただいま久遠』

『これはプレゼントだよ』

『なあに?』

『これは魔導で創造された銃だ』

『久遠の生きる道をきっと助けてくれるわ』

『そうなの? パパママありがとう!』


にこにこプレゼントを受け取る幼い幼い久遠ちゃん。


「そうだわ。たしかにそんなことがあったような……」


遠い昔のかすかな記憶を不思議に思いながら!

胸に手を当てて深呼吸!

ギギギ〜っと少しずつ開く扉!


「しかしてその実態は!」

「あんた。ノリだけはいいわね?」


振り返る視線がもの言いたげなジト目だったり♪


「真っ暗だな? なんにも見えねぇぞ?」

「さっきまでピカピカしてたのにおかしいね?」


「入ってみます〜?」

「え!? 先生が一番に入るの!?」

「先生、大人ですから〜」


一番後ろに控えていた先生が小走りゆっさゆさ♪

うさちゃんジャンプで開かずの扉の中にゆさゆさぴょん♪


「消えた!? ちょっと! 先生! 聞こえてるの!?」


扉の中はシーンと静まり返って?

闇闇真っ暗視界不良1000%。


「これは!」

「これは!? 陽和なにか知ってるの!」


「事件の予感だね!」

「言わんでも分かるわ!

先生帰ってこないわよ! どうすんのよ!」


「こうなったら入るしかないね♪

いっちゃん行こっか♪」

「しょうがねぇなあ」


「さっきまで面倒とか無視とか言ってたのに軽いわね!?

中でなにが起きてるかさっぱり分からないのよ!」


「もしかして……久遠ちゃん怖いんだ!」

「いっしっし!

誇り高い北欧の狼のくせに弱虫なんだな!」


「そ、そんなこと!

でもそうね……たしかに怖いわ。

わたしオバケとか無理なのよ!

足がガクガク震えてしょうがないの!」


頭の中に浮かぶのは?

くぅんとしっぽを股の間にぷるぷる豆柴わんこ?


「分かった!

久遠ちゃんの気持ちはよく分かったよ!

誰だって苦手なことはあるもんね!」


「ごめんなさい……わたし……

(正義の殺し屋で獣人なのにホラーがダメなんて情けないわ)」


「じゃあ行こう!」

「あやかしがオバケ怖くてどうすんだよな!」


久遠ちゃんの両脇をガシッと抱える陽和といっちゃん♪

いっちゃんは小さいから浮いてます♪


「ちょっ!? 話し聞いてた!?」


「問答無用〜♪」

「いっしっし!」


もふもふすたすたふわふわ♪

久遠ちゃんを抱えて開かずの扉の中にレッツゴ〜♪


「きゃあああああああああ!?」


ガタガタピカピカ!

激しい光の明滅と!

まるで地震な大激震!

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