京へ来てください
みんなが出発してしまってから、一ヶ月ほど。
私は剣術に明け暮れた。
「一、二、三、四……」
稽古後に素振りをするのも日課となった。
そのうちに、今まではなれなかった木刀を振ることにも慣れてきたような気がする。
それから、あとひとつ。大きく変わったことがある。
「柚季ちゃん、いる?」
「いるよ」
へやにはいってきたのは、女中のおコウちゃん。
彼女と、いつの間にかすごく仲良くなったのだ。
「沖田さんがいらっしゃらないのがすごく寂しいわ」
おコウちゃんが目を伏せた。
この子は、沖田さんのことが好きらしい。
でも、一度振られてしまったとか。
この色白で、まつ毛が長い美少女を振る男がいるなんてにわかには信じられない。
「柚季ちゃんは、どう?
藤堂さんがいなくて悲しいでしょう?」
一瞬で、飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。
「ちょっ、そんなことないって!」
「そうなの? 私は柚季ちゃんが必死に稽古してるのってその寂しさを紛らわすためだと思ってたわ」
幕末に来ても恋バナが出来るとは思っていなかった。
そういえば、とおコウちゃんが言った。
「柚季ちゃんにお手紙来てたよ、若先生から」
渡された手紙を見てみると、差出人に「近藤勇」と書いてある。
「なんだろ」
封筒から手紙を取り出して、読んでみる。
「……は?」
思わず声に出してしまった。
–––壬生浪士組を結成することになった。
東堂くんが参加を望むのなら、準備が出来次第、京へ来てほしい。
組についての詳しい説明は今日でしようと思う。
とのことである。




